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チャレンジャーとして企業の挑戦を後押しする 愛知県知事 大村秀章

愛知県知事 大村秀章

愛知県は「イノベーションを巻き起こす力強い産業づくり」に向けて、多様な施策を講じている。単なる地域振興に留まらない、日本経済全体の底上げを目的にしたグローバルなイノベーションの創出を後押しする。大村秀章知事に狙いを聞いた。(雑誌『経済界』2022年11月号より)

愛知県知事 大村秀章
愛知県知事 大村秀章
おおむら・ひであき――1960年愛知県生まれ。82年東京大学法学部卒業、同年農林水産省入省。96年に衆議院議員に初当選し、内閣府副大臣や厚生労働副大臣などを歴任。2011年より現職(3期目)。

 愛知県が2030年度までに取り組むべき重点政策の方向性を示した「あいちビジョン2030」。中でも目を引くのは「イノベーションを巻き起こす力強い産業づくり」だ。県はその筆頭施策として、スタートアップとの連携による技術革新を通じた産業競争力の強化を掲げる。

 「愛知県は国内外の優れたスタートアップのイノベーションを支援する拠点として、『STATION Ai(ステーションエーアイ)』の24年10月オープンに向けた整備を進めています。フランスにある世界最大級のスタートアップ支援拠点『STATION F』をモデルとし、世界中の地方自治体に先駆けてアライアンスを結びました。現在は運営事業者に選定したソフトバンクと共に約100社のスタートアップを支援しています。将来は1千社を誘致し、世界に類のないスタートアップコミュニティ形成を目指します」

 大村秀章知事はこう意気込む。念頭にあるのは東京一極集中に象徴される日本経済の停滞打破への願いだ。

 「東京とその他大勢という状態が続くなら日本経済は元気になりません。愛知県が地域の垣根を超えて経済の先導役になれると信じています。デジタル化やカーボンニュートラルの推進といった新技術を国際的に普及させるサポートをします。『STATION Ai』からユニコーンを生み出すのが目標ですね」

 県はスタートアップ支援に加えて、事業者と協力しながら自動運転技術を用いたモビリティサービスや、サービスロボットの導入に向けた実証実験を行っている。自動運転領域では中部国際空港周辺や、愛・地球博記念公園、名古屋市都心で自動運転バスを運行。ロボ領域でも医療や介護、警備、施設運営などさまざまなケースに対応した実験を進める。

 さらに産業競争力底上げのカギとなるのが、今年11月に愛・地球博記念公園内に開園するジブリパークだ。「ジブリは世界中の人々を魅了するキラーコンテンツ。全5エリアの開園後は、来園者の飲食、物販、宿泊費など周辺地域に毎年約480億円もの経済波及効果があると試算しています」と期待を寄せる。また観光需要だけではなく、「STATION Ai」を軸としたスタートアップ育成のプラス効果も見込む。

 「県の存在感が高まれば、有望なスタートアップや高度人材の県内誘致が加速します。海外の成長力を取り込みながら、日本企業がグローバルに打って出る機会を提供していきます。愛知県もチャレンジャーとして企業の挑戦を後押しします」