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「ONE関西」として成果を積み上げ明るい未来を切り拓く 関西経済連合会 松本正義

関西経済連合会 会長 松本正義

関西経済連合会では2025年に開催される大阪・関西万博やその先の関西経済の発展を見据え、イノベーション創出やビジネス環境の整備に向けた活動に幅広く取り組んでいる。関西が一体となって、関西から日本経済の活力を生み出していく。(雑誌『経済界』「関西経済! 次の一手!特集」2023年3月号より)

松本正義・関西経済連合会会長のプロフィール

関西経済連合会 会長 松本正義
関西経済連合会 会長 松本正義
まつもと・まさよし──1944年兵庫県生まれ。67年一橋大学卒業後、住友電気工業入社。シカゴやロンドンでの海外勤務を経て97年取締役就任。99年常務、2003年専務を経て04年社長、17年会長就任。関経連では、11年から副会長、17年より現職。

関西経済を発展軌道に乗せる2025大阪・関西万博

 関経連では、2020年12月に「関西ビジョン2030」を発表した。30年のありたき姿として「オープンで独創的な価値を生む経済」「ヒトを惹きつける舞台」「新たな社会モデルのトップランナー」の3つを提示し、その姿を実現するための取り組みの方向性を「7本の矢」で示した。特に「三方よし・民の力」と「地方分権・広域行政」の2本は当会のあらゆる活動の根底にあるフィロソフィとも言えるテーマである。

 このビジョンを踏まえ21年に策定した22~24年度をターゲットとする第1期中期計画では、事業の成果を着実に積み上げ、25年の大阪・関西万博の機会を捉えて発信し、その先の関西経済の新たな発展につなげることを目標としている。明るい未来につながる中期計画初年度の実績をいくつか紹介したい。

 大阪・関西万博開催まで2年余りとなった。おかげさまで参加表明国は目標の150カ国に到達する見込みで、パビリオンの構想事業の発表、公式キャラクター「ミャクミャク」の登場、政府によるアクションプランの策定など、準備は着実に進んでいる。今後は全国的な機運をさらに盛り上げていく必要がある。また、万博のレガシーをいかにして残していくかも重要であり、当会としても、日本経済、関西経済の成長につなげるレガシーを検討していきたい。

 AIやビッグデータなどの先端技術を結集し未来都市につなげる「スーパーシティ」の取り組みは、万博開催を契機に弾みとなる。万博、夢洲、そして24年に先行まちびらきが予定されている「うめきた2期」においてデータ連携やそれに必要な大胆な規制改革が進む中、当会としてもうめきた2期におけるイノベーション創出に向けた仕掛けづくりに積極的に取り組んでいる。これまで大企業が〝出店〟のようにして集まり、大学発ベンチャー企業と出会うマッチングイベントなどを展開してきた。今後も、うめきたを関西のエコシステムの拠点とするべく、関西の強みである活発な産学連携を生かした活動を推進していく。

 万博に向けては、訴求力や集客力を生かした西日本への広域周遊促進など、観光面からの盛り上げにも力を入れている。関西では官民共同で設立したDMO「関西観光本部」を軸に、万博の意義や内容、波及効果、面白さなど、その魅力を強力に発信して期待感を高めていきたい。

「ビジネスしやすい関西」その環境整備に力を入れる

 関西全体のイノベーション創出・産業振興の取り組みを加速させるには、成長の土台であるビジネス環境の整備が肝要である。

 例えば、当会では関西一体で企業の研究開発から事業化までをシームレスに支援する体制整備を関西広域連合に求めてきたが、その結果、22年に関西広域連合構成府県の公設試験研究機関の連携を強化する形で関西広域産業共創プラットフォームが設置された。府県ごとに異なる基準や届出様式の統一化も進みつつあり、当会は引き続き関西広域連合と協働しながら、実績を挙げていきたい。

 また、DXを通じた最先端のモデル地域としてのブランドを確立し、国内外から企業や人材が流入してイノベーションの好循環につながる関西を目指し、22年12月、当会では「関西DX戦略2025」を策定。今後、中堅・中小企業を含むバリューチェーン全体での機運醸成、経営トップ層の意識改革、DX関連の人材育成・技術活用等に向けた取り組みを本格的に推し進めていきたい。

 D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)も多様性をイノベーションにつなげる取り組みとして不可欠である。当会では「関西D&Iビジョン」に基づき、企業のさらなる意識改革や人事制度および働き方の見直しなどを働きかけており、少しずつ取り組みが浸透してきている。男性の育児休業取得率やD&Iに関する専門部署の設置割合は直近1年で順調に伸びている。関西がD&Iの先進地となるように努めたい。

 最後に、企業の諸制度に関して。当会はかねてよりマルチステークホルダー主義に基づく経営の重要性を主張してきたが、直近の四半期開示の見直しの動きに象徴されるように、岸田政権が「新しい資本主義」を掲げてから潮目は変わってきた。分厚い中間層に支えられた力強い成長を目指すため、企業のありたき姿について問題提起していきたい。さらに賃上げのムーブメントの維持・強化に向けて、企業に前向きな対応を強く呼びかけていくことも責務であると考えている。社会の安定化と好循環の創出に貢献していきたい。

 歴史に基づく伝統、文化の集積、進取の気性など関西の強みを生かし、「ONE関西」として成果を積み上げ、コロナ禍を乗り越えた明るい未来を関西から切り拓いていく。