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「EDIに続きデータ・インテグレーション市場でも躍進を目指す」―安原武志(データ・アプリケーション社長)

安原武志・データ・アプリケーション社長
安原武志・データ・アプリケーション社長

企業間の電子データ交換(EDI)市場でマーケットリーダーのポジションを維持しているデータ・アプリケーション。ニッチな市場ながら日本有数のソフトウェアベンダーとして着実に地位を築いてきた。その同社がさらに歩を進め、データ・インテグレーション市場でも存在感を発揮しようとしている。DX化の必要性が叫ばれる今、顧客企業にどのような価値を提供しようとしているのか。安原武志社長に聞いた。(聞き手・文=吉田浩)

EDI市場でマーケットリーダーになれた理由

――1982年の創業当初はシステムインテグレーション(SI)に注力し、今は主力の「ACMS」シリーズを中心に、EDI市場でマーケットリーダーとなっています。時代に合わせて業態が変化していますね。

安原 はい。ただ、中期経営計画の中でも謳っているのですが、これからは「脱EDI」を目指していく方針です。

――そうなのですね。その理由を聞く前に、これまでの経緯をご説明いただけますか?

安原 創業当初はSIからスタートしたのですが、企業間の電子商取引、いわゆるEDIの領域へのかかわりが大きくなっていって、製品に改良を加えていった結果、パッケージソフトウェア化して販売しようということになりました。

当時、私はまだ入社していませんでしたが、EDI製品でマーケットリーダーになれた理由は、外資系企業などの製品に比べて、お客様の要望をいち早く取り入れてカスタマイズしたのと、手厚いサポート体制によって顧客満足度を高められたからだと認識しています。当社は15年ほど前にEDI業界ではいち早く24時間サポートを取り入れました。というのも、仮にシステムが止まって受発注ができなくなるようなことがあれば、顧客企業の大動脈が止まってしまいます。そうしたクリティカルな領域できめ細かいサービスを最初に取り入れたのも大きかったのかなと思います。

――その体制を組むためにエンジニアを大量採用したりしたのですか?

安原 いえ、人数をやりくりしながら精鋭部隊を割り当てました。ただ、おかげさまで主力のEDI製品ではあまり深刻なトラブルがなかったんです。もともと製品のクオリティが高いというのもあって、システムが主に運用される夜の時間帯にはほとんど問い合わせもない状況でした。とはいえ、お客様にとっては、何かあったときに頼れる場所があるというのは安心感に繋がります。

――高い技術力を発揮できている要因は何でしょうか?

安原 EDI中でも、われわれが手掛ける通信ミドルウェアの領域はかなりニッチなため、ほとんどの大手ベンダーが手を出しません。たとえば、SaaSの領域などはユーザーが何万人もいて、売上高数兆円の企業から個人経営のような企業にまで使用されています。一方、EDIを必要とするのは主に大企業ですから規模が限られてきます。昔の企業間通信は、大手がメインフレームで行っていましたが、オープン化によってさらに収益を増やしにくい領域になりました。そうした市場で生き残るためには、ナンバーワンになってある程度のシェアを保持していかなければなりません。

通信ミドルウェアは技術的にも特殊です。通信プロトコルなどをミドルウェアに実装できる技術者はそれほどいないので、自分たちで育成することになります。

EDIと社内間データ連携を一気通貫で

――そのEDIからの脱却を掲げている理由は?

安原 EDI市場は今後も爆発的に伸びるものではなく、基本的に需要には限りがあります。世の中に今あるのは、大きく分けて一般的な電話回線などを使う従来型EDIとインターネットEDIがあるのですが、現在でもお客様の50%以上が従来型EDIを使用しています。従来型とインターネットEDIを併用しているケースもあり、すぐに従来型がゼロになるわけではないですが、われわれにとってはインターネットEDI製品への買い替えが進むチャンスととらえています。

そこで、せっかくEDIを見直すのであれば、社内システムの見直しも同時に進めてほしいということで、「ACMS Apex」という製品とデータハンドリングプラットフォームである「RACCOON」という製品の販売を強化しています。EDIはファイルの送受信だけではなく、ETLと呼ばれるデータフォーマットの変換や編集、他の業務システムへの連携などを司るのですが、EDIを見直すタイミングで、新しいデータ連携と言われているデータ・インテグレーションなどもカバーしていく。つまり、企業間連携だけでなく社内のシステム間連携も一気通貫でやっていただこうという戦略です。

決してブルーオーシャンではないですが、そちらの市場はEDI市場より圧倒的に大きくなります。ETLとEDI、そしてEAIと呼ばれる複数の社内システム統合の3つを単独の製品でカバーできるのは、国内ベンダーではわれわれだけとなります。

――社内システムの連携技術については以前から持っていたのでしょうか?

安原 以前はなかったので、製品同士を連携して実現してきましたが、業界によってはEDIの手順とは関係なしにソフトウェア同士を繋げるAPI通信で企業間取引もやってしまおうという機運も出てきているので、いろんな業界から情報を取りながら、今後について考えているところです。

―― そうした製品が求められる背景は?

安原 各データが異なる仕組みのデータベースに入っていると、経営者が意思決定したり、他社と取引したりする際に、それぞれのシステムの担当者を集めてデータを抽出・分析しなければなりません。これはどこの企業にもある話で、データ連携や統合を行うためには、各システムをつなぐ仕組みが必要不可欠なのです。

サブスクビジネス強化で自社と顧客双方にメリットを

――製品をさらに売っていくための課題は何ですか?

安原 これまでEDI製品の販売のほとんどは、外部のパートナー企業にゆだねていました。当社の製品を顧客に推奨していただく一方で、SI業務などをパートナー企業にお任せすることでシェアを拡大していきました。そうしたチャネル戦略が以前はわれわれの強みだったのです。ですが、既存のお客様の中には、EDIはACMSを導入しつつ社内のデータ連携は別のシステムを採用しているところも多く、それをこれからACMS Apexに置き換えていただくというのはなかなか難しい面もあります

ですから、今後はわれわれ自身で大きな成功事例をしっかりと作っていかなければなりません。たとえば、ACMS Apexを導入したらシステムを構築しやすい、メンテナンスがやりやすいといったメリットをパートナー企業やお客様に理解していただく必要があります。昨年4月からは、顧客開拓を専門的に担当する社内チームを稼働させています。

――中期経営計画では、サブスクリプションビジネスの強化を打ち出しています。その狙いは?

安原 シンプルに当社の安定的な売り上げに寄与するという部分の他、お客様にとっても製品を購入した場合に比べてサポートが手厚くなったり、いつでも最新版にバージョンアップできたり、IT化の予算を組みやすくしたりといったメリットを享受していただくのが目的です。当初の計画より、早いペースでサブスクへの移行が進んでいます。

EDIのお客様を見ると10年以上継続して製品を使っていただける場合が多く、保守サービス継続率も95%を超えています。今後も同程度の期間継続していただけるとすれば、かなり安定的に稼げるモデルと言えます。

――今後の抱負をお願いします。

安原 今年1月に改正された電子帳簿保存法や2023年に導入されるインボイス制度など、新たなキーワードが出てきたタイミングで業務システムの連携にも手を入れようと考えるお客様が増えると予想されるため、ACMS Apexへの置き換えを提案するチャンスだと捉えています。今後は専門チームからのフィードバックをもとに、お客様からの反応をメッセージとして伝えていくこともしていきたいです。ACMS Apexの導入によって業務のリードタイムが短縮するのは確実なので、その点を強く訴えていきたいと思います。