経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

ホームレス支援における「ハウジングファースト」という考え方

介護・福祉業界の異端児 藤田英明の福祉再編(第1回)

安心感を提供する「ハウジングファースト」の考え方

 「ハウジングファースト」とは、1990年代に米国で始まったホームレスの人たちを支援する考え方です。それまでは、ホームレスの人に就労支援や生活訓練などを行ってから、アパートへ移ってもらうという「段階方式」がとられていました。

 しかし、この方式では多くの方が途中で脱落し、アパートに移る前にホームレスに戻ってしまうことが問題となっていました。そこで、まずはアパートに入ってもらい、家を確保してから、就労支援や生活訓練を行ったところ、ホームレスに戻る人が減ることが分かったのです。それが「ハウジングファースト」と呼ばれ、ホームレスの人には、まず安心して暮らせる住まいを提供することが大事という考え方が定着しました。

 そして、この取り組みは、日本でも行われるようになってきました。特に日本では、ホームレスの人と同様、家を持たず、漫画喫茶などで寝泊まりする人たちがいます。漫画喫茶に寝泊まりしている人の約60%が何らかの精神障害を抱えていることも分かっており、こういった方へも「ハウジングファースト」での支援が必要となります。

 また、ホームレスや漫画喫茶に寝泊まりする人が精神科の病院に入院した場合、退院後は実家に戻されるケースがよくあります。

 しかし、実家の家族関係が病気の発症の原因となっていることも多いので、実家にいると病気が再発し、ホームレスに戻るという悪循環を繰り返すことになるのです。

 こういった人たちにも、「ハウジングファースト」の考え方で、グループホームという第3の場所を提供することが必要です。

障がい者グループホームの必要性

 私どもの障がい者グループホームの事業でも、障がいがあることによってホームレスになってしまった人や漫画喫茶に寝泊まりしていた人にも入居していただいています。

 特にわれわれが運営しているのは、ペット共生型障がい者グループホームです。ペットは保護犬、保護猫で、ペットの存在が精神的な安定につながり、入居者同士のコミュニケーションもスムーズになります。

 その結果、就労支援を続けることができるようになり、社会性が芽生え、生活も規則正しくなり、仕事に通えるようになった方もたくさんいます。

 近年は昔に比べて、障がい者の平均寿命が延びています。それは素晴らしいことですが、同時に障がい者の高齢化による課題も生じています。老障介護や障障介護によって、親が亡くなった後に、孤立してしまうケースも見られます。

 障がいがあると老人ホームに入れず、今後の超高齢社会で、住むところに困る人が続出することも予測されます。

 障がいのある方がいくつになっても住むところに困らないよう、グループホームが必要ですが、日本では拠点が足りていません。当社のグループホームは627拠点に各5人程度が入居しておりますが、全国の障がい者数は990万人です。

 アニスピホールディングスでは、障がいのある人たちがいくつになっても安心して暮らせる場所を、私たちと一緒に作ってくださる方を求めています。

藤田英明・アニスピホールディングスCEO
Photo =西畑孝則

ふじた・ひであき──1975年生まれ、東京都出身。明治学院大学社会学部社会福祉学科卒業。社会福祉施設で多数の現場を経験し起業。小規模デイサービス「茶話本舗」をフランチャイズ化するなど、「論語と算盤で業界にイノベーション」を掲げた経営を実践し、業界の異端児として注目を集める。現在、ペット共生型障がい者グループホームを全国627拠点運営するアニスピホールディングス代表取締役CEO。全国障害福祉事業者連盟理事長。