経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

信義誠実に則って実習生の幸せと企業の繁栄を約束 World Link 福山 香

福山香 ワールドリンク

外国人の技能実習生を受け入れて教育し、責任を持って企業へ送り出すことを使命とするWorld Link技能交流事業協同組合(ワールドリンク)。クライアントからの高い満足度を実現し、社外はもちろん、社員へ対しても信義誠実を体現し続ける代表の信念とは。事業にかける想いを同組合の福山香代表理事に聞いた。文=大橋高広(雑誌『経済界』2022年12月号より)

福山香 ワールドリンク
World Link 技能交流事業協同組合
福山 香 World Link 技能交流事業協同組合代表理事
1964年、兵庫県生まれ。武庫川女子大学国文学部卒業後、大手学習塾の講師を経て、98年リサイクル会社設立。2004年、派遣紹介会社設立。14年、事業協同組合設立。

経営理念どおりの経営を自慢はきめ細かなサポート

 今年で創業から9年目を迎えるワールドリンクは、ベトナムやインドネシア、ミャンマーといった発展途上国からの外国人技能実習生の受け入れと自社研修の実施、日本国内の企業へ実習生の送り出しを行っている監理団体だ。技能実習生と企業、現地の送り出し機関の橋渡し役を担っている。

 「両親がそれぞれ会社経営者という家に育ち、弟もリユース業・エコリングの創業者であり、私自身も貴金属の卸や人材派遣、エステサロンといったさまざまな事業を手掛けてきました。そんな中、たまたまテレビで『このままだと日本人の労働人口は減っていく』という情報番組を目にし、日本の未来に対して危機感を持ったことがこの事業を始めるきっかけとなりました」と福山香代表理事は語る。

 その後、外国人技能実習制度の存在を知ったことで実習生の招致を始めたが、当時は身近な人が誰もこの制度について知らなかったため、県の認可を得るために福山氏が1人ですべて手続きを行い、2年がかりで技能実習生を受け入れることができる協同組合を設立した。

 「技能実習生を受け入れる監理団体はたくさんありますが、弊組合は『信義誠実に則り実習生の幸せと企業の繁栄を約束する』という企業理念どおりの真っ当な組合でありたいと考えています。企業へは必ず信頼できる人材を送り出し、その後も企業と実習生の双方を最後まで手厚くサポートしています。また、すべての事柄においてどちらに偏ることもなく中立の立場で判断をし、企業と実習生の公平な関係の構築を目指しています」

 外国人技能実習制度で大きな問題となっているのが、実習生の途中帰国や失踪だ。現地の送り出し機関や国内の受け入れ先企業におけるトラブルがその一因となっているが、同組合では受け入れた実習生の途中帰国や失踪を未然に防ぐ努力を惜しまない。昨年は兵庫県の優秀な協同組合として表彰も受けた。

 「弊組合の職員は、実習生一人一人へのきめ細やかなサポートを徹底しています。実習生には来日後の1カ月間、弊組合の研修センターで研修を受講し、寮で寝泊まりしてもらいます。その間、実習生と職員は非常に密にコミュニケーションをとるため強い信頼関係が築かれ、企業へ送り出した後も何か悩みごとや問題が発生した時には、必ず職員に相談してくれます。もちろん、途中帰国や逃亡がありませんので、企業からも感謝されます。万が一、企業への改善や指導が必要な場合はきちんと伝え、実習生に問題がある時は本人にしっかり指導をします。このように、中立の立場を守り企業と実習生の公平な関係を築くことも、企業と実習生の双方からの信頼を得ている要因になっていると思います」

 実際に、営業活動による新規開拓を実施する監理団体が多い中、同組合は顧客のほとんどが紹介によるもので、営業活動をしたことは一度もないという。

社内への信義誠実で叶う、健全経営と企業への貢献

ワールドリンク
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 真っ当に運営すればするほど利益が出にくい。代表の福山氏の報酬は、なんと0円だ。

 「やりがいがあるので、無給でもかまわないんです。例えば、研修の最終日にはみんなでハグをして泣きながら実習生を送り出す時もありますが、そんな時『これからもこの仕事に誇りを持ってやっていきたい』とあらためて社員一同決意を固めるんですよ」

 そして、社員が仕事に誇りを持つためにも早朝も夜中もなく働くのが当たり前という業界では職員が続かない。監理団体そのものがブラックではいけないという福山氏の強い想いがあり、社内ではさまざまな改革を行っている。

 「まず着手したのが、年間休日140日です。この日数は一般企業の平均より約30日多いです。また、労働時間を増やさずに実習生の寮訪問へ行ける工夫もしています。やはり積み重ねた経験がモノを言う仕事なので、社員が長く勤められる環境をつくりたいと思いますし、社員同士で悩みや楽しさをたくさん共有してみんなで仕事に邁進していきたいという想いがあります。キツい業界だから仕方ない、ではなくいかにブラックな部分を改善していくかが重要だと思います」

 このような社内環境は、企業・送り出し機関・監理団体という3者の良好な関係構築にも貢献している。

 「社員が自分たちの仕事に誇りを持って取り組んでいると、実習生の失踪の一因となる不健全な送り出し機関を寄せ付けなくなり、健全な送り出し機関とのご縁が広がります。それが企業へ間違いのない人材を送り出すことにつながり、結果として実習生の途中帰国や失踪を防ぐことができます。まずは監理団体が健全であることが、3者間の健全で良好な関係構築につながるんですね」

 企業が実習生の受け入れを初めて検討する場合、システムが分からず組合に勧められるまま実習生を送られることがある。しかし、いったん受け入れれば3年間は勤めてもらうのが日本の規則であるため、制度を利用する際は良い監理団体を見極め選ぶ必要があるだろう。

 福山代表は現在、グループ3社で計16億円の売り上げと50人の社員を有している。これまで銀行からの借り入れをしたことはなく、生み出した利益を使ってグループを大きくしてきた。今後も無借金経営は続けていきたいということだが、企業と実習生にとって満足度の高い経営も継続していきたいという強い想いがある。

 「今後は『ワールドリンクなら間違いない』『技能実習を受け入れるならワールドリンク』と思っていただける監理団体に成長させていきたいと思っています。日本に憧れをもって来日している実習生をもっと大事にできる工夫があると思いますし、技能実習制度をより良い制度に高めていきたいですね。そのためにも自分自身は『本当に人や世の中のためになっているのか? 自分の欲ではないのか?』を常に考えながら運営に携わっていきたいと思っています。企業においても、今後ますます需要が増える技能実習制度を活用するにあたり、安心して選んでいただけるように尽力してまいります」