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「世代交代には政治家としてのたくましさが必要」―高木陽介(衆議院議員)

インタビュー

このところ連立与党の中で公明党が声を上げる場面が目立つ。新型コロナ対策では一律の給付金をいち早く官邸に押しかけて提案。また総務省接待スキャンダルでは「襟を正せ」と自民党に注文。政権にモノ申すパートナーとしての面目躍如だが、長い連立政権で自民党に呑まれ存在感が薄れてきているという危機感もある。そうした自公連立政権で難しいバランスを取る作業を水面下で負ってきたのが公明党の高木陽介国対委員長だ。(『経済界』2021年6月号より加筆・転載)

高木陽介・衆議院議員プロフィール

高木陽介
(たかぎ・ようすけ)1959年生まれ。東京都出身。創価大学法学部卒業後、毎日新聞記者を経て93年7月、旧東京11区より衆議院議員に初当選。国土交通大臣政務官、公明党選挙対策委員長などを歴任。経済産業副大臣、内閣府副大臣、公明党中央幹事、広報委員長などを務める。

建設的な議論のために選挙制度改革と国会改革を

―― 国対委員長として新型コロナや接待問題など調整や与党間、与野党間の駆け引きなど大変かと。

高木 国会での議論は果たして十分なのか、また議論したことがきちんと国民に伝わっているのか。国対委員長をやりながら、国会の在り方はこれでいいのかと考えています。

 例えば、最近自公で議論になった重要土地調査法案(安全保障上重要な土地の売買取得などを規制する法案)。その考え方はいいんですよ。でも、この法律は外国人や日本人を問わず土地の取引する人には網がかかる。そうすると市街地でどうするのかと。特定の地域に指定されると事前に届け出が必要で、防衛省本省から半径1キロメートルだと新宿区や千代田区の多くが入る。公明党としては自由な経済活動が規制されることになるという現実論があります。じゃあどうするべきか、自公でしっかり話し合って合意したんですけどね。

―― その議論の過程が国民に見えていない。

高木 かつて原発をめぐってテレビ番組で各党の議論になった時もそうです。それぞれの党が、何年までに原発ゼロにすると主張していましたが、僕は「不毛だ」と言ったんです。「決意表明はもう結構。大切なのは工程表です」と。

 政治家は理想も語らなきゃいけない一方で、現実の中での工程表なり過程を提示して、地に足をつけてやっていかなければならない。理想と現実の狭間を埋めるのも政治家の重要な仕事ですが、その狭間を議論する場こそが国会だと思うんです。でも、そこを今なかなか議論できていない。

―― 国会改革が必要?

高木 制度的な問題が2つあると思います。ひとつは法案の事前審査制です。長い歴史の中で自民党がやってきた仕組みで与党が事前に審査するものですが、なかなか表から見えないので国民には理解されていない。

 2つ目の問題は、そこから野党が議論に入ってくるときに、どうしても手柄合戦になることです。野党でも良い提案があった場合は受け入れてもいいと思うんですが、選挙をみんな意識し始めるわけです。対立構図の場面になってしまって、本当の議論にならない。背景には今の選挙制度があると思います。小選挙区制で与党か野党かどちらか一人、いわばマルバツを迫るような選挙制度になっています。だから、議論をして一致点を見いだしたり妥協したりすることがやりづらくなっています。

―― 小選挙区制の選挙制度も併せて国会に影響している。

高木 僕は1993年当選組で中選挙区で通りました。そのとき公明党は細川連立内閣の一員で、与党として政治改革案、小選挙区制の導入に賛成する側に回った。ただ、あのとき衆議院は民意を集約すると同時に、いろんな民意も反映しないといけないと比例も導入しました。

 でもやはり、今の二者択一のような政治になってきたのは小選挙区制だからです。制度には良し悪しがありますが、個人的には死に票が多くて問題だと思います。大政党が有利で野党は小選挙区で勝つには固まらなきゃいけない。でも、固まると野合だと言われて躊躇してしまう。自民党と公明党はお互い理念も政策も違うけど、国民のために必要なところは協調しましょうと政権合意を結んでやってきました。野党各党はそこまでできていない。

―― 選挙制度改革や国会改革の具体案は?

高木 とにかく、国会そのものが国民に伝わっていない。国民の前にオープンになれば議員だってしっかりやらなければならない。衆議院としてはネットで委員会情報を出していますけどなかなか全部を見る人もいない。

 そうなると政党が負う役目が大きいだろうなと。政党というのはそもそも制度や法律がなぜ必要なのかを説明する責任がある。公明党はじめすべての政党が政策的な広報をやってそれを比較できるような仕組みを作るのもいいかなと。

高木陽介

許認可制度の在り方は議論の余地あり

―― 国対委員長として切り盛りした国会の前半を振り返ると。

高木 今国会はまず1にも2にも3にも新型コロナウイルス。普通ならスタートした時点で新年度予算の審議から入るところを、新型コロナの特措法から入りました。野党のみなさんもいろいろご意見はある中で合意できたのは良かったと思います。

 その後に予算審議が始まりました。今回の予算案は目の前の新型コロナ対策だけでなく、収束後の経済の再生なども視野に、補正も入れて15カ月の連続予算で組みましたが、これについては年度内の成立ができた。国民にとってプラスだったと評価しています。

 一方で、総務省の接待問題などのスキャンダルも出て、国民からの政治、行政への不信を招いた。公明党にとっては、いい迷惑です。李下に冠を正さず、当たり前ができない役所を変えて、官僚はきちんとした風土を作らないといけません。

