経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

多様な働き方を支えるプラットフォームの提供で豊かな未来へ ACALL 長沼斉寿

長沼斉寿 ACALL

ワークスタイルのDXを手掛けるACALL(アコール)。同社の「ワークスタイルオーエス」は、社員間で互いの業務時間や仕事場などを把握でき、オフィスの会議室予約などの機能も備える。新型コロナウイルス禍で需要が高まり、大企業からスタートアップまで幅広く導入されている。文=榎本正義(雑誌『経済界』2022年9月号より)

長沼斉寿 ACALL
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長沼斉寿 ACALL社長
ながぬま・よしひさ 1982年鹿児島県生まれ、兵庫県宝塚市出身。神戸大学経営学部卒業後、日本IBMに入社し、金融市場向けグローバルソフトウェアの提案に従事。同社退社後、空間デザインの専門学校を経て、2010年10月BALANCE&UNIQUE(現ACALL)を設立し、社長に就任。

“オフィス変革期”の今こそ働く時間と場所の選択を

 少子高齢化に伴う労働人口の減少や社会のグローバル化、インターネットをはじめとする情報技術の進化を背景に、個性化・多様化していく人々のライフスタイル。働き方においても「育児や介護と両立しながら働きたい」「自分の好きな時間、場所を選びたい」「複数の仕事を手掛けたい」など、それぞれの事情や価値観によって、さまざまな選択肢が求められている。

 さらにコロナ禍で一気に進んだ、リモート勤務とオフィス勤務を組み合わせたハイブリッドワーク。新型コロナウイルスの影響で、オフィス回帰やハイブリッド、AWS(社員が自律的に業務内容や気分に合わせて、時間と場所を自由に選択する働き方)といった多様なオフィスのありかた・働き方が見受けられるようになった。

 一方、リモートワークで誰が出社しているか分からない、気軽なコミュニケーションが減った、健康状態が悪化した、出社制限でオフィスの広さ、立地、レイアウト、最適な設備が知りたい、出社すべきかの判断基準が分からない、オフィスDXといっても何から手を付ければいいか分からない、会議室貸し出しや入館手続きなどの管理がアナログ……といった新たな課題も見つかっている。

 「センターオフィスに行く理由が求められる“オフィスの変革期”が到来している」と言うのは、ACALL社長の長沼斉寿氏だ。

 同社が2020年にリリースした「WorkstyleOS(ワークスタイルオーエス)」は、さまざまなスポットとワーカーを繋ぐことで、働く時間と場所を自由に選択でき、より充実したワークスタイルを実現するプラットフォームとなっている。現在、大手企業を中心に中堅、スタートアップまで多くの企業で導入が進んでいる。導入費用はユーザー課金なので、使う人数と使う機能の掛け算で、1人あたり月額数百円から、となっている。

 「ワークスタイルオーエスは、PCやタブレット、スマートフォンで柔軟に働く場所を選択し、登録することができます。オフィス内なら自分が座っている座席や会議室、テレワーク用のブースなど、またオフィス外ならコワーキングスペースやカフェ、ホテルなども登録することができます。個々のチェックイン、チェックアウトと、その間のステータス(仕事中か休憩中かなど)をデジタルで見える化し共有することができる仕組みになっています。このため働く場所が多様化してもコミュニケーションを円滑にとることができます。それらの場所のカギの連携もできるので、予約から決済まで可能です。働く人と会社を取り持ち、よりハッピーに働けて、よりパフォーマンスを発揮できればいいと思っています」

 ACALLのビジョンは、“Life in work in Life for Happiness”“テクノロジー企業として、人々の「くらし」と「はたらく」を自由にデザインできる世界の実現をめざす”としている。新時代に向けて、働き方の可能性を広げる新たな価値を提案している。

来客対応RPAサービスがWorkstyleOSに

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WorkstyleOS

 長沼氏が起業を決意したのは高校時代。父親をすい臓がんで亡くしたことがターニングポイントになっている。人生は一度きりで、最後の瞬間に良い人生だったと思える悔いのない生き方をしたいと考え、自分で会社を経営することに興味を持つようになった。

 その後、神戸大学経営学部に進み、卒業後は日本IBMに入社する。その時「5年で起業する」と決め、システム運用保守、営業、コンサルティングなどビジネスの流れを把握できるような仕事に従事。時間外でも、起業のアイデアが出たら、そこにニーズがあるかを表参道で街頭アンケートを実施したり、アイデアに関連した箇所を実際に見て回ったりして情報を取りに行っていた。そして5年でいよいよ自分で新しいビジネスを立ち上げて社会に発信するべく、BALANCE&UNIQUE(現ACALL)を10年10月に設立した。

 当初はB2B向けSaaSビジネスを主に展開し、インテリア建築向けウェブサービス「SMARTPLACE」やメンタルヘルスウェブサービス「priskHR」の事業を行っていた。15年に来客対応RPAサービス「ACALL」を事業化。エンジニア中心の小さな組織だった同社は、来客の度に対応が求められ、作業が中断するという課題を抱えており、その解決に向けてオフィス受付の無人化・会議室管理・セキュリティ連携を実現するアプリを開発。高額な設置費用や手間が必要だった受付システムは、クラウドを活用し、iPadアプリと連動させたことで、その導入のしやすさから話題となり、同社の主力商品になった。

 17年に社名もサービスに合わせて改称し、20年5月にACALLを進化させた法人向け「WorkstyleOS」のリリースへとつながった。同年10月にはJ-Startup KANSAI企業に選定され、21年12月には、デロイトトーマツグループの日本国内のテクノロジー・メディア・通信業界の収益(売上高)に基づく成長率ランキングの「2021年日本テクノロジーFast50」で13位を受賞している。

 「今後はワークスタイルオーエスの価値をより高めていくことが重要と思っています。そのためにはエンジニアを増やし、開発体制を強化していかなくてはなりません。ワークスタイルオーエスは、いろいろな場所や設備につながり、働きやすさを提供するプロダクトなので、それらをすべて自前で行うのではスピードが遅くなってしまいます。ワークスペースを提供する企業との提携など、外部のそれぞれの分野のプロの方々と一緒に展開を進めていきます」

 長沼氏は鹿児島生まれなので、島津斉彬の「斉」の字にちなんで名付けられた。視野が広く、海外にも知見の広い名君だった郷土の偉人のように、長沼氏もこれから大きく世界に羽ばたくことを夢に描いているのだろう。