経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

時代に合わせて進化を続けるリユース業界をリードする新勢力 LUCE 播磨克彦

播磨克彦 LUCE

古物オークション業者として、オークション会場とアプリが連動するサービスで同業他社を圧倒するLUCE(ルーチェ)。18店舗まで拡大した店舗網を1店舗に縮小した経営者としての決断とは。そして、新たにスタートした「社長募集プロジェクト」や、NFT関連の新事業へかける想いについて播磨克彦社長に聞いた。文=大橋高広(雑誌『経済界』2022年11月号より)

播磨克彦 LUCE
播磨克彦 LUCE社長
はりま・かつひこ 1999年創業。2004年有限会社LUCE設立。07年株式会社LUCEに商号変更。日本流通勉強会を運営。買い取り業界を盛り上げていくため、鑑定士の養成にも尽力している。

起業のきっかけは学生時代に経験したヤフーオークション

 今年で創業から23年目を迎えるLUCEは、バッグ・時計・宝石から骨董品や家具家電までを取り扱う古物オークションの開催や買い取り業、セミナー・スクール事業などを手掛けている。

 「現在の事業を始めるきっかけになったのは、学生時代に姉がパリ旅行の際、友人から『ルイ・ヴィトンのバッグを買ってきて』と頼まれたことでした。パリで目当てのバッグを購入して帰国したのですが、姉の友人は既にそのバッグを購入済みだったので、どうしたものかと考えた結果、当時始まったばかりのヤフーオークションに出品しました。すると、日本での定価10万円のバッグが12万円で売れたのです。これを機に、中古品の販売や買い取り業界へ興味を持ち始めました」と播磨克彦社長は語る。

 学校を卒業し、就職せずにすぐ起業したものの、若かったので周りからは「どうせ失敗する」「若い奴がブランド品を売っても、どうせコピー品と思われる」とよく冷やかされたという。

 「確かに、当時買い付けに行っていたヨーロッパでは買い取りに関する規制がどんどん厳しくなり、またフランからユーロへ切り替わった時には1ユーロが170円という円安になったこともあり、大変な時期もありました。買い付けから買い取りに切り替えたのもその時期です」

 大阪・中津のビルの一角に内装などを手作りした小さな店舗を構えて徐々に売り上げを伸ばし、北新地に店舗を移転してからは右肩上がりで事業が拡大。計18店舗を展開するまでになった。しかし、加速する規模の拡大についていかなかったのが「人の成長」だった。

 「現金を直接扱う仕事なので、不正を行う従業員が多くなってきました。一回の金額は小さくても、それが積もれば大きな損失になります」

 また、当時は急速に拡大するインバウンドの爆買いブームに乗って売り上げは順調に伸びていたが、その爆買いバブルが終わった後はBtoCの商売だけでは成り立たないのではないかと考え始めた。

 「さまざまな角度から次の一手を考えた結果、店舗数を縮小していくことを決め、コスト高の店舗から閉店していきました。今ではスクール事業に使用する1店舗のみ営業しています。そして、店舗数を絞る代わりに新しく参入したのが古物オークションです。オークションといえば、会場に人が集まったり、楽天やヤフーなどネットを通して売買したりするイメージがあると思います。しかし、当社はオークション会場には15社まで、自社で開発したオークションアプリには70~90社ほど毎回参加いただいています。業界ではデジタルとアナログの両方を採用しているケースはなく、競合他社との大きな差別化要因になっています」

 このオークションは、大阪と東京の会場をメインに合計月8回実施している。開催回数が多いことで、オークション参加者にとって換金スピードが早くなることも同社の強みになっている。1回のオークションで取り扱う商品数は最大1500点に及び、出品される商品の中には最新のアイテムも豊富に揃っているという。

社長募集プロジェクトを開始支援をして給料まで出す狙い

LUCE

 もう一つ、他社との大きな違いが若手の育成に力を入れている点だ。現在、同社では「7daysセミナー」というスクールを開催している。これは「素人でも1週間でプロになれる」をコンセプトとした鑑定士養成スクールで、主に商品の真贋や相場の勉強をするものだ。7日目にはオークション会場での実技試験があり、卒業生には鑑定士の資格が与えられる。

 「今年8月からは、買い取り業界で独立したいけど資金がないという方を当社が出資して応援する『社長募集プロジェクト』も始まりました。期間は半年ですが、この間は当社からは月25万円を給与として支給します。もちろん当社も本気ですので、真剣にこの業界で社長を目指す方を選考します。ただ、プロジェクト終了後も当社との業務提携は継続しますので、この業界で独立したい方にとっては非常に参入しやすい内容になっています。そして、完全に独立して営業したいと考える方は、当社が保有する株式を買い取っていただくことも可能です」

 このように若手を育成することにより、同社にとってもオークションで取り扱う商品が増える、オークションの回数を増やせるといったメリットが発生する。

 「やはり、お金やモノが活発に動くところに人が集まりますから、人材育成はとても重要だと考えています。そして私自身のこだわりは、『進化を続けること』です。私が商売を始めた23年前に勢いがあった会社は、ほとんどが廃業しています。しかし、例えばある競合他社は、バッグや時計・宝石に限定せず『なんでも買い取り』という新しいジャンルを切り開いて、多店舗展開でも成功しています。『ヨーロッパでの買い付けの規制強化&ユーロの円安』『インバウンドの爆買いバブルの崩壊』などが、私の経営者としてのターニングポイントでしたが、逆風に屈することなく進化し続けることが大事だと思っています。そして、進化するためには、行き詰まった時に変化する勇気を持つことが重要です。取り組んできたことにこだわりたい気持ちは分かりますが、辞める決断ができずにいつまでも固執してしまうことは衰退の要因だと思っています」

 業界の今後については、高齢化の進行にともなって遺品整理などのニーズが増えてくると予想している。このような場合でも、特定の1社にのみに販売するのではなく、同社が開催するオークションのように100社以上が競り合う環境であれば、顧客の大事な品物に適正な価格をつけることができる。そのため、クライアントには相続の相談に乗る事が多い弁護士や税理士など士業も多いという。

 「今後は、NFTにも力を入れていきます。『鑑定書』というモノがなくても二次流通の証明ができるように、ブランド品・貴金属・時計など、あらゆる商品の流通を可視化できるような、これまでにない仕組みをリリースする予定ですので、楽しみにお待ちください」