経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

環境インフラ企業として社会の課題に果敢に取り組む 大昭工業 木村諭意智

大昭工業 木村諭意智

廃棄物の適正処理やリサイクル、排水処理設備の維持管理は、社会基盤を支え、地球環境の未来に直結する。資源循環事業と水環境事業を営み、信頼と実績を積み重ねてきた大昭工業は、社会貢献企業として新たなステージを目指す。木村諭意智代表に変化に挑む意欲を聞いた。(雑誌『経済界』2022年11月号より)

大昭工業 木村諭意智
大昭工業 木村諭意智

「新しいあたりまえ」の具体的施策で変化に挑む

 コロナ禍で、ライフラインを支えるエッセンシャルワーカーの重要性が注目を浴びた。社会インフラと地球環境に直結する事業を展開する大昭工業も多くのエッセンシャルワーカーを抱える企業だ。

 同社は2021年、経営理念「あたりまえを、新しく。」を掲げ、コーポレートアイデンティティを刷新したばかりだ。

 「365日、社会を支え続ける私たちの存在意義と経営資源の可能性を、今一度言語化して社内外に共有したいと考えました」と木村諭意智代表取締役は語る。

 SDGsという言葉が叫ばれるようになって久しいが、廃棄物の適正処理を行い、資源価値を最大化し、持続可能な社会の一端を担う環境インフラ企業でありたいと願う木村代表は、常に具体的施策を持って変化に挑む。

 例えばかつての名古屋市は、廃棄物の許認可業者が一般家庭の廃棄物処理を受託する際に、個別に問い合わせがあった時は対応できるが、一般家庭に広告宣伝を行ったり、事業として告知することは許されていなかった。そのため無認可業者が横行し、高齢者が法外な価格を請求される事件も発生していた。

 そこで、木村代表は自ら立ち上がって行政に問題提起した結果、今年度より一般家庭の廃棄物処理事業を告知することが可能になったのだ。

 「行動に出るのが遅すぎたくらいです。弱者に付け込み、不法投棄を行う違法な業者をこれ以上野放しにはできませんでした」

 木村代表は、業界全体の正常化を促したキーパーソンであるとも言えるだろう。

 また「廃棄物処理はコストではなくリスク管理の一貫です。適正処理が前提でお金を頂いています。廃棄物処理をコストカットの対象にするような危うい企業とは取引はできません」と断言する。

 創業以来、半世紀以上にわたって多くの企業からの信頼を積み重ねてきた実績が、「新しいあたりまえ」を提案する時の説得力と発言力につながっているのだ。

社員が意欲高く働くための「働き方改革」と環境を整備

 大昭工業では、現場に出るドライバーにも名刺を持たせ、業績や単価なども周知させている。これはかつての営業担当者の方針であり、会社全体にメリットがあるということで踏襲していることだ。

 「これにより顧客と直接関わるドライバーのモチベーションが上がります。IT化がどれだけ進んでも、サービス品質を担うのは人です。また、現場でしか分からない情報をスムーズに共有できる風通しの良さが生まれます」

 現場で作業中のドライバーが声をかけられ、新規顧客の獲得につながったケースもあるそう。日頃から意識の高い仕事をしている様子が評価された一例に違いない。

 加えて、意欲を持って働き続けるための「働き方改革」にも取り組んでいる。

 育休・時短勤務制度や介護・ボランティア休暇の整備を進め、ハーフマラソンなどの競技への出場時には手当を支給するなど、余暇活動を推進するユニークな制度も設けた。また、第三者機関による評価制度を活用し、面談の時間も多めに取っている。

 「これは私の経験則ですが、問題のある社員は家庭にも問題を抱えていることが多いものです。当社は道路交通安全マネジメントシステムISO39001を取得していることもあって、車を運転するドライバーのメンタルケアは極めて重要なファクターです。ウェットになりすぎないように声がけするよう努めています」

 木村代表が出社するのは午前5時。早朝に出発する現場チームを社長自らが送り出す姿は、従業員にとって頼もしいものだ。

M&Aも視野に入れた攻めの姿勢で新たな展開を

 現在は長引くコロナ禍で落ち込んだ業績が回復しつつあるという大昭工業。

 名古屋エリアでは、水処理と固形処理の両方ができる会社が同社以外には少ないことと、中間処理施設「飛島グリーンキャンパス」にて事業系の産業廃棄物を次世代エネルギー・RPF燃料へとリサイクルし、低炭素社会へ貢献しているのが大きな強みだ。

 「地域のファーストコールカンパニーとなるべく、規模を拡大していきたい。今後は岐阜エリアにも新たな中間処理の拠点を築く予定です」

 さらに、管工事部門の拡大も狙う。 「技術スタッフの高齢化が進みつつあり、技術の継承が急務です。ハード面は揃っているので、M&Aも視野に入れてリサーチ中です」と木村代表は意欲を見せる。

 信頼と実績を基盤に、新しい取り組みに果敢に挑戦していく同社は、業界を常にリードする存在となるに違いない。 

会社概要
設  立 1965年6月
資 本 金 7,000万円
売 上 高 7億9,000万円
本  社 愛知県名古屋市西区
従業員数 50人
事業内容 資源循環、水環境
https://daisyokogyo.co.jp/