経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

「コロナ禍で急拡大した テイクアウト・デリバリー 市場に商機あり」―エフピコ社長・佐藤守正


簡易食品容器で国内シェア1位のエフピコは、1962年に広島で創業した。同社は、新型コロナウイルスが日本経済に大きな影響を及ぼす中、2021年3月期連結決算で純利益122億円で最高を更新するなど、好調を維持している。

佐藤守正(さとう・もりまさ)──1983年慶應義塾大学工学部卒業後、三井物産に入社。99年エフピコ取締役。専務、副社長を経て、2009年に社長就任。

市場の変化に素早く対応しニーズに合った商品開発も

── 新型コロナウイルス流行拡大で市場に変化はありましたか。

佐藤 駅弁や行楽弁当容器の需要が激減した一方でスーパー向けトレーの需要が伸びるなど、出荷する製品のラインアップは大きく変わりました。また、飲食店がテイクアウト・デリバリーサービスを一気に拡大させたことで新たな市場が生まれました。

当社はこれまでレストランなどに向けた大きな取引はありませんでしたから、新たな市場に向けてどのように製品情報を届け、新規顧客を獲得していくのか、チャレンジ続きの1年でもありました。若手社員が中心になり、インスタグラムやLINEなどのSNS活用やSEO対策の見直しなど、新しい試みを重ねていきました。

その中で、従来の仕組みが役立ったこともあります。2019年の消費増税のタイミングで軽減税率が導入され、その時に持ち帰り需要の拡大を見込んで小さな飲食店向けにECサイトを立ち上げていました。これがコロナ禍でも役立ちました。毎月1千人のペースで会員が増え、今では累計1万人を超えています。

こうして新たな市場に向けて製品の認知を拡大し、購入からお届けまでの導線を整備する一方で、テイクアウト・デリバリー用の機能を充実させた商品開発も行ってきました。例えば、スープが冷めにくい容器や中身の料理がズレにくい容器、持ち運ぶ途中で汁漏れしにくい容器などです。

これまでスーパーやコンビニに向けて、ディスプレイした料理が美味しそうに見えるように容器の開発を行ってきました。テイクアウト・デリバリーも、ただ持って帰るだけではなく、食卓でより美味しさを感じる容器が求められます。今後はSNSで目立つような色付き容器など遊び心を入れた商品も準備していきます。

── コロナ収束後も人々の行動が変化しそうですね。

佐藤 今、商店街を歩いてみるとほとんどの店がテイクアウトやデリバリーを行っており、宅配事業者も充実してきました。これは美味しい専門店の商品を気軽に家で食べられる環境が整ったということで、外食がどんどん中食に侵食しているわけです。

食事の選択肢が増え、宅配インフラが整い、さらに美味しいとなれば、人々は必然的にそちらに流れます。コロナ収束後も、テイクアウト・デリバリーは拡大するはずです。その中でまだ当社のシェアは限られていますから、今後も可能性の大きい市場だと思っています。

リサイクルも障がい者雇用も社会貢献ではない

── 資源回収にも非常に早くから取り組まれています。

佐藤 1990年に、米国でマクドナルド不買運動が起きました。当時のハンバーガーは容器が発泡素材で、そのゴミが環境を汚染していると問題視されたからです。その様子を見ていた創業者の小松安弘が、同じことが日本のトレー業界で起これば当社にとって大きなリスクになると考え、「ノートレー運動」のようなことが起こらないように、スーパーの店舗に専用ボックスを設置し使用済みトレーの回収を始めました。当初は6店舗のみのスタートでしたが、現在では9800店舗以上にまで拡大しています。

── 障がい者の雇用も特徴ですね。

佐藤 障がい者雇用率は12・7%(21年3月時点)以上です。しかし、私は障がい者雇用を単なる社会貢献とは考えていません。障がい者の方々は当社にとって貴重な戦力です。

回収したトレーを処理する工場は全国に3カ所しかないため、いかに効率よく集められるかが重要です。回収効率アップのため白いトレーと色付きトレーを選別して圧縮する方法がありますが、トレーという製品の特性上、自動化することが難しい。そこで、全国10カ所にトレーの選別センターを設置し、知的障がい者の方々に分別業務を行ってもらっています。彼らはものすごい集中力と精度でトレーを選別しています。

また、当社が蓄積したノウハウを参考に、知的障がい者の雇用をサポートしている企業が約50社あり、そこでの雇用は合計すると750人を超えています。障がい者というと、できないこと前提で考えてしまいがちですが、彼らも素晴らしい能力を持っており、企業の戦力として働く場はいろんなところにあります。

トレーの選別作業では知的障がい者が貴重な戦力になっている(福山リサイクル工場)

── 今後の展望は。

佐藤 現在、テイクアウト・デリバリーが浸透しているのは圧倒的に首都圏です。今後は大阪や名古屋、福岡などに拡大していくことが予想されるので、マーケットの動向をよく観察し、ニーズの収集や自社製品のPRを行っていきます。22年9月には、兵庫県小野市に近畿エリアをカバーする工場と物流の拠点が稼働予定です。これが稼働すれば、全国各地の拠点からそれぞれ約150キロメートルの円を描いた時に、日本の人口の約7割をカバーすることができるようになります。物流網を整備し、万全の態勢でポストコロナの新たな時代に挑戦していきます。

会社概要
設立 1962年7月24日
資本金 131億5,000万円
連結売上高 1,969億5,000万円(21年3月期)
従業員数 944人(グループ全体 4753人)
本社所在地 (福山本社)広島県福山市
      (東京本社)東京都新宿区
事業内容 食品トレー、弁当・総菜容器のトップメーカー。高い技術力で新素材開発などを行う一方、リサイクルにも積極的に取り組んでいる。東証一部上場。
https://fpco.jp