社員食堂、病院、介護施設、保育園、スポーツ施設などに食事を提供するコントラクトフードサービス事業を展開している。北海道から沖縄まで2700カ所以上の施設で、現地調理にこだわったオーダーメード型の食事を提供する。また、メニュー開発などにも取り組み、「働きたい・取引したい会社ナンバーワン」を目指している。文=榎本正義(雑誌『経済界』2022年11月号より)
後発ながら幅広い分野にバランスよく食事を提供
「学校や病院、社員食堂などでの給食は皆さんご存じですが、では給食事業会社はどんなところかというと、恐らく関わっている人しか知らないと思います。当社はその中で大手の一角に位置していますが、1983年に北海道で誕生したメディカルサポートが前身で、現在の社名に変更したのは2011年4月です。業界の中では若干後発ですし、首都圏に進出したのは1995年で、全国展開したのも、ここ20年くらいのことです。そのため知名度はまだまだだと思っています」というのは、LEOC社長の森井秀和氏だ。
業界最大手は日清医療食品で、病院、医療施設、介護施設などへの食事サービスが中心。2位のエームサービスは社員食堂、病院、学生寮などへの提供が中心となっている。LEOCは、オフィス・工場の社員食堂、学校、スポーツ施設などのB&I(ビジネス&インダストリー)分野と、病院や障がい者施設などのHC(ヘルスケア)分野、そして老人ホームなどのシニア分野で、バランス良く食事サービスを提供しているところが特長となっている。
LEOCは、食・人財・健康・エンターテイメントの4事業を柱にグローバル展開するONODERA GROUPの一員で、コントラクトフードサービス事業を受け持つ。ONODERA GROUPは、銀座を拠点に鮨・鉄板焼・天ぷら・薪焼の「銀座おのでら」ブランドを展開するONODERAフードサービスによるフードサービス事業、東南アジアでの介護人財教育・紹介を行うONODERA USER RUNなどのヒューマンリソース事業、健やかな暮らしを創造するONODERAヘルスケアサービスなどのヘルスケア事業、Jリーグの横浜FCを運営するスポーツ・エンターテイメント事業と幅広い活動を行っている。グループの連結売上高は1030億円(22年3月決算)で、LEOC単体では958億円(同)とグループの中枢を担っている。
「給食業界は、働き方の変化に呼応するかのように職場環境が変化している半面、生産性を上げながらローコストで運営しますが、人に頼る労働集約型産業であることは昔も今も変わりません。食事を提供する専門職(管理栄養士、栄養士、調理師)や、当社でサプラーと呼ぶパート社員、取引先関係者などがいなければ私たちの仕事は成り立ちません。労働力人口が減少している中で、今後も成長していくためには、海外人財の活躍は非常に大切だと思っています」と森井氏は強調する。
その方策としてLEOCは、グループ内のONODERA USER RUN(OUR)から5年間(22~26年)毎年1千人ずつの特定技能外食人財を紹介してもらう契約を締結している。OURは、ミャンマー、カンボジア、フィリピン、ベトナム、インドネシアの東南アジア5カ国における特定技能に特化した日本国内への人財紹介事業を展開しており、22年8月現在、学生数は2900人を超えている。
介護・外食・農業など14分野を対象に、在留期間が実質無制限の新在留資格である特定技能。深刻な人材難を抱える各業界にあって、アフターコロナの需要回復に伴う人手不足に対処するため、OURは介護分野に続いて特定技能外食人財の紹介を本格化させることになった。海外人財の豊富な受け入れ実績を持つLEOCの人の強みを一層強化し、給食・特定技能人材紹介の両面で、顧客の多様なニーズに応える体制を整えていくという。
海外人財の活用で今後の成長を加速へ
「OURが現地で行う教育は、基本的に無料です。日本で働きたいというアジアの若者たちと、人財不足に悩む事業者の想いをつなぎ、国際貢献の一翼を担う取り組みです」
森井氏は当初、調理師として北海道のホテルに勤めていた。将来はホテルの厨房の料理長か、独立して自分の店を出そうか、などと考えていた。だが、祖母が入院した病院の食事があまり食べられず、病院食が食べられないなら孫である自分が作ったところ、一生懸命に食べてくれたという。その後、たまたま病院で栄養士が食事を作っていることを知り、祖母との経験もあって、26歳から短大へ通い、栄養士資格を取得した。
短大に入学し、ある時、給食委託会社の講演があることを知り、受講したのがソデックジャパン、後のLEOCとの最初の出会いだった。
28歳で入社したものの、同期は8歳下で、「年齢的な焦りがあったのは事実」という。とはいえ、北海道エリアの病院など厨房業務全般を担当し、首都圏担当として神奈川県に異動となる。その後、20年2月に45歳で取締役専務執行役員フードサービス事業カンパニー長、同年10月には46歳で代表取締役副社長COOに就任と、出世の階段を駆け上がり、21年11月、社長に就任した。
「喫緊の課題は、食材×人財に加え、現地調理へのこだわりと、専門分野の技術が集結したメニュー開発などプラスアルファのエッセンスを取り入れ、無限の可能性を秘めたおいしい食事をつくる会社だと全国の皆さんに対して魅力を伝えることです。そのためにはパートナーの皆さんと一緒に取り組む施策を全国の各エリアで打ち出して認知度を上げ、社内研修制度やキャリアプランの構築、多様性や女性活躍なども柔軟に取り入れます。今までは、新規展開する地域で十分な人財の採用が見込めない場合は、進出を見送っていました。しかし、海外人財を活用することで、この問題は解消できます。まずOURが進出し、ONODERA GROUPの認知度を向上させた後に当社が進出すれば、仕事もスムーズに進められる。非常にいい形ができてきたと思っています」
その先には「働きたい・取引したい会社ナンバーワン」という大きなビジョンが輝いている。