経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

「他社から驚かれるほど自ら動く社員に恵まれています」―井上進太郎(サティスフィル代表取締役)

ゲストは、「すぐ手の届く贅沢」をコンセプトとしたレジデンシャルホテル「RANDOR HOTEL」を展開するサティスフィル代表の井上進太郎さん。インバウンド消滅のコロナ禍にあって、新規事業を次々とスタートするなど先手必勝の仕掛けが注目を集めています。その勢いの陰には、頼もしい社員の存在がありました。構成=大澤義幸 photo=市川文雄(『経済界』2021年10月号より加筆・転載)

井上進太郎氏プロフィール

(いのうえ・しんたろう)1992年神奈川県生まれ。法政大学キャリアデザイン学部卒業。マクロミル、DEiBA Companyを経て、2018年Satisfill(サティスフィル)設立。経済界主催「金の卵発掘プロジェクト2018」にて審査員特別賞受賞

インバウンド消滅の危機に新規事業を次々と仕掛ける

佐藤 サティスフィルはインバウンド需要を取り込み、大人数で長期滞在する訪日外国人観光客向けに、部屋や浴室の広さなどにこだわったプチ贅沢なホテルを展開されてきました。そこに昨年からのコロナ禍。経営への影響はいかがでした?

井上 大きかったですね。昨年初めに中国でコロナがはやり始め、日本でも感染拡大が始まり、近隣のホテルが次々と休業していく中、うちのホテルのお客さんも激減しました。

佐藤 東京・銀座の爆買い中国人もそうですし、都市部や観光地で外国人の姿を見掛けなくなりましたね。

井上 それでも仕事で日本に滞在する外国人もいれば、緊急事態宣言や渡航禁止令で帰国できない人もいました。そこで休業するホテルを予約していた人をうちのホテルにご案内できるよう交渉し、マンションのように利用してもらうサービスを始めました。これで稼働率40~50%を維持しましたが、それでも毎月赤字で銀行の融資で耐えしのぎました。

佐藤 休業の選択肢はなかった?

井上 はい。窮地だからこそ次の一手を打とうと。昨年7月に「GoToトラベルキャンペーン」がスタートした際には、既存のホテル事業を外国人観光客向けから日本人向けにシフトし、これで赤字を解消できました。さらにデベロッパーやオーナーからホテルを管理・運営する既存の不動産売買事業に加え、マンションの1階を保育園や調剤薬局にして、2階にクリニックを誘致し、それを管理する事業、不動産売買コンサルティングを始めたり、不動産事業を拡大しました。

佐藤 ただマンションを売るのではなく、機能を付加して完成形で提供するわけですね。銀行が助けてくれたのも将来有望だからでしょうし、アイデアと実行力がありますね。

RANDOR HOTEL
「すぐ手の届く贅沢」をコンセプトに広々とした室内と設備にこだわったRANDOR HOTEL(写真は「なんば大阪スイーツ」)。全国に15軒を展開

頼もしい社員たちとコロナ後の飛躍に懸ける

佐藤 事業は全国展開しているのに、なぜ本社を福岡に?

井上 各都道府県で旅館業法の内容に差があるんです。例えば、京都では管理人の24時間常駐が必須ですが、福岡ではホテルから徒歩10分以内の場所に管理事務所があればいい。そうした面からも福岡を起点にしやすかったのです。

佐藤 福岡は中国や韓国も近く、移動に船も使えますしね。

井上 それもあります。最近の福岡はインバウンドが戻ってきたので、空港への送迎会社と提携し、コロナ陰性の観光客に2週間滞在してもらうというプランも始めています。

佐藤 2025年の大阪万博までに全国の人々の動きも活発化して、インバウンドも戻るといいですね。

井上 それも見据えて昨年11月、大阪に全室85平方メートル以上の大人数向けのラグジュアリーホテルをオープンしました。各客室にキッチンを設け、浴室も檜風呂や露天風呂などを設えています。

佐藤 コロナ禍に豪華ですね。

井上 そもそも後発の僕らがビジネスホテルを仕掛けても大手には勝てませんし、客単価の安い民泊では売り上げが伸びない。外国人でなくても、日本人の富裕層でも広くて豪華な部屋に泊まりたい人はいます。外資のスイートルームには及ばずとも、民泊やビジネスホテルよりは格上。この位置付けは日本のホテル業界にはなかったものです。

佐藤 こうした事業は全部、オリジナルの発想ですよね。

井上 参考になる競合がなかったんです(笑)。最近では、大都市の郊外のホテルを高級賃貸マンスリーマンションとして運営しています。ホテルは1~2泊の宿泊ごとに清掃や接客が必要ですが、1カ月滞在してもらえればその手間が省けて利益も上がります。日本人には人気のない地域でもインバウンド向けには利便性が高ければ活用できます。

佐藤 事業の多角化において、社員に右腕となる人はいるのですか?

井上 右腕も左腕もめちゃくちゃいますね。新規事業を任せられる社員も多いですし。他社の社長さんからどうやって採用したのかと驚かれるほど人に恵まれていますね。

佐藤 私も気になります。

井上 学生時代の後輩が多いですね。若いころから連れ添った仲間なので、僕は社長ではなく、先輩とか友達感覚なんでしょう。おかしいのが、コロナで苦しい時にボーナスを支給したら、「社長に苦労をさせて申し訳ないから」と会社の口座に返金されそうになったこともあります(笑)。

佐藤 本当ですか! 社員一人一人が創業者マインドを共有し、自分事ととらえているからですね。

井上 あとはインバウンドに対応するために留学生をアルバイトで雇い、会社を好きになってくれた人を正社員登用しています。彼らの帰国後の世界展開も見据えた採用です。

佐藤 それは楽しみですね。今後どんな会社にしていきたいですか?

井上 社員たちが自分の子どもをサティスフィルに入れたい、そんなカッコいい会社にしたいですね。

佐藤 素敵な夢です。経済界もそんな会社になれるよう精進します。

井上進太郎
「コロナ後のインバウンドの再取り込みと飛躍に期待しています」(佐藤)