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猛暑は人間だけの脅威ではない。ペットの暑さ対策にも注力を【特集 猛暑こそチャンス】

特集_林雄一 ドギーマン

東京では6月末に6日連続の猛暑日を記録した。エアコンの利用やこまめな水分補給で熱中症対策が必要な季節となったが、ペットについても同じこと。猛暑は体の小さい彼らにとって、われわれが想像する以上に過酷だ。ペット業界各社は彼らに少しでも快適な夏を過ごしてもらうために、今年もさまざまな施策を打ち出している。聞き手・文=萩原梨湖 Photo=藤岡修平(雑誌『経済界』2022年9月号より)

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犬が日中の散歩で感じる暑さは人間の約2倍

 人間は暑い時、皮膚から汗を出し、それが冷やされることで体温が下がる。しかし犬や猫は皮膚に汗腺がないため人間のように汗をかくことができず、口を開けて〝パンティング〟と呼ばれる浅く速い呼吸をすることでしか体温調節ができない。

 加えて、犬や猫は体が地面に近いため、アスファルトからの反射熱を受け、人間の約2倍の暑さを感じる。日中はアスファルトの表面温度が65℃を超えることもあり、犬や猫にとって夏は非常に危険な季節だ。

 ヤフーショッピングで「犬 暑さ対策」と検索すると夏向け商品がずらりと並ぶ。ランキング1位は衣服に4つのポケットがついたクールウエアで、それぞれのポケットに保冷剤を入れて散歩に行くと保冷剤の冷気で体が冷やされるというものだ。

 2位も同様にクールウエアだが、こちらは水に濡らして絞って着用させるもので、衣服の水分が汗のように蒸発するため涼しくなる。このような衣類はほかのメーカーからも販売されており、メッシュ素材で風通しが良いものや、UVカット効果のあるものがあり、日常のお散歩使いから、川や海でのレジャー用など目的によって使い分けることもできる。

 4位には冷感マット、6位には冷感ベッドがランクインしている。どちらも素材はポリエステルや綿を使っており布製だが、アルミや大理石、ござ、ジェルなどを使用した冷感マットを製造販売しているメーカーもある。冷感の強さや持続性、掃除のしやすさという観点から自分のペットに合ったものを選ぶことができる。

 日中、仕事で頻繁に家を空ける人や、涼しい時間帯の散歩が難しい人は、暑さ対策グッズをうまく活用してペットと共に今年の夏を乗り切ってほしい。

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林 雄一 ドギーマンハヤシ社長

ペットの生活スタイルと季節性に合わせたケアを

―― 夏の商品は冷夏より暑い夏の方が売れるのでしょうか。

林 食品系はあまり変化しませんが、冷却グッズやクール商品は暑い方が売れます。こういった商品は冷夏であると売り上げがガクッと落ち、逆に暑くなるのが早いと、すぐに売り切れることがよくあります。

 防虫商品に関しても同じことが言えます。梅雨の時期に雨が降ることで虫が湧きますので、空梅雨では防虫商品は売れなくなってしまいます。季節品を売り出すビジネスとしては、その季節相応の気候になってもらわないと困るわけですね。これはどの業界においても言えることだと思います。

 今年は気温がなかなか上がらず苦労しましたが、ようやく暑くなってきたので、今年の夏は期待しています。

―― 今年はどんな商品に力を入れていますか。

林 ペットの犬や猫をSNSにアップする方が増えてきているので、おもちゃやベッドなど、SNS映えするようなデザインに工夫を凝らしています。

 クール商品というのは20年ほど前から扱っていたのですが、他社さんも扱い始め、市場の取り合いになり、これから当社でどんどん拡大していくカテゴリーというわけではなくなりました。そこで、デザインに特化した単発の商品を毎年リリースして楽しんでいただく、というような方向性で取り組んでいます。

 今年のテーマは「昔ながらに愛されるおやつシリーズ」です。猫用のハウスには、アイスボックスに並んでいたアイスキャンディー、喫茶店のフルーツサンド、店先で食べるかき氷などをモチーフにした3種類を用意しました。世代を超えた夏のおやつは、見る人によっては懐かしく感じたり、新鮮に見えたりもします。

 このアイデアは若い社員から上がってきたもので、デザインの細部や猫が楽しめる仕掛けなどに彼らのこだわりが詰まっています。

―― 飼い主さんとのコミュニケーションも取りやすそうですね。

林 そうですね。コロナが流行り自宅で過ごす時間が長くなったことで、ペットが遊んでいる様子を飼い主さんが撮影して楽しめるグッズや、ひっぱりあって遊べるようなおもちゃはよく売れました。

 そういう意味では、われわれの業界にとってコロナは追い風になり、2021年3月前期は過去最高の売り上げで、初めて200億円を突破しました。

―― 飼い方の変化によって売れ筋商品も変わってきたのでは。

林 今の時代は室内飼いが当たり前で、犬は人間の生活の中に入り込んでいます。

 もともとは屋外で買っていたペットが室内飼いになり、最も売れ行きが変化したのはノミやダニの予防、駆除商品です。室内で飼っていると虫が体につかないのでノミ取り用品がほとんど必要ありません。昔はノミ取り用品は定例品で夏場はすごく売れたんですけど、今はほとんど売れなくなりました。

 わが家では日本テリアを2匹飼っていますが室内飼いをしていて、夏はクーラーをつけたまま外出します。夏に散歩するときなんかは地面の熱さでやけどする恐れがあるので、朝の早い時間や日が落ちてから、アスファルトを手で触ってみて熱くなければ出掛けます。

 本当は犬用の靴や靴下を開発することも考えたんですけど、よほどしつけがきっちりされている子でないと履いてくれません。履いてくれたとしても身動きが取れなくなったりします。犬や猫の生活をよく観察していると、ペット用品のビジネスの可能性を感じます。