経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

企業と自治体の「想い」に寄り添い課題解決と新たな価値を生み出す レッドホースコーポレーション 宮本隆温

レッドホースコーポレーション 宮本隆温

レッドホースコーポレーション 宮本隆温
宮本隆温 レッドホースコーポレーション代表執行役
みやもと・たかはる 1962年京都府生まれ。85年同志社大学経済学部卒業後、東洋電波(現ヌヴォトンテクノロジージャパン)入社。87年トラベラー(現レッドホースコーポレーション)入社。2012年12月代表取締役社長執行役に就任し、22年4月代表執行役グループCOO就任。

(雑誌『経済界』2023年2月号より)

ふるさと納税支援事業で全国250自治体と契約

レッドホースコーポレーション 宮本隆温 室蘭市表敬訪問
レッドホースコーポレーション 宮本隆温 室蘭市表敬訪問

 ふるさと納税とは、応援したい自治体に寄付をすると、税金の一定額が還付・控除され、さらに寄付先の地域の名産品などの返礼品がもらえる制度のこと。年収や家族構成などによって控除される金額は変わるが、実質負担2千円でこれらメリットが得られるとあって、ふるさと納税市場は急速に拡大している。総務省が発表した2021年度(21年4月~22年3月)のふるさと納税の実績は8302億円で、前年同期比23・4%増。ふるさと納税を実際に行い控除適用が行われた人の数は21年には740万人となった。

 ただし、ふるさと納税の市場規模の推移から「潜在寄付控除額」が見えてくる。19年には4875億円のふるさと納税が行われたが、ふるさと納税を、住民税を納めているすべての人が行った場合の総額は2兆6270億円であり、差額の2兆1395億円がこの潜在寄付控除額ということになる(以上データは日本ネット経済新聞調べ)。

 「ふるさと納税ができる人は納税対象者ですが、全体の10%くらいしか行っておらず、残りの方はこの制度を知らないか、知っていても実際に行っていません。潜在市場は大きい。国の政策でもITリテラシー、金融リテラシーを上げましょうと旗振りをしており、ふるさと納税はこの流れに合致しています」とレッドホースコーポレーションの宮本隆温・代表執行役グループCOOは言う。

 ふるさと納税はその年の12月末までに行わなければならず、全体の4割が12月に集中するとのことなので、まさに今、多忙を極めている。

 同社は14年6月に自治体・事業者の後方支援業務としてふるさと納税支援事業へ参入して以来、受託件数を順調に伸ばし、現在全国約250自治体が契約している。その中で自治体及び地方の事業者、生活者のさまざまな課題に直面し、双方の強みを持ち寄り、地方を創生し、地域を活性化する包括的な連携が必要と宮本氏は思い至った。このため同社では、既存ビジネスに、さらなる価値と加速力を与える「ビジネスソリューション」と、独創的な事業創出と市場開拓に挑む「デジタルマーケティング」という2つの軸で事業を展開している。21年12月期売上高は241億円となっている。

 こんなレッドホースだが、宮本氏の社長就任当時は「トラベラー」として全く別の事業が主力だった。

 「日本人が海外旅行に行き始め、親せきや知人、職場や近所に大量のお土産を配る習慣があった時代に、旅行会社を通じて自宅に旅行先のお土産を直接届ける『お土産宅配事業』を行っていました。全盛期には200億円を超えるビジネスになっていました。しかし、海外旅行が手軽になり、海外のお土産も珍しくなくなり、業績は右肩下がりになっていきました。そんな中で08年から制度として始まっていたふるさと納税に商機があるのではと考えました。幸いお土産宅配事業に携わっていた200人の営業マンの中からエース級20人を選抜し、社運をかけて本格的に取り組む体制を作りました」

「お土産宅配事業」で培った地方の〝足回り〟を生かす

レッドホースコーポレーション両国物流 宮本隆温
レッドホースコーポレーション両国物流

 もともと営業マンは全国の旅行代理店向けに営業していたので、事業所も営業マンも社用車も各地方にあり、一気に攻め込んだ。その結果、ふるさと納税支援事業は主力事業へと成長し、現在のレッドホースはふるさと納税のバックヤードの受託だけでなく、多岐に渡る切り口でのサービス展開を行っている。

 具体的には、全国各地のふるさと納税業務を包括的にサポートする「まるっとおまかせサポート」、ふるさと納税返礼品情報・在庫情報・寄付情報を一元管理し、複数サイトに自動反映して商品登録や更新の手間と時間を簡略化する「Furusato360」、市場を通さず農産物の生産者と購入者をダイレクトに繋ぎ、ベストマッチングを支援するウェブマーケット「産直アウル」、ゲーム体験を通じて子どもたちがITツールやプログラミングなどへの興味を喚起するための日本最大級のゲーム/eスポーツ施設「REDEE」、法人向けギフト事業を行っている。

 グループ・関連会社に、北海道で開設している工事関係者向け宿泊施設ワークマンハウス、音楽・旅・宿というコンセプトから生まれた函館で展開するゲストハウスTUNE、カメラや写真好きな旅人のための札幌市で展開するゲストハウスtoruneを運営する「レッドホーストラスト」、在日インフルエンサーと提携し約1700万のフォロワー数を生かしたSNS、広告などのPR支援により、自治体や企業の訪日インバウンド集客を支援する「Tokyo Creative」も展開する。

 「ふるさと納税支援事業は、全国の自治体数に限りがあるため、今後も見据えると次なる核となる事業への取り組みが急務です。ただし、ふるさと納税支援事業はまだまだ改善によって拡大余地は十分にあります。自治体のニーズと納税者の顕在化していない不満解消に向けて、当社のリソースをフル活用し、そのための投資も惜しみません。同時に、ふるさと納税以外の自治体の課題解決に取り組むことで、範囲を広げた地方創生にシフトしていきます。今後も企業や自治体の想いに寄り添い、当社でしか作りえない新たな価値を生み出し、提供し続けていきます」

 宮本氏は、課題解決のひとつとして重要になるのが物流と考えている。21年10月、本社をそれまでの東京・豊洲から両国に移転した。新社屋は、新たな働き方に対応した本社機能と最先端の物流機能(ロボット化、AI化)を有したハイブリッド型で、キッチンなども配置し、社内外及び地域との情報収集・発信、交流の場としての活用も視野に入れ、22年4月にグランドオープンした。「チャレンジ」が信条の宮本氏の取り組みは、まだ始まったばかりだ。