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日本製の中古家電をアジアへ 文化交流にも力を入れる―恵豊商会

恵豊商会代表取締役 佐藤一雄(さとう・かずお)

アジアでは今も「日本製」への信頼感は高く、中古の家電も人気だ。日本の中古の家電や電子機器類のほか、鉄、非鉄金属などの輸出を行っている恵豊商会は、創業以来19年間黒字をキープし、コロナ禍でも売り上げが向上している。

恵豊商会代表取締役 佐藤一雄(さとう・かずお)
恵豊商会代表取締役 佐藤一雄(さとう・かずお)

再生資源の売買で循環型社会の構築へ

 恵豊商会の佐藤一雄代表は中国・黒竜江省出身。母親が日本人で、32歳のときに来日し、再生資源売買の仕事に従事した後、2002年に恵豊商会を立ち上げた。

 「私が来日した約30年前は、日本と途上国のアジア諸国を比べると、生活レベルに大きな差がありました。日本の家電は性能がよく、耐久性があり、世界的に人気でしたが、途上国の人たちが購入できる価格ではありませんでした」

 アジアの人たちは、パナソニックや東芝といった日本のメーカーの家電製品への憧れが強く、中古品でも安く買えることを喜ぶという。

 「日本では、数年使うと新しい家電に買い替える人が多く、まだまだ使える家電でも捨てられます。そこに商機があると考えて、日本の中古家電をアジアに輸出する事業を行うようになりました。1度動かなくなった家電でも、現地で修理ができる人がいるので、買い取ってもらえるのです」

 恵豊商会は現在、埼玉に3つの工場を持ち、4トントラック、発泡スチロール溶解機、プラスチック圧縮機、アリゲータープレス、コンテナといった設備を持つ。

 鉄、非鉄金属リサイクル電線、給湯器、中古機械、廃自動車、廃自動販売機、プラスチック、エアコン、家具、ゲーム機などの回収・買い取りを行っており、持ち込みと出張回収が可能だ。

 「鉄や非鉄のスクラップは、新しい鉄鋼製品へと再生できるため、原料として海外に輸出することも多くあります。近年は、SDGsへの取り組みなどグローバルに資源の利活用を重視する循環型社会に変わりつつあり、3R(リデュース、リユース、リサイクル)を満たす当社の事業は、社会貢献にもつながっているのです」

 顧客は関東圏が中心で、廃品回収業者、引越業者、便利屋、解体業者、リフォーム業者といった法人顧客も多い。オフィス、倉庫、工場、店舗などの不要品をまとめて回収してほしいというニーズもある。

 「当社は納得していただける価格で不要品を買い取って、お客さまに喜んでいただくことを第一と考えており、決して利益だけを追求する姿勢ではありません。輸出は、お客さまの要求するものを揃えないといけないので大変ですが、中国、フィリピン、ベトナム、ガーナといった各国のバイヤーの方と信頼関係を築き、順調に売り上げを伸ばしてきました」

 貿易部門は、グループ会社のイーデェ貿易が担当し、スペイン料理店の事業も展開。佐藤代表は誠実な人柄で、在日中国人のビジネスネットワークの中でも信頼が置かれているという。

リサイクル需要はコロナ禍で急増

 コロナ禍では店舗の休廃業に伴って廃棄物が増え、一方でリサイクル需要が高まっている。閉店を余儀なくされた飲食店も多く、オフィスを退去するケースが増えると当然、廃棄物も増える。

 また、個人でも在宅勤務の普及によって家具を買い替えたり、引っ越しをする人、断捨離をする人が増え、廃棄物が急増。昨年の同社の売上高は前年比1億円の増収となった。

 「一般的に景気がよくなると、古いものは捨てて、新品に買い替える人が増えるため、リサイクル需要は高まります。コロナ禍の生活様式の変化でものを捨てる人が増えましたが、来年以降は景気の動向によって、リサイクル業界は厳しくなるかもしれません。しかし、景気が悪化したからといって安く買い叩いたりせず、これまで通り、お客さまの立場に立って、誠実に仕事をしていきたいと考えています」

 佐藤代表が社員に求めるものも誠実さであり、利他の精神だ。

 「当社の規模では、自分の仕事に責任を持ち、周りの社員と一緒に頑張ることで、会社の売り上げが伸び、給料もアップします。社員には、自分のことだけを考えず、取引先と気持ちよく取引をして、お互いが幸せになる仕事を心掛けてほしいと伝えています」

中国との文化交流や共同研究にも参画

 佐藤代表は、日本と中国の文化交流、相互理解を深めるための事業にも参画しており、故郷の黒竜江省で日本祭りの開催にも携わった経験がある。

 「日本の政治家の方に黒竜江省へ視察に来ていただくなど、日本と中国が良好な関係を築けるよう尽力しています。昨年は、コロナ禍でマスク不足となった中国にマスクを寄付し、日本でマスクが不足した際には、逆に中国から寄付してもらい、無料で配るといったことにも関わってきました。現在は日中の病院の共同研究にも協賛しており、両国の懸け橋となれるよう社会貢献にも努めています」

 産業廃棄物処理は、新たな時代の循環型社会には欠かせない事業だ。環境問題の解決のために、再生資源は今後も注目を集め続ける分野であろう。

法人概要
設立 2002年
資本金 300万円
売上高 10億円
所在地 埼玉県越谷市
従業員数 24人
事業内容 鉄・非鉄金属の買取および販売、廃プラスチックの輸出および販売、家電製品・廃家電製品の配送
http://keihoshokai.jp/

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