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最先端の集束超音波治療で膵がん治療の可能性開く大学研究発ベンチャーーソニア・セラピューティクス

ソニア・セラピューティクス 社長兼CEO 佐藤 亨(さとう・とおる)

膵がん(膵臓がん)は難治がんと言われ、5年生存率は10%ほど。ソニア・セラピューティクスは、集束超音波による画期的な治療法で膵がんの治療装置の開発に挑んでいる。体への負担が少なく、日帰り治療も可能になるという。年内の治験開始を目指す。

ソニア・セラピューティクス 社長兼CEO 佐藤 亨(さとう・とおる)
ソニア・セラピューティクス 社長兼CEO 佐藤 亨(さとう・とおる)

がん領域を扱う製薬会社に勤めていた佐藤亨代表は、膵がん治療の難しさを思い知らされてきた。

「10年以上がん治療に携わってきた中で、膵がん治療の難しさを感じてきました。2019年、膵がん治療の道を開く大きな可能性を感じたのがHIFU治療でした」

HIFU治療は、集束超音波(high-intensity focused ultrasound=HIFUハイフ)を用い、超音波を対象組織に集束させることで加熱し、がん細胞を壊死させる。「膵がん治療を変えられるなら心血を注ぎたい」と当時国産の超音波ガイド下HIFU治療装置を開発していた東京女子医科大学の岡本淳准教授(当時)と吉澤晋准教授(当時)と共に起業した。

ところが、日本ではがん治療の医療機器の多くを輸入品に頼っており、「成功事例がない」ことを理由に資金調達がなかなか叶わなかった。

「ならば自分たちが初の成功事例になろうとの気概で進みました。するとがん治療に精通した、あるいはわれわれの取り組みに共感してくれる投資家が出資を決めてくれました」

21年にはロボット開発や医療機器を手掛ける平田機工と提携。ミリ単位の制御が求められる治療装置の製造に心強い味方だ。

装置はベッド2つ分の広さがあれば設置でき、汎用性が高い。また、放射線対策用の設備も不要だ。

現在、薬事承認を得るための治験に向けた準備段階にある。世の中で利用されるには治験で有効性と安全性を示し、保険適用されることが重要。そのために、医療関係者や患者団体などから理解を得る必要がある。

実用化後は、がん治療を行う国内の大学病院や専門病院から展開し、欧米や中国へ海外展開する予定。また他のがん種への応用も考えている。展開スピードを意識しつつ、生命に関わる仕事ゆえの慎重さも持つ。

「想定リスクを洗い出し、さまざまな対策を講じた治験機が間もなく出来上がります。その治験機を用いて、治験で確かな安全性と有効性を示すことで、がんと向き合う患者さんに新たな治療を提供したい。根拠あるデータに裏付けされた安全性と有効性を示していくことが、医療に携わるわれわれの責務です」 

会社概要
設立 2020年2月
資本金 5億8,300万円(資本準備金含む)
本社 東京都新宿区
従業員数 14人
事業内容 超音波ガイド下集束超音波(HIFU)治療装置の開発
https://www.sonire-therapeutics.com/