記事作成=hackjpn
8500万人が失職?グローバルな変化の波に対処する
世界の労働市場は次々と進化を遂げるテクノロジーによって侵食され、その勢いは新型コロナウイルスの影響で、さらに加速を続けている。
そして、スキル要件の変化と市場の混乱により、組織や政府は「将来の労働力戦略」を再考する必要が生じた。
自動化により、2025年までにおよそ8500万人が職を失うという厳しい予測が突きつけられている今、将来的な人材戦略を予測する必要性が高まっている。
そんな中、数百万のデータ分析による市場予測で、前例ない変化の波に立ち向かう支援を行っているのがretrain.aiだ。
retrain.aiは、イスラエル労働省との間で最初の契約を結び、パンデミックにより変化する同国の雇用市場の変化について調査を行う契約を結んだ。
同社のプラットフォームは、どのような仕事が広告されているか、あるいはどのような仕事の人気が下がっているかを調べ、新しい仕事がどこから現れるのかを早期に予測できるという。これは、大規模な組織や政府の政策形成に役立つ。
retrain.aiが提供する「人材インテリジェンスプラットフォーム」とは
同社は、自らを「人材インテリジェンスプラットフォーム」企業だと宣伝する。
AIと機械学習を活用して、行政や組織が将来の業務のために人材の再トレーニングやスキルアップを実施し、多様性に取り組み、従業員と求職者のキャリアマネジメントができるように支援するという。
また、企業が「多数のデータソースを分析してスキルセットの需要と供給を理解する」ことにより、将来的な人員の戦略に取り組むための支援をするとしている。
イスラエルを拠点とする同社は、2021年8月13日に700万ドル(約7億7000万円)を追加の資金調達を完了し、累計調達金額は2000万ドル(約22億円)となった。
ライバルには、5660万ドルを調達したPymetrics、3億9680万ドル調達のEightfold、EmPathなどがある。
新たに得た資金は、米国内での事業拡大、人材の雇用、製品開発に充てられるという。
失業と不完全雇用は、10億人に影響が及ぶ。ビジョンは2025年までに1000万人を救うことだ。
同社のデータサイエンティストとAIチーム(ケンブリッジ大学、オックスフォード大学、チューリング研究所のメンバーによる諮問委員会を含む)は、企業データや政府を含む数百万のデータソースを分析することで、スキルギャップの問題に取り組む画期的なプラットフォームを開発した。
まず初めに、統計からビジネスの成長ドライバーを把握し、スキルとスキルシフトのサイクルを分析。「将来の仕事」を予測して、雇用主と従業員がどのスキルが出現し、進化し、期限切れになるかをよりよく理解できるようにする。
次に、プラットフォームは組織の人事情報管理をマッピングし、人材のギャップを定量化して、スキルのギャップを埋めるために、内部のモビリティと移行計画、およびパーソナライズされたトレーニング経路を推奨する。
これにより、雇用主と従業員の両方が、採用から退職までのタレントライフサイクル全体を通じて変化をナビゲートできるという。
CEOのShay David(シェイ・デイビッド)博士は、以下のように述べている。
「かつては労働力の定期的な変化が大きな流れに発展し、特に新型コロナウイルスがその労働市場への大きな影響を顕著に示し、警鐘を鳴らしました。
失業と不完全雇用は、今後数十年のうちに世界中で10億人もの人々に影響を及ぼすでしょう。私たちのビジョンは、2025年までに1000万人の従業員が適切な職に就けるよう支援し、組織が変化の波の中を効率的に進むのを支援することです」
拡大する人材配置予測テクノロジー
世界経済フォーラムによれば、オートメーションにより2025年までに8500万人が職を失い、同時に9700万人の新たな雇用が創出されるという。
6カ国、15の産業から集計されたその数値によると、余分な職種が労働力の15.4%から9%に減少。一方、新しく創造される職業や仕事は7.8%から13.5%に増加すると見込まれているのだ。
これは新しい役割が、人間・機械・アルゴリズム間の分業に適応することで生まれる可能性があるという一方で、近い将来に多くの仕事が機械などに置き替えられてしまうという厳しい現実でもある。
その為、多くのスタートアップが従業員のスキルに関するこうした問題の解決に取り組み、人材育成、神経科学に基づく評価、人材配置の予測テクノロジーに着目しているが、この領域は今後もまだまだ拡大しつづけるだろう。
AIを利用して労働市場の最大の危機を乗り越える
「世界は、ビジネスモデルと人工知能の変化によってもたらされた産業革命以来、労働市場に最大の混乱の危機に瀕しています」と、SquarePegの共同創設者兼パートナーであるPaulBassat(ポール・バセット)氏は述べている。
「AIを利用した同社のプラットフォームは、継続的に労働動向と実用的な洞察に関するリアルタイムで正確なデータを提供します。何百万人もの人々が軌道に戻るのを助けることを楽しみにしています。」
次世代テクノロジーを適用して、何百万人もの人々を変化する仕事の世界に統合し、失業曲線を効果的に平坦化することが出来るのか。
技術によって職業を失う人々を、技術をもって救う。皮肉にも聞こえるが、急速に進むグローバルな変化の波に立ち向かうには、これが最適解なのかもしれない。
仕事の未来を再定義する。そう掲げる同社の役割の必要性が、今後ますます大きくなっていくことは間違いない。