経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

「子どものITスキルを伸ばし世界でイノベーションを起こす」―水野雄介(ライフイズテックCEO)

経済界主催「金の卵発掘プロジェクト」の初代グランプリ受賞者で、中高生向けプログラミング教育事業を手掛けるライフイズテックCEOの水野雄介さん。創業時の目標「日本国内だけで20万人の中高生がITでものづくりをする世界をつくる!」を昨年達成した水野さんに、次の展開について伺いました。(『経済界』2021年8月号より加筆・転載)

水野雄介・ライフイズテックCEOプロフィール

水野雄介ライフイズテックCEO
(みずの・ゆうすけ)1982年北海道生まれ。慶應義塾大学理工学部物理情報工学科卒業、同大学院修了。2010年ライフイズテック設立。シリコンバレーIT教育法をモチーフにした中高生向けプログラミング、IT教育キャンプ/スクールを開始。

社会をつくる子どもたちの「未来の選択肢」を増やす

佐藤 第1回「金の卵発掘プロジェクト」(2011年)のグランプリ受賞から10年。御社の中高生向けプログラミング教育事業は拡大を続けていますが、創業時の「日本国内だけで20万人の中高生がITでものづくりをする世界をつくる!」という目標の進捗はいかがですか?

水野 ちょうど昨年達成しました。

佐藤 すごい! 達成の要因は?

水野 主軸事業の「Life is Tech!スクール」(PC初心者が1年間でアプリやゲームの開発・リリースまでを学ぶプログラミングスクール)、「ITキャンプ」(プログラミングやデジタルアートを学ぶ4日間の短期集中プログラム)に加え、「Disneyテクノロジア魔法学校」などのコラボ教材が伸びたこと、企業・自治体・学校との提携が増えていることも理由です。リアルな場だけでなく、オンライン教育ツールもつくり、昨年だけで中高1千校以上でご利用いただいています。

佐藤 オンラインであれば地方住まいや不登校の子どもも学べていいですね。現在は小中学校でプログラミング教育が必修化され、来年度からは高校でも、という状況です。御社の事業はデジタルネイティブ世代の子どものITの力を伸ばす先駆けといえますが、事業のヒントはシリコンバレーで得られたそうですね。

水野 はい。10年前の日本ではプログラミング教育の必要性が認識されておらず、子どもが興味を持っても、学ぶ場がなく、教える人も、知識を褒めてくれる人もいませんでした。しかし、プログラミング能力が必須となる時代はすぐに来ると確信していたので、シリコンバレーのIT教育をモデルに、子どもの「未来の選択肢」を増やす事業を始めたんです。これと並行して、親御さんの理解を得るためにコンテストや大会を開いたり、就職斡旋も行ってきました。

佐藤 先見性がありますね。コロナ禍で多くの業界でDX化が加速していますが、教育業界はどうですか?

水野 同じです。今後DX化によってIT教育は個別最適化され、子どもがどんな先生と出会い、どう学べばいいのかが一人一人カスタマイズされるようになります。弊社のサービスはその変化に対応しています。

佐藤 「20万人」を達成されて、次の目標は?

水野 中期ビジョンに、「25年に120万人のイノベーション人材の輩出」を掲げました。プログラミングやAIの知識を持ち、世界を変えるイノベーション人材を育てていきたい。彼らが半径1メートル以内の地域や学校の問題を解決し、それが波及する社会はもっと良くなりますよ。

ライフイズテック
中高生が真剣に楽しく学べるように工夫されている

「子どもの幸せ」を第一に企業連携、世界進出に本腰

佐藤 次代のIT教育のパイオニアとして気を付けていることは?

水野 子どもたちがIT嫌いにならないような楽しい教材をいかにつくるか、また教育の地域・経済格差をなくすために自治体と組んでいかに多くの学校で使ってもらうか、です。あとはプログラミングを学んで終わりではなく、開発したアプリで世界を変える、社会や次世代を良くすることを目的に設定させています。若いうちからアントレプレナーシップを持ち、世界の何をどう変えたいのかを考えることは重要です。

佐藤 子どもの今だけでなく、未来まで想定しているのが素晴らしい。

水野 弊社で働く全員が、「子どもたちがどうしたら幸せになれるか」を大切にしています。子どもたち自身が、自分の幸せを追求するよりも、他人のために行動することが自分の幸せとして返ってくる、と気づいてくれるとうれしいですね。

佐藤 そうした価値観を共有できているから、本日まで創業メンバーと仲違いせずにやってこられた。
水野 そうですね。同じ価値観の下、それぞれが得意な分野で力を発揮できるよう役割分担を明確にし、お互いを尊重し合える関係があります。

佐藤 特に企業との連携で新しい動きはありますか?

水野 昨年、元経済同友会代表幹事で三菱ケミカルホールディングス会長の小林喜光氏と話し、同社の技術を活用したハンズオン型のDX研修を約200人の新入社員に実施しました。大人も楽しく学べるカリキュラムを組み、1日でアプリ開発をしたり、データの構造や活用法について学びます。この評判が良く、複数の企業から研修の依頼を頂いたので、新規事業化を進めています。

佐藤 社会人にも応用できるのはいいですね。中高生向けには、メード・イン・ジャパンの新しい教育モデルとして世界展開できそうです。

水野 今まさに世界進出を始めています。全世界でプログラミング教育のニーズが高まる中、教える人材不足が共通の課題となっています。弊社はそこを補うソフトウエアは開発できるので、たくさんの子どもたちに使ってもらい、国内外でイノベーションを起こしたい。

佐藤 水野さん自身も「金の卵」からふ化して成長を続けていますね。世界の大空をIT教育の翼で羽ばたく日を楽しみにしています。

「金の卵だった水野さんのこれからの成長も楽しみです」(佐藤)