経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

人材DXで能力を可視化し「ご機嫌な社会」づくりをーヒトラボジェイピー

ヒトラボジェイピー 社長 永田 稔(ながた・みのる)

ヒトラボジェイピーが開発した日本初のAIによる人材能力評価システム「マシンアセスメント」は、100社を超える大企業で導入されている。人材の専門家の知見をシステムに反映させており、社員の能力の把握、リーダー人材の発掘、選抜、人材育成のモニタリングが短時間かつ安価で可能だ。

ヒトラボジェイピー 社長 永田 稔(ながた・みのる)
ヒトラボジェイピー 社長 永田 稔(ながた・みのる)

心理学者やコンサルタントのノウハウが詰まったシステム

従来、社員の能力評価は上司に任されていたが、評価スキルにばらつきがあり、結果として年功序列を脱しきれないという問題があった。

能力評価の専門家に依頼することもできるが、コストが高く、定性的であり、データとして活用できず、可視化もできない。

20年近く人事コンサルティングに従事してきた永田稔社長はAIを使って、誰でもが安価・迅速に能力アセスメントを受けることができる仕組みの必要性を感じた。そこで心理学者やコンサルタントといった専門家とプロジェクトチームをつくり、日本初の人材能力評価システムの開発を行った。

もともと永田社長は、松下電器産業(現・パナソニック)、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経てウイリス・タワーズワトソンに入社。共著『不機嫌な職場』(講談社現代新書)は35万部のベストセラーに。現在は立命館大学大学院経営管理研究科の教授も務める人材評価のスペシャリストだ。

「例えば、部下を持つリーダーに成果事例を書いてもらうと『マシンアセスメント』によって、実行力がある、チームワークを重視する、慎重に決断するといった、行動特性や能力が分かります。そのデータを元に、適材適所への人員配置が可能になり、欠けている部分を研修で補うといったことが迅速に判断できるようになります」と永田社長は語る。

「マシンアセスメント」を使えば、新卒を採用する際に送られてくる大量のエントリーシートを分析し、自社が求めるハイパフォーマーな人材を選出することも可能だ。

「データ化・定量化することで、エントリーシートの読み込みにかかる時間を大幅に削減することができ、その分、重要人材の選出に時間をかけることができます」

人材育成でも、これまでは研修の効果を測るものがなかったが、「マシンアセスメント」を使えば、研修を受ける前と受けた後で、行動がどう変わったかをデータでチェックすることができる。

「研修の成果と満足度は異なります。ブラックボックスだった研修の効果も明らかになりました」

VR・AR空間で仮想コーチによる人材育成も

同社は、約300万の人材行動データを保有。シンガポールでもマシンアセスメントが使われるなど、世界でも通用するシステムとして注目されている。

今後はこのデータを活用し、従来のOJTを超える新たな人材育成の方法として、デジタルでのトレーニングを展開していく予定だ。

「OJTではどんな上司に付くかで、成長できる度合いが変わってくるという面があります。しかし、VR・AR空間での人材育成、人の能力の拡張機能サービスをつくれば、新人に平等な成長の機会が与えられるようになります。リーダー人材の育成では、仮想コーチによるコーチングサービスも考えています」

「マシンアセスメント」のデータからは、自分のパーソナリティーと合っていない行動をしている人はストレスが高いことも分かり、適性を見極め、最適な人員配置を行う指針にもなる。

誰もが可能性を広げられるインフラづくりを目指す

現在、「マシンアセスメント」は企業を中心に提供されているが、今後は個人が利用できる仕組みも検討中だという。

例えば、iPhoneのSiriに「部下をやる気にさせるにはどうしたらいい?」と尋ねると、「こうしたほうがいい」と具体的な行動のアドバイスをくれるようなイメージだ。

「誰もがパーソナルコーチを気軽に持つことができ、ビジネス教育を受けられる機会が増えるインフラをつくれると、仕事上の悩みを解決しやすくなり、もっとご機嫌な社会になっていくのではないかと考えています」

個人向けのサービスとしては、既に経営書のマッチングサービス「ココヨメ」を準備しており、困ったときにどんな本のどの部分を読めばいいかを教えてもらえる。

「『ココヨメ』は従来の書籍紹介ではなく、個々人の能力課題に応じ、同じ本でも『この章のこの点を重点的に読むとよい』というアドバイスを提供するサービスです。将来的には、VR空間上に個別の『リーダーシップライブラリー』を用意し、そこで仮想コーチやココヨメサービスを受けられるイメージを持っています」

人材評価DXや人材育成DXから、「人そのもののDX化」へとサービスを展開していく同社。

「テクノロジーによって、誰もが自分の可能性を広げることのできる世界、自分にあったコーチングを安価に受けることができる世界を実現したいと考えています」 

会社概要
設立 2016年6月
資本金 1,000万円
本社 東京都目黒区
従業員数 15人
事業内容 HRテック系の組織・人事コンサルティング、日本初の自然言語処理AIによる人材能力評価システム「マシンアセスメント®」の開発(特許取得済)
https://hitolab.jp/