―― 総務省の場合は電波(放送)や通信の許認可の問題もある。海外では許認可は独立した機関が持っていて、自由化という考え方もある。

高木 決して電波や通信だけではありませんが、基本的には経済の動きを考えても自由化というのはいい。ただ、国民の財産を民間企業にわたすわけですから、許認可を役所がやったほうがいいのか、第三者委員会のような独立したところでやったほうがいいのか、ここは議論の余地があります。

 ほかの役所にも許認可の問題はあります。かつて大蔵省の接待問題で国家公務員倫理法ができて、役所では利害関係者との接触は相当厳密になっています。一方で、例えば関係者との電話一本で業界の状況を把握できることも必要ではある。食事をしながらというのは日本の文化もあるのかなと思いますが、やはり秩序は第一です。

―― 後半国会は、特に公明党が力を入れる社会保障に関する法案などもある。

高木 国会の後半は、特にデジタル関連法案を仕上げていくことになると思いますが、それ以外にも重要法案、議案はいくつかあります。例えば子育て法案、高齢者医療(高齢者の一部の医療費2割負担)、法務では少年法改正などです。今年は6月末には東京都議選、その後には東京オリンピックがあるので、期限がある中でやらないといけません。

新型コロナ対策では対処療法の次の策を考える

―― 新型コロナ対策でこれから何をすべきと考えるか。

高木 今までやってきたことのさらに積み重ねになりますが、まずは検査体制の拡充。無症状でも感染が広がるのが分かってきたわけですから、検査をもっと多く楽な形でできるようにしたらいいと思います。あと、変異型ウイルスも心配なので、その検査体制も大切。もう一つはワクチン。ワクチンを打てば絶対安心ということではありませんが、社会活動はしやすくなります。実は、ワクチン接種を国費で賄うべきだと最初に提案したのは公明党なんです。

 あとは病床をどう確保するか。そもそも日本の医療体制に課題があって、欧米では日本の10倍以上の感染者が出ていても病床逼迫という話は聞かない。日本では医療施設の大半を占める民間の医療機関がコロナ患者を引き受ける体制になっていない。

 また、医療スタッフの問題もあります。今こそ、そういうところに踏み込んで、いざというときには特定の施設は全部コロナ病床で行くというように整備しないといけません。ここまでは緊急事態宣言という法的な措置を取ってきたとはいえ、国民一人一人の努力でやってもらっています。欧米みたいなきついロックダウンや罰金ではないわけです。それでもここまで感染拡大が抑えているという国民の努力に政治や行政が感謝して、それが当たり前だと思ってはいけない。

―― 宣言解除の際の菅首相の会見は、安心感につながるようなものが足りなかった。

高木 漠然と言うのではなく、科学的根拠を出して情報を出して行くことが必要です。例えば山梨県知事が「感染防止をしたうえで、どんどん花見してください」と言いましたが、山梨は飲食店をきちんと調査したうえで、安全のステッカーを配布している。ただ食事をするなと言うのではなく、食事のときは何に注意すればいいかはっきり言っているわけです。

―― 経済的な支援はどうか。

高木 コロナによって目に見えたのは飲食店、観光業が大変だということですが、卸会社や観光地の商店など、それらに関連する領域にも影響しています。そこをきめ細かく見るのがこれから必要になります。これまでは雇用調整助成金などの対処療法が中心でしたが、それ以外でこぼれているところを調査して適切に手を打つことが求められます。

 経済への影響は数カ月で収まるものではないので、長期的な視点で見ることも大切です。今は金融の部分でさまざまなことをやっていますが、それ以外にできることを考えたいと思っています。もうひとつは生活そのものです。今までは事業者の立場や経済全体という角度から見てきましたが、これからはそこで働いている人たち、非正規労働者やアルバイトの方々に対してどうするかということも考えなければいけません。

 飲食店などへの支援も一律6万円や4万円でいいのか、的確に実態を抑えて事業規模別も考えなければならない。役所は手続きが複雑と言いますが、僕がよく言うのは、じゃあできるようにするにはどうすればいいのかを考えようと。法律が壁なら変えればいい。公明党もこうしたことを打ち出して政府に提案していきたいと思います。

世代交代はただ体制として若くなれば良いわけではない

―― 最後に公明党の世代交代について。

高木 気をつけなければならないのは、ただ体制が若くなればすべていいわけではではないということです。次を担う世代に必要なものは、政治や国民生活を安定させるために自民党と連立を結んだわけですから、その自民党とのチャンネルをつないだり駆け引きしたりする力を備えていくことです。

 もう1つは、公明党独自の歴史を踏まえて政治家として行動できるかということです。昭和39年の結党以来、大衆とともにということを掲げてやってきました。そういう歴史と伝統を意識することが不可欠です。僕は当選時は与党、1年で野党、落選も経験し、戻ってきたら与党でまた野党と、紆余曲折はありましたがその経験は尊い。

 今の若手は与党時代しか知らないんですね。野党のときは行政から情報がこないので、自分の足で情報を取り続けました。そういう政治家としてのたくましさを蓄えることができたら、世代交代できるのではないかと思います。

93年の初当選組は、安倍晋三、岸田文雄、野田聖子、枝野幸男、野田佳彦、志位和夫、同じ公明党でも太田昭宏や斎藤鉄夫ら各氏錚々たるメンバーがいる。高木氏は、同期の彼ら各党との水面下の調整など裏方の難しい役目を負ってきたため、人脈では党内で右に出る者はいない。公明党は新型コロナ下での飲食問題や長いスパンでの比例票減など、党勢を立て直すためにも世代交代は急務だ。「高木氏は世代交代で幹事長が適役」(別の党議員)との声もある。今後の新たな経済支援策、そして国会改革などその言動を期待したい。(鈴木哲夫)