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デザインとエビデンスを両立したデザイン家電が家電業界を変えるーカドー 古賀宣行

カドー社長 古賀宣行

毎年日本で3月から4月にかけて売れるのが目薬や鼻炎などの花粉症関連商品。この時期になると家電量販店に専用コーナーが設けられていた空気清浄機は、新型コロナの感染対策として花粉の季節だけではなく1年を通しての売れ筋商品となってきた。その中でデザイン家電メーカーとして知られるカドーの存在感は増している。文=井上 博

カトー社長 古賀宣行
カドー社長 古賀宣行(こが・のりゆき) 1980年に大学卒業後ソニーへ入社。メカ設計者として歴代WALKMANの開発に従事。2006年から中国・深センに赴任。10年にソニーを退社後、12年にエクレア(現カドー)の代表取締役に就任。

季節家電から通年家電へ拡大する空気清浄機市場

 毎年3月から4月の花粉症の季節になると売れるのが空気清浄機。家電量販店の売り場では大手・中小の家電メーカーから新興のベンチャー企業、そして海外メーカーまで多くの機種が販売されている。その中でデザイン性と機能性を両立させた〝デザイン家電〟メーカーとして知られるカドーの空気清浄機「LEAF」シリーズが人気となっている。

 「機種がありすぎてどれを買えばいいか迷うのが今の空気清浄機売り場だと思います。各社の独自の技術や機能を大きくアピールし、使用目安も何畳用と表記されていますが、実際のところこれでは一番肝心な基本性能が分かりづらいのです。当社の『LEAF』シリーズは、日本メーカーとして初めて米国規格協会の評価試験『CADR(クリーンエア供給率)』で最高得点の評価を得た商品で、空気清浄機の基本性能を追求しています」と、カドーの古賀宣行社長は説明する。

 空気清浄機という商品自体は、室内の空気を吸い込みフィルターでろ過し、きれいになった空気を排出するというシンプルな仕組み。その基準である米国「CADR」は、フィルターそのものの除去能力や風量を測るだけでなく、〝きれいな空気をどのくらい排出できるか〟を測定し、その数値を性能の評価基準としている。仕組みに大きな違いのない空気清浄機という商品において「CADR」で最高評価を得たことは「LEAF」シリーズの基本性能の高さを証明している。

 「それを実現するのがほとんどの空気清浄機で使われているHEPAフィルターと当社独自の光触媒をコーティングした活性炭の2つのフィルターの組み合わせにあります。活性炭が吸った汚れや臭いを光触媒が分解することでフィルターの長寿命化を実現できました。当社はフィルターの寿命も空気清浄機の基本性能のひとつと考えています」と、古賀社長。

 2010年代に中国ではPM2・5による大気汚染が大きな社会問題となり日本の大手家電メーカーの空気清浄機が爆発的に売れたが、今はほとんどのメーカーが中国市場で苦戦を強いられている。その理由は中国が空気清浄機の評価基準を「CADR」より厳しくしたからである。

 「今の中国国内の基準は米国の基準にはないフィルターの寿命、臭いの除去に高いレベルが求められます。当社の空気清浄機は中国の基準もクリアしていますので、その基本性能の高さは国際的な評価基準でも認められています」

 花粉の季節だけ使う季節家電だった空気清浄機だが、新型コロナの感染対策として年間を通して使用する家庭も増え、今では〝通年家電〟に変わってきた。季節が終われば片付けていたものが1年を通して同じ場所に置かれるようになったことで、デザイン性の高さに加え、フィルターの寿命も消費者の選択肢として求められるようになった。

 「発売当初から基本性能とデザイン性を融合し、両方を満足させる商品開発を目指してきたことで、新型コロナ禍の中で当社の『LEAF』シリーズはさらに高く評価されるようになりました」

新型コロナの感染対策として通年家電となった加湿器

「STEM 630i」
インテリアとしても高いデザイン性で人気の「STEM 630i」

 デザイン性と機能性を備えたカドーの空気清浄機と同様に人気が高いのが加湿器「STEM」シリーズである。特に最上位機種である「STEM 630i」は水の補給が簡単で残量が一目で分かるシンプルなデザインが人気となっている。

 加湿器には大きく分けてスチーム式(加熱式)と、気化式および超音波式の3つがある。超音波式は消費電力が少なく、小型化が可能であり、機器本体のデザインも自由度が高いのが特徴だが、ミストに含まれるカルシウム成分によるホワイトダストの発生とタンク内の水によるカビや細菌の繁殖という2つの問題があった。そのため大手家電メーカーは超音波式の採用を控えてきた。

 「当社の加湿器『STEM』シリーズは、ホワイトダストをカートリッジ式の高性能イオン交換樹脂で抑制し、カビや細菌は金属触媒で除菌することで超音波式の2つの問題を改善しました。最近では新型コロナ感染対策として当社の空気清浄機と加湿器を併用するユーザーも増えており、加湿器も季節家電から通年家電へとニーズが変わってきました。デザイン性に加え、超音波式の問題を改善したことで1年中使えることが人気の理由です」と、古賀社長は説明する。

 通年家電になったことで大手家電メーカーは空気清浄機と加湿器が一台になった商品を発売しているが、本体に2つの機器をまとめた分フィルターのスペースが削られ、空気清浄機の基本性能が弱くなっている。基本性能を追求する同社は、あえて空気清浄機と加湿器をそれぞれ専用機として開発してきた。

 「ワンテンス社とコラボレーションした除菌効果の高い電解酸性イオン水『Purio』も新型コロナ感染対策商品として好評です。水で希釈して加湿器に入れればミスト化された除菌水が噴射されますが、これができるのも超音波式のメリットといえます」と、古賀氏。

 今後、同社は「睡眠家電」の企画、開発を進め、今までとは違う家電分野への進出を目指している。

 「今でも睡眠度合いを計るウェアラブル端末や、音や光、香りなどで睡眠を誘導するいろいろな商品がでていますが、睡眠効果のエビデンスについては曖昧な点も多いのです。空気清浄機と同様に評価基準、つまりエビデンスが明確な睡眠家電を開発し、この分野でのリーディングカンパニーを目指します」と古賀社長は新ジャンルへ意欲をみせる。

 確かに睡眠関連ビジネスをみると新素材、新発想の枕やマット、リカバリーウェアなどがヒットし、消費者の睡眠への欲求は高まっている。基本性能を追求し、エビデンスを明確にするカドーがどんな睡眠家電を作るのか注目していきたい。