経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

ランチェスター戦略と福祉ビジネス

介護・福祉業界の異端児 藤田英明の福祉再編(第3回)

ランチェスター戦略の効果とは

 ランチェスター戦略とは、英国のエンジニアであるフレデリック・ランチェスター(1868~1946年)が、第1次世界大戦時、戦争を有利に進めるために提唱した戦略論で「弱者の戦略」ともいわれています。

 1カ所に大量の物資や兵力を集めて、局所で勝つことを積み重ねる戦略で、現代では中小企業のための経営学に応用されています。たとえば、あるエリアに同じ系列のスーパーが集中して出店していることに気付いたことはないでしょうか。

 「同じような店が近くにあると競合するのでは?」と考えるのが普通です。しかし、同じエリアに集中することで、1店当たりの売り上げはダウンしても、全店で合計すると売り上げはアップします。

 その理由は、店舗が集中することで、近隣へ商品補充するための流通コストが下がり、たくさん店ができることで知名度がアップして、お客さまが増えるという効果を得られるからです。

福祉ビジネスにランチェスター戦略が有効な理由

 私どものような福祉ビジネスのベンチャー企業でも、大手企業と競うために、このランチェスター戦略が有効です。

 具体的には、全国にまんべんなくグループホームを立ち上げるのではなく、たとえば「葛飾区で一番になる」とエリアを絞って、葛飾区内にすべての資源を投入するのです。

 その地域に集中してグループホームを増やすと、まず人的配置が効率化し、コストダウンにつながります。スタッフがその地域に集中するので、移動コストが少なくなり、人手不足も同エリア内だとサポートしやすくなります。

 そうしてグループホームが同じエリアに増えていくと、利用者は自分の好みにあった施設を選びやすくなります。そして新たな利用希望者が、このエリアに集まってくる好循環も生まれます。

 また、拠点が増えることで、知名度がアップし、そこで「働きたい」という人も増えます。

 現在当社は、千葉県八千代市で、業界最多の21のグループホームを展開しています。そうなると他社は「アニスピがやっているエリアだから出店はやめておこう」となり、当社はそのエリアでより展開しやすい状況になります。

 特にグループホームの場合は、コンビニやマンションの建設と違い、立地へのこだわりは強くありません。

 駅が近く、お店が多い場所だと、アルコール依存症の人にとっては誘惑が多くなるため、駅から離れたエリアの方が適していたりするのです。

 また、コンビニの場合、隣り合った場所にあると競合しますが、グループホームの場合は、シェアハウス型、アパート型など、それぞれ違うタイプなので競合しません。

 こういったランチェスター戦略のメリットを参画企業の皆さまにご理解いただき、今後もエリア集中でグループホームを増やしていく予定です。

 また、グループホームだけでなく、訪問看護ステーションなど、ほかの事業も展開していくことで、さらなるニーズのアップ、利益のアップが見込まれます。

 エリア集中と複合化で、大手に負けない福祉ビジネスを実現していきます。      

アニスピホールディングス藤田英明
(ふじた・ひであき)1975年生まれ、東京都出身。明治学院大学社会学部社会福祉学科卒業。社会福祉施設で多数の現場を経験し起業。小規模デイサービス「茶話本舗」をフランチャイズ化するなど、「論語と算盤で業界にイノベーション」を掲げた経営を実践し、業界の異端児として注目を集める。現在、ペット共生型障がい者グループホームを全国627拠点運営するアニスピホールディングス代表取締役CEO。全国障害福祉事業者連盟理事長。