経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

急成長するD2C市場で日本から世界へ羽ばたく企業とは

 D2Cという言葉を聞いたことはあるだろうか。Direct to Consumerの略で自社製品を卸業者に仲介することなく、顧客まで直接届ける商品のことを指す。

 世界の潮流を見てみると、創業5年以下のスタートアップの中にはD2C領域で急成長する企業も現れ、大手企業を破産に追い込むまでの存在感となっている。

 例をあげてみると、スーツケースを提供するD2CスタートアップのAWAYは2015年に創業後、わずか1年で5万台のスーツケースを売り出している。またD2CマットレスブランドであるCasperは創業4年目の18年には売上高400億円を達成。競合だった小売大手のMattress Firmが、同年に破産申請を出している。

 このように、D2C領域におけるスタートアップが大型の資金調達を実施し、短期間で老舗メーカーを駆逐するケースが増加している。

 では、なぜD2C領域におけるスタートアップが急成長するのか、今回は日本のD2C領域を牽引する注目のスタートアップに焦点をあててお伝えする。(『経済界』2021年3月号より加筆・転載)

D2Cの強みと大手を倒せる理由とは

 D2Cは文字通りコンシューマーに対してメーカーが直接販売するスタートアップだ。D2Cでは自社のECサイトやSNSを利用して顧客と対話し、卸業者を利用することなく、顧客に直販する。そのため、既存のメーカーに比べて顧客との距離が近く関係性を築きやすい。

 また大手メーカーと比べて短期でグロースしやすい点は以下のとおりだ。

①ブランドを顧客に伝えやすい

 商品の存在意義や顧客の課題を直接拾いあげることによって、顧客ニーズにあった商品を生み出すことができる。

②顧客データを分析し改善しやすい

 商品は主にネットを通じて販売する。そのため顧客が商品購入までのサイト上での顧客行動のデータを収集しやすく、データをもとにサイトや売り出し方の改善を行いやすい。

海外投資家が提唱するD2Cを勝利に導く条件

 D2C領域におけるスタートアップ躍進の背景には、kick starterやCAMPFIREのようなクラウドファンディング(オンラインで資金を調達する)サービスの普及によって、少数精鋭のチームでもブランドを立ち上げる資金調達が容易になったこと、またShopifyやBASEのようなECサイトの立ち上げを支援するサービスの普及により、顧客に直接販売できる仕組みが生まれたことがある。

 D2C領域における著名なベンチャーキャピタルのVenrockはD2Cが勝てるポイントを以下の6つに要約している。

①粗利益が高く差別化できる
②ゼロサム市場である
③既存プレイヤーが小売のみで販売している
④競合プレイヤーがテレビ広告に依存している
⑤競合プレイヤーの創業者がCEOを降りている
⑥顧客データをもとに機械学習で長期改善を見込める

 これらの観点から日本のD2C企業を分析し、10年後の消費者の日常に掛け替えのないプロダクトを供給するであろうスタートアップを紹介する。

将来が期待されるD2Cのスタートアップ6社

FABRIC TOKYO

 FABRIC TOKYOはオーダーメイドスーツを手掛けるスタートアップである。同社の特徴はスーツのサイズ変更に関して100日間の保証がついており、テクノロジーを利用した採寸技術と製造時の生産工程の効率化を図っている点である。代表はメルカリ創業期にCSメンバーとして従事した森雄一郎氏。

FABRIC TOKYO
注目のD2CブランドFABRIC TOKYOのメンバー(右端が森代表)

Oh My Glasses

 国産メガネのD2Cブランドを手掛けるスタートアップ。サッカー選手の本田圭佑氏ら著名人とのコラボレーションメガネを提供しており、利益の一部は途上国の教育支援に利用される。代表はスタンフォードMBA卒のYoutuberとして有名なめがねシャチョウ。

Rose Labo

 同社は埼玉県深谷市のビニールハウスで農薬不使用の「食べられるバラ」を育て、それを取り扱ったコスメや食品ブランドを提供している。

FUJIMI

 パーソナライズスキンケアを提案する「FUJIMI(フジミ)」を提供している。肌診断を元に顧客に必要な成分を提案し処方する。代表はエグジット経験のある藤井香那氏。

KURAND

 日本全国各地の酒造メーカーと提携し、日本酒、梅酒、果実酒、焼酎等を企画製造販売している。歌手のBoAさんとコラボし、20年11月期の売上は、前年同期比25倍と急成長している。日本最大の酒通販会社。

シロップ

 愛犬が飛び跳ねる犬の手作りごはん「PETOKOTOFOODS」を提供。国産の無添加素材で製造しており、肥満につながるカロリー管理をデータから生涯サポートし、保護犬猫支援にもつなげている。

 D2C市場の成長はとどまることを知らない。日本国内においても同領域よりユニコーン企業が今後輩出されることは言うまでもないだろう。何よりもプロダクトが非言語であるため、海外展開のハードルも低い。日本から世界へ、グローバルスタンダードの日本企業が増えることを願ってやまない。

戸村光

戸村 光(とむら・ひかる)――1994年生まれ。大阪府出身。高校卒業後の2013年に渡米し、14年スタートアップ企業とインターンシップ希望の留学生をつなぐ「シリバレシップ」というサービスを開始し、hackjpn(ハックジャパン)を起業。その後、未上場企業の資金調達、M&A、投資家の評価といった情報を会員向けに提供する「datavase.io」をリリース。一般向けには公開されていない企業や投資家に関する豊富なデータを保有し、独自の分析に活用している。