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日本を変える「政治の力」を国民の皆さんに見てほしい 小泉進次郎

小泉進次郎

ゲストは、衆議院議員の小泉進次郎さん。2009年の初当選以降、環境大臣などを経て、現在は自民党国会対策委員会副委員長を務めます。元総理大臣の父・純一郎氏の愛情に育まれ、政治の世界で生きることを決意した進次郎さんの家族エピソードと横顔に迫ります。聞き手・似顔絵=佐藤有美 構成=大澤義幸 photo=市川文雄(雑誌『経済界』2022年12月号より)

小泉進次郎氏のプロフィール

小泉進次郎
小泉進次郎 衆議院議員
こいずみ・しんじろう 1981年神奈川県横須賀市生まれ。関東学院大学経済学部卒業後、2006年米国コロンビア大学院政治学部修士号取得。小泉純一郎氏秘書を務めた後、09年衆議院議員初当選。19年より環境大臣を2期務める。現在5期目。

父・純一郎氏の愛に育まれ政治の世界へ進むことを決意

佐藤有美 小泉進次郎
佐藤有美 小泉進次郎

佐藤 進次郎さんが衆議院議員に初当選されたのが2009年。お父さまで元総理の純一郎さんの秘書としてのスタートでした。政治家になろうと決意したのはいつ頃ですか。

小泉 大学生の時です。子どもの頃は父親が政治家としてどんな政策に取り組んでいるのかも知りませんでした。ただ私が幸せだったのは、政治家の、ではなく、父親としての小泉純一郎から愛情を注いでもらえたことです。政治家の父はドライで冷徹という世間のイメージがありますが、実際は仕事で疲れていてもキャッチボールのためだけに東京から横須賀の家に帰ってくる優しさがありました。お陰で私は政治の世界に悪い印象を持つこともなく、自ら政治家になりたいと思ったんです。

佐藤 お兄さまの孝太郎さんは芸能界の道に進まれました。

小泉 そうですね。兄は政治家になると思っていて、私は兄の秘書になるつもりでした。これも私が政治の道へと考えたきっかけの一つです。

佐藤 当選後、お父さまの秘書としてどう働かれたのですか。

小泉 既に父は総理を退任しており、私は地元回りから始めました。父は放任主義で、自分の事務所のスタッフを私の世話役として残すこともなく、「おまえはおまえだ」と言われて、私の事務所は同世代中心のメンバーでスタートしました。

佐藤 企業の事業承継もそうですが、古い番頭からうるさく言われるよりも、任されて苦労した方が責任感も芽生えますよね。お父さまから政治の基本など学ばれましたか。

小泉 政治については何も言いません。一方、一般常識や上下関係、立ち居振る舞いは父から学びました。例えば、役者が舞台の端で緊張感なく立っているのと、見られていると意識して立っているのとでは見え方が違うとか。

佐藤 人間教育ですね。

小泉 はい。そんな父も、孫が生まれた時の喜びようは想像以上で、一人のおじいちゃんでした。父の「いないいないばー」を見て、これを私が赤ん坊の頃にもやっていたのかと微笑ましくなりました。

佐藤 その姿を見てみたいです(笑)。奥さまの滝川クリステルさんとは、家事や子育てを分担されますか。

小泉 お互い子ども最優先で行動しています。私も大臣の時に育休を取り、他にも皿洗い、息子のお風呂、公園に行くなどできることをやっています。夫婦で明確な役割分担は決めず、できる方がやる感じですね。

戦うことも政治家の仕事後世に負債を残さないために

佐藤 政治家になって13年、これまでを振り返っていかがですか。

小泉 まずキャリアのスタートが野党だったのは良かったですね。当時は自民党批判も多く、与野党の立場の違いを知ることができました。11年には東日本大震災が起き、日本が崩壊するのではないかという恐怖感を抱きながら、政治家として何ができるかを考えて仕事をした経験も大きかったです。

佐藤 13年に内閣府大臣政務官兼 復興大臣政務官となり、被災地を回られましたよね。

小泉 福島は子どもの頃から家族旅行などで訪れるなじみの深い土地で、愛犬アリスも浪江町に取り残されていた保護犬です。復興が進む今も被災者の皆さんとの関係は継続しています。ただ、危機は変革のチャンスなのに、東日本大震災をきっかけに思ったほど日本は変わらなかったという思いもあります。

佐藤 政治主導で、と言っても、変革は難しいものですしね。

小泉 政界でも変革を望む人は少数派です。例えば規制改革は政治家や霞が関の各部署から嫌われるため、政治家も官僚もやりたがる人は少ない。では社会が変わる時に政治がどんな役割を果たせるか。積み残してきた宿題をいかに解決していくか。変革には運もタイミングも必要です。政治家として後世に後悔のない選択肢を選ぶことが大事です。

佐藤 小泉さんは環境大臣としても、50年のカーボンニュートラル実現に向けて、また再生エネルギー最優先の位置付け、35年以降の新車販売の100%電動化など、後世に負債を残さないための取り組みに尽力されてきました。

小泉 ありがとうございます。批判や反対もありましたが、政治家としてやりがいを感じる仕事でした。菅元総理の改革意欲と実行力があったからできたことです。皆が円満に収まるのであれば、政治家は必要ありません。その時は反対されても、後に「あれは正しかった」と言われる仕事をしたいですね。

佐藤 若手や後輩議員にご自身の経験を伝える機会はありますか。

小泉 期数の若い議員の力になりたい気持ちは強いですね。私も先輩議員から多くを学んできて、私自身の大臣経験から語れることもありますし。若手に対しては、勉強会や視察などに声をかけてノウハウも喜んで共有していきたいです。野球に例えれば、ネクストバッターズサークルやベンチから見る世界と、バッターボックスに立った人間が見る世界が違うのと同じです。

佐藤 進次郎さんの政治家としてのこれからの夢は。

小泉 日本の将来は大丈夫だという希望をもたらす、「日本は変わる」という気概が伝わる政治の力を、国民の皆さんに見てほしいですね。政治にしかできないことが必ずありますから。

小泉進次郎 衆議院議員 イラスト
小泉進次郎 衆議院議員 イラスト