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低空飛行と道路走行ができる飛行自動車を開発したHT Aero
中国で最も有名な電気自動車のスタートアップ企業であるXpeng(シャオペン)は、レーダーやカメラを使用しながら、歩行者やバイク、子どもやペットなどの小さな動く障害物に対しても正確に距離を測定し、道路状況を検知、予測するLiDAR技術を搭載したセダン車やスポーツ用多目的車を生産している。融資先アリババが提供する高精度地図も同社の技術に取り込まれている。
今年9月に、子供を乗せて歩けるAI搭載のユニコーン型ロボット「小白龙」の発表も行った。販売予定時期は明らかにしていないが、2900ドル(約21万7800円)以上だと予想され、中国の中流階級の消費者に向けた製品開発を次々に行うなどして米テスラと競争を図っている。
そんな中、Xpengの関連会社であるHT Aeroが、低空飛行と道路走行の両方に対応した飛行自動車を開発し、5億ドル(約571億円)のシリーズA調達を発表した。これはアジアの低高度飛行車両部門において過去最大の資金調達である。
自動車技術と航空宇宙技術により安全な空中旅行を目指した飛行自動車
完全都市型エアモビリティ(UAM)企業であるHT Aeroは、特定の都市シナリオを想定した自律飛行による離着陸、充電、飛行制御を行う第5世代の飛行車「Xpeng X2」を公開した。親会社Xpengと同様に、個人の消費者向けにUAMソリューションを提供することでモビリティの未来を開拓しようとしている。
同社は今年7月、第5世代の飛行車である「Xpeng X2」を発売開始した。この車両は空中だけでなく道路でも動作する能力を備えた新しいモデルであり、乗客を運ぶことが可能となっている。最大43mphの速度に達し、30分間移動することが可能だという。同車体の最初のテスト飛行では、デバイスのバッテリーが発火して終了し、翌年の試運転中に別のクラッシュが発生。安全性を実証できる段階に到達するために、合計1千564回のテスト飛行が実施されたという。
2013年に設立されたHT Aeroは、自動車技術と航空宇宙技術を組み合わせて安全な国内電気飛行車両を大規模に開発することを目的としており、1万5千回を超える有人飛行を実施することで安全性を実証している。
現在、電気垂直離着陸機と呼ばれる空飛ぶ車は、多くの自動車メーカーや新興企業から関心を集めており、韓国のヒュンダイ、ドイツの新興企業Lilium などの企業が空飛ぶ乗用車を開発している。しかし、新技術である空中飛行者を消費者個人に提供するという目標に到達するまでには、やはり長い道のりがあるようだ。
技術応援融資で広がる技によるエコシステム構築
HT Aeroは、今年10月にXPengなどが主導する5億ドルの資金調達を発表したXpengからの投資をうけることで、自律走行技術、製造能力の共有や、物流支援を受けている。Xpengは、量産型EVモデルP5というファミリーセダンを2021年下半期に納車を開始する。この車両ではアリババのマップを利用することで中国の高速道路や一部の都市の道路を走行することができるようになる。
Xpengは車線変更、ランプへの進入、退出、追い越しの他、中国の複雑な道路状況ではよく観られる突然の割り込みに対する操作などを、すべて自動的に行うことができる「Navigation Guided Pilot(NGP)」というシステムを開発しており、テスラのNavigate On Autopilotをベンチマークとしている。スマートEVにとどまらずさまざまな形態のモビリティを1つのエコシステムに統合することで、現代の交通機関の歴史を覆そうとしている。
HT Aeroは、これらの技術的な支援を受けながら、2024年にその飛行および運転車両の正式な展開を計画している。XPengの会長兼CEOである何小鵬は今回の投資について次のように答えている。
「私たちは常に、スマートEVを超えた、効率的で安全なカーボンニュートラルなモビリティソリューションの模索を使命としている。現在我々が目にしているのは、スマートモビリティを推進する破壊的技術、新しいエネルギー源、大量生産の3つの統合である。交通の歴史では前例のないこの機会を利用し、今回の投資を通して運転と飛行を統合するためのエコシステムの構築をさらに加速するつもりだ。」
子供のころの夢を追い続け世界に飛行自動車を届ける
HT Aeroの創業者兼社長であるDeli Zhao氏は、中国の広東省に住む40歳のドローン技術者であり、子供の頃のファンタジーを実現するために、仕事を辞めアパートを売り、自分の空飛ぶバイクを作るという夢を追い求めている。2年前に彼は空飛ぶオートバイプロジェクトを開始し、中国の古典小説「西への旅」のキャラクターであるモンキーキングが使用した飛行雲である「マジッククラウド」という名前の飛行バイクを中国広東省東莞で飛行した。
飛行バイクを作るために、デリ氏自身は2千万元(280万米ドル)以上を投資している。彼はいつか飛行機で黄河を横切って飛ぶことを望みながら「自分の夢を実現するだけでなく、他の多くの人が飛ぶ夢を実現する」ことも目指している。
ドローンが中国で普及する流れを受け、2010年にドローン販売の会社を設立したデリ氏。夢を無謀だからと諦めなかったからこそ、5億ドル(約571億円)を調達する飛行者開発の企業にまで成長したのであろう。
同社は2024年に一般向けの販売開始を目指している。近い将来、世界中の人の夢を叶える空中飛行による旅行を実現させようとする技術の発展に期待が高まる。