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婚活業界最大級のネットワークとノウハウで日本の成婚を創出 IBJ 石坂茂

石坂茂 IBJ

業界最多の約8万人の登録会員数を持つ結婚相談所ネットワーク。「日本結婚相談所連盟」をはじめとする婚活事業を基軸に、ライフデザインビジネス(ウエディング、保険、住まいなど)の幅広い分野にも取り組む。少子高齢化に伴い期待の高まる婚活事業で「徹底成婚主義」を掲げ、成婚組数2万5千組創出へ挑戦している。文=榎本正義(雑誌『経済界』2022年10月号より)

石坂茂 IBJ
石坂 茂 IBJ社長
いしざか・しげる 1971年東京都生まれ。東京大学経済学部卒業後、95年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2001年に日本初のインターネット専業で結婚情報サービスを展開するブライダルネット社長に就任。06年IBJを設立し社長に就任。

全国を網羅する婚活のプラットフォーマー

 「昔ながらの結婚相談所、結婚情報サービスはたくさんあります。いろいろな婚活マッチングアプリも流行っています。しかし、全国を組織的に、かつクオリティを担保しながら網羅する婚活のプラットフォーマーは、これまでいませんでした。IBJは、この業界における最初で、かつ最大のプラットフォーマーなのです」

 石坂茂IBJ社長は、そう言って自社のビジネスモデルを説明する。

 石坂氏は東京・浅草で1971年に生まれた生粋の江戸っ子だ。祖父は、いわゆる町の不動産屋で、石坂氏は店舗の2階で暮らす日々。それが後に数多くの経営のヒントを生むことになる。インターネットがない時代に、業者が店舗に物件の資料を抱えて訪れ、情報の共有が顧客と物件のマッチングの可能性を高めることを学んだ。

 東京大学経済学部を卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。その後、起業を決意し、2001年にインターネットを使った事業をベースに、不動産業や人材業ではなく、ニッチな結婚マッチングサービスのブライダルネットを起業した。

 事業を開始すると、利用者から「出会えてもお付き合いまでいかない」「お付き合いできても結婚ができない」といった声が寄せられた。利用者の希望を叶えたいと考えた結果、昔から多くの人を結び付ける役割の「仲人」の存在に行き着いた。大阪で1泊2500円のホテルに泊まり、仲人のもとを訪ね歩き、「どんな形で結婚まで世話をしているのか」「やりがいや苦労は何か」といった話を聞いて回る中で、人の手によるサポートの重要さと、同時に、アナログだからこその不便さを知った。そうした中で、06年IBJを設立し、全国の仲人と婚活者をネットワークでつなげる「日本結婚相談所連盟」の事業を始める。

 「婚活」という言葉がまだない時代にサービスを開始したため、その独自性や新規性がなかなか理解されず、幾多の苦労もあった。社会的に意義がある事業サービスだと上場に乗り出した時は、「これまでに事例がない」「男女間のトラブルになるのではないか」「もし結婚しても離婚率が高いのではないか」などとネガティブな要因を列挙され、東京での上場は難航した。

 そんな中、大阪のジャスダックが面白いからやってみるかと受け入れてくれたことで、12年に念願の上場を果たした。その後、14年に東京証券取引所第二部に市場変更、15年に第一部に指定替え、22年4月にはプライム市場へ移行した。5月に発表した22年12月期通期連結業績予想は、売上高が145億5千万円、営業利益は16億5500万円としている。この分野のトップであり、婚活業界のリーディングカンパニーとして業界をけん引していく存在となった。

 今や業界最多の約8万人の登録会員数を誇るIBJ。全国に広がる結婚相談所ネットワークは、22年6月現在で加盟店数3300社超。同社の結婚相談所は、出会いから婚約までを伴走し、結婚までのさまざまなハードルを越えていくところまで二人をサポートする〝徹底成婚主義〟を掲げている。成婚率50・5%を誇るIBJ直営店「IBJメンバーズ」のメソッドを波及させ、その結果21年の成婚組数1万402組につながった。これは日本の年間婚姻組数の約2%に当たる。保有する約8万人のデータベース、AI分析による精度の高いマッチングの実現、相手紹介から交際管理まで仲人が1つのシステムで会員の婚活行動を一元管理するIBJのプラットフォームは、婚活業界のDX化を牽引している。

ネットワークシステムで婚活のDX化を推進

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【IBJ代表】メソッドスクール風景

 「アプリをベースとしたネットワークシステムの開発がカギで、婚活のDX化を推進したことが差別化になっています。ただし、システムを提供するだけではダメで、そこに人の手を加えて成婚につなげられるよう仲人を育成する仕組みが必要です。1組でも多くの結婚を生み出すのが大事と明確に謳い、それをミッションやパーパスにする。こういう理念経営がすごく大切です」

 同社は婚活のDX化に加え、アナログな人海戦術でサポートの質を差別化している。婚活プランニング→お見合いサポート→交際サポートという成婚に導く3つの成婚サポートを行っている。

 加盟店には、開業、運営、集客とそれぞれの分野に応じた研修やメソッドスクールでサポートを実施。加盟店同士で成功事例の共有などを行い成長・発展を目指すコミュニティの「アンバサダークラブ」、加盟店へ婚活情報のトレンドを発信する「IBJ定例会・交流会」を開催している。これらIBJ独自のメソッドの浸透で加盟店ネットワークが強固なものになっているという。

 「少子高齢化の日本だから、この先、結婚市場は縮小するとか、男性の草食化などで、当社の将来は大丈夫かといった声もあります。しかし、当社の売上高は設立以来、増加傾向にあります。日本の合計特殊出生率が21年に1・3になり、政府や自治体は子育て支援を軸にした対応を行っています。ところが、夫婦の最終的な平均出生数を表す完結出生児数は1・94人で、50年前からあまり減っていない。日本では、結婚すれば一定の割合で子どもが誕生しており、成婚を生み出すことで国策となる少子化に寄与できていると考えます」

 22年3月には山梨中央銀行との提携を開始。これで地域金融機関との提携は15例目だ。また、ホテルニューオータニや築地本願寺、テイクアンドギヴ・ニーズなど婚活と親和性の高い事業や組織との連携も進む。

 中期経営計画(21―27年)達成時の業績目標は、売上高300億円、営業利益50億円を掲げる。深刻な日本の人口減少問題に対して、IBJから成婚カップルを生み出すことで、直接的に人口増加に寄与し、27年までに日本の婚姻組数の5%創出を目標に邁進する。