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経営環境の変化に対応した伴走型支援で地域経済の活性化を 福岡商工会議所 谷川浩道

福岡商工会議所 谷川浩道

この3年間、コロナ対策に重点を置いてきた福岡商工会議所。コスト高に見舞われる企業への対策も加わり、2023年にはデジタル化支援もさらに強化する。いずれにおいても徹底しているのが「伴走型支援」だ。(雑誌『経済界』2023年1月号より)

福岡商工会議所 谷川浩道
福岡商工会議所 会頭 谷川浩道
たにがわ・ひろみち――1953年福岡県福岡市生まれ。東京大学法学部卒業。76年大蔵省(現財務省)入省。大臣官房審議官など歴任。2011年西日本シティ銀行顧問。14年頭取就任。16年西日本フィナンシャルホールディングス社長就任。21年西日本シティ銀行会長および西日本フィナンシャルホールディングス副会長就任。同年福岡商工会議所会頭就任。

コロナ対策に職員一丸で対応。適正取引価格宣言の周知も

 全国に515ある商工会議所の中で6番目に設立された福岡商工会議所。この3年間は新型コロナ対策に重点を置いてきた。

 特にコロナ禍の影響を受けた企業の経営支援に関連した補助金関係では、谷川浩道会頭が「職員一丸となって対応してきた」という努力の結果、2021年に始まった事業再構築補助金では、第1回公募時から現在まで、福岡商工会議所が申請件数に対する採択件数で常に上位にランクされているという。

 22年になると、経営課題に円安と原材料上昇への対応が加わった。業種によって恩恵を受ける企業と悪影響を受ける企業とで二極化するK字回復が起きているが、原材料上昇においては同会議所が実施した調査でコストが増えている企業が発注側・受注側ともに約9割に及んでいることが分かった。「福岡の地場企業の多くで15%程度コストが上がったようだ」と語る谷川会頭。「最近では、消費者物価も上昇傾向にあるが、前

年同月比約9%の上昇が続く企業物価指数に比べると伸びは小さいままだ。この差は、企業がコスト上昇を取引価格に転嫁できていない現れだ」。

 そこで同会議所では、企業代表者が取引先と適正な取引価格の実現も含めた共存共栄関係を宣言する「パートナーシップ構築宣言」の周知を進めている。22年9月初頭で福岡県下で宣言をした企業は471社。このうち196社が福岡商工会議所管内の企業だ。

 こうした中、コスト高の影響を受けている小売業や飲食・サービス業を支援しようと、福岡市内の登録店舗で使えるプレミアム付電子商品券「FUKUOKA NEXT Pay(通称・ネクスペイ)」を発行している。22年秋までに3回に分けて総額150億円分を販売。利用可能店舗も約6500店舗に広がり、消費喚起に一役買っている。

博多どんたく_パレード様子①
博多どんたく パレード様子

 また、22年の取り組みの中で大きな決断だったものに3年ぶりとなった「博多どんたく港まつり」の開催がある。例年5月3、4日に行われ、ゴールデンウイークの人出日本一でも知られるが、コロナ禍の2年間は中止を余儀なくされた。主催団体の代表も務める谷川会頭は「活動自粛ムードが依然として広がっていた中、経済はもちろん、社会・文化活動が停滞することも避けたかった。何より福岡の人は祭りが大好きだ。なんとしても開催したかった」と振り返る。開催の可否判断の期限が迫る2月半ばに「祭りがなければ博多ではない」という強い想いで開催を決意。メーンとなるパレードは縮小し、参加者にはマスクの常時着用を呼び掛けるなどの対策を講じた。人出は例年の3分の1だったが、それでも2日間で80万人が訪れ、「多くの人から歓迎と感謝の声を頂いた」と谷川会頭は笑みを見せる。経済効果も249億円あったという。

23年はデジタル化支援に重点会員数2万社を目指す

 23年も引き続きさまざまな方面から会員企業の経営を支援していく。中でも谷川会頭が重要視するのがデジタル化支援だ。「コロナ禍で中小企業のデジタル化の遅れが顕在化した。23年はインボイス制度も始まるため、ますます必要性が高まる」とし、デジタル化に関するセミナーを積極的に開催するほか、具体的にツールの導入もサポートしていく。谷川会頭は「重要なのは継続的なアフターフォローで、電話を1本でも掛けて、その後の状況をヒアリングする。これが大事だ」と強調する。

 アフターフォローの徹底は、デジタル化支援をはじめとした会員企業の経営支援全般に及ぶ。「会員さんと会議所がしっかりつながっていることを示すことにもなる」という。その考えの源になっているのが谷川会頭が最も重点に掲げる「伴走型支援」で、会員に寄り添いながら成長を促そうというものだ。

 「『会議所は仲間なんだ』と思ってもらえるように、心のこもった支援を使命感を持って続けていく」と谷川会頭。目下、会員数も増加中で、22年9月末で1万9454社。全国の商工会議所の中で名古屋を抜いて東京、大阪、札幌に次ぐ4位の規模になった。これからも続く「伴走型支援」の下、会員数2万社が目前に迫っている。