磁気治療器のラインナップで日本、アジア、EUに展開するコラントッテ。首、肩、腰などの血行を磁力で改善し、コリをほぐす磁気治療器をネックレスなどに装着して各種の症状を緩和する製品が人気を呼んでいる。コロナ禍を経ても業績は堅調。トップアスリートも信頼を寄せる開発力で、次々に商品を生み出し続け、さらなる発展を目指している。(雑誌『経済界』2022年10月号より)
健康寿命の延伸が大きな課題となるなか、生活者の健康意識も年々高まりを見せている。ヘルスケア市場はマーケットの拡大に乗じて参入する企業が多い激戦区。その中で同社は急成長、一挙に株式上場を果たした。小松克已社長がコラントッテを設立したのは1997年。家庭用磁気治療器製品では後発にもかかわらず圧倒的存在感をもつに至った背景には、独創的な開発力と日本、韓国、トルコ、ヨーロッパで取得した医療機器認証や特許がある。
製品は、磁気の配列に特長がある。従来の磁気治療製品は、身体に面する磁極が一律に並び、磁力は垂直方向にのみ伝わる。製品の「コラントッテ」は「N極S極交互配列」で、並んだ磁石同士も引き合うため平行方向にも磁力がはたらく。つまり点でなく面で、広範囲の血行を改善するのだ。高い効果を見込めることは分かっていても、量産に向かない複雑な仕様で他社は中々、手を出せない。その困難を乗り越えて同社は製法・縫製を改善して特許を取得した。続けてISО13485(医療機器の品質マネジメントシステムに関する国際規格)も取得した。
競合が多い家庭用。磁気治療器製品で安定成長
「コラントッテ」は、小松社長が自ら作ったサポーターから始まっている。父親の脳梗塞に由来する痛みを和らげるためだった。従来の同磁配列の磁気治療器では納得できず、自身で磁極を交互に並べてみると、父親の笑顔が戻った。医師にも認められ、タンクトップとウエストベルトからスタートした。大切な家族を笑顔にしたこの原理で、より広く身体の痛みやコリに悩む人に届けたい――「コラントッテ」の商品名にはその想いが込められている。
「本物は残る。ちゃんと経営していれば会社は続く」。小松社長は何度も言葉にする。その信念が実って2021年、創業から20有余年を経て東証マザーズに上場。しかし、ここまでの道のりは平たんなものではなかった。苦しいときに支えてくれた家族の存在と「倒産」で多くのことを学んだ経験が糧になった。
小松社長が経営者を志したのはわずか7歳の時。映画の影響だったという。15歳で建築会社の社長を目指すが、建築業を選んだのは、最も高額な買い物である家を、自分なら安く建てられるという考えだった。そして、24歳で会社設立。独自の視点と手腕で飲食店や釣り関係の会社などさまざまな事業を多角的に手掛け、発展させてきた。
そんな中、立て続けに2件の詐欺にあう。38歳と40歳の時だった。「決断しました。会社をやめて、早く次に向けて立ち直ろうと」。多額の負債を抱えた会社は倒産。その苦境を支え、励ましてくれたのは家族だったという。
「仕事でちょっと躓いただけで生き方は間違っていないと思う」という妻の言葉に力を得て、家を引き払いマンションに移り住んだ。一念発起して立ち上がり、「妻と娘に大阪でいちばん価値の高いところに家を建てる」と言い切った。1997年10月、倒産から半年後に、妻を社長として現在のコラントッテを設立、他社に真似できないほど素材や縫製の細部にこだわり、本物への追求を貫き通した。「ちゃんとしておくべきことは守ってきた自信がある」
無名のコラントッテが売れはじめたのは、効き目の原理を模型で説明し、売り場を医療分野からゴルフといったスポーツ界にシフトしたことだ。他社に売り場を占拠される薬局と比べゴルフ愛好家の支持は熱かった。ダンロップ社と組み、各地の展示会を回った。試着で体感できる効き目が噂を呼び、広まった。
現在、多くのトップアスリートと契約しているが、自社からオファーした選手はほとんどいないというのも商品への信頼の表れだ。金融機関への負債を3年で返済した。
「会社を一度なくしているから、長生きさせたい気持ちが自然に湧いているのかもしれません」上場を経て、目指すは〝100年企業〟だ。
現在、本社ビルには約70名の社員が在籍している。表情が明るく、社長が現れるとまるで同僚のようにグータッチをする。小松社長は、毎朝すべてのフロアを訪れては全社員とコミュニケーションをとる。机の配置が変わっていることに気づくほど、社内を熟知している。「社長の仕事は早く物事を決めて責任を取ること、それだけです。現場については毎日向き合っている社員のほうが詳しいはず」。決断が速い理由は「状況を見て、決めたことを変える勇気が大切。それができるから決断できるんですよ」。悩み続けるのは30分が限界だという。
“本気の笑顔の実現”が経営理念であり判断基準
小松社長は、目標とビジョンの違いを明確に分けている。多角的に事業を展開していた頃、自社ビル建設をはじめ目標を次々と達成していった。順風満帆に見える中で、感じた物足りなさ、何のために経営しているのかが見えなくなった。具体的な達成目標とは別に、経営していく上でのあり方をビジョンに据えた。それが現在の経営理念「本気の笑顔の実現」である。
楽しいかどうか? 目標のために、苦労するのではなく、どのような経営判断も笑顔につながっているかどうかが基準になる。「人を幸せにするもっとも身近な方法、それは本気で人を笑顔にすること。お金もかからないし誰にでもできます」。
健康に偽物は通用しない。独自技術を活かしながら本物の商品力で新たなニーズに応えていくその背景には、いつも家族の存在がある。小松社長は、社員もお客様も家族と捉えているように見える。
またQOL(生活の質)向上への貢献の一環として不安から生活者を守る領域へも展開を広げている。高齢者や一人暮らしの学生など、身に着ける商品の利点を生かした、緊急時の家族への連絡サービス「CSS(コラントッテ・セーフティ・システム)」は、自社でコールセンターを設置し、法人向けサービスとして展開している。
周囲の人を惹きつける小松社長の魅力は、本物の笑顔を喜べる軽やかさだと分かる。世界中の人を笑顔にするエッセンスが盛り込まれた商品展開はこれからも続いていく。