ゲストは、フリーアナウンサーの生島ヒロシさん。いつも明るく若々しいエネルギーに満ち溢れた生島さんは、「良い健康状態をキープし、新しい挑戦もしている」と笑顔で話します。しかし、独立直後には多額の借金を背負う苦労も。困難を乗り越えた今、日々を楽しく生きる秘訣を伺いました。聞き手・似顔絵=佐藤有美 構成=大澤義幸 photo=市川文雄(雑誌『経済界』2023年4月号より)
フリーアナウンサー 生島ヒロシ氏のプロフィール
健康な体調を維持し、出会いと新たな挑戦を楽しむ
佐藤 御年72歳の生島さんは、明朗闊達な語りだけでなく見た目も若々しくいらっしゃいます。そして生島さんといえばライザップのCM! 企業では大半がリタイアする年齢ですが、あの肉体美は衝撃でした。
生島 いまだにそう言われますが、あのCMに出たのはもう7年前です。食事制限など大変でしたが、人間やればできるものですね。今はダイエットはやめて、ウイルス感染対策に鼻うがいをするなどして日々の体調管理に気を付けています。
佐藤 鼻うがいは私もやります。おかげでここ最近は風邪をほとんど引かなくなりました。
生島 鼻は人の健康を守る、空気清浄機の機能を果たす器官ですしね。これも健康だからこそ続けていることですが、僕がパーソナリティーを務めるTBSの朝のラジオ番組の放送は6400回を数えます。
佐藤 その回数はすごいですね。長年続けられてきて良かったことは。
生島 たくさんの出会いがあり、ネットワークが広がったことです。TBSの同期たちは定年退職しましたが、僕は独立していて定年もないのでいつまでも働けます。昨年はネットワークを生かしてお芝居をしたり、2ちゃんねる創始者のひろゆきさんのYouTubeの生ライブ配信出演にも挑戦しました。この歳になっても新しいことにチャレンジするのは面白いものです。カッコつける必要もありませんし、自然体で仕事もプライベートも楽しんでいます。
佐藤 素敵ですね。それが生島さんの若々しさの秘訣なんですね。
生島 自分の意識ではまだ若造です(笑)。コロナ禍で亡くなった知人もいて、死を身近に感じるので、いざという時の準備はしておき、1日1日を無駄にせずに自分のペースで走っています。出会ったいろいろな人たちと一緒に緩やかな成長を持続していきたいですね。
佐藤 持続は大事ですよね。世の中ではサステナビリティという言葉が流行っています。企業も30年存続するのは数%と言われる中、生島さんは1989年に生島企画室を設立し、キャスターやタレントのマネジメントを手掛けていらっしゃいます。変化の激しい現代で生き残るのは本物だけでしょうし、生島さんの人柄や経営スキルもあるのでしょうね。
生島 ありがとうございます。コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻で、世界の政治・経済、人々の生活は大きな変化を迎えています。グローバル企業のGAFAMですら人員削減を始めています。そんな今は映画やドキュメンタリーでも、人間が本来持つハートウォーミングなものが求められているのを感じますね。
佐藤 そうですね。それと現代は日本と海外との垣根がなくなりつつありますね。コロナ禍で多少減ったとはいえ、日本の若い起業家が海外で活躍するケースも増えましたし。スポーツの世界でも昨年のサッカーワールドカップでは日本代表選手の大半が海外のクラブで活躍しています。これはこの30年の進化です。
生島 日本サッカーは93年にJリーグが開幕し、同じ年にドーハの悲劇を味わい、そこからどんどん上達して、先のワールドカップでは強豪国のドイツとスペインを破りました。若手は海外の一流選手を見て学び、さらなる技術向上を目指してほしい。また、僕の次男も大学の仕事で海外のプロジェクトに関わっていますが、若者はさまざまな分野で世界に通用する存在を目指し、日本から風穴を開けてほしいですね。
借金10億円を背負い、完済。若者の自己実現を応援したい
佐藤 人生を切り拓いてきた生島さんだからこそ、応援の言葉にも重みがありますね。独立後はバブル崩壊と不動産投資の失敗などで10億円もの借金を背負ったそうですが、困難をどう乗り越えたのですか。
生島 バブル崩壊直後はしばらく仕事の受注も増えていたのですが、借金を背負ってからは眠れない夜もありました。それでも僕があきらめてしまえばスタッフの皆が路頭に迷います。だからきちんと仕事をしていくしかなかった。ただし、時代の流れでラジオやテレビの司会の仕事が減ってきていたので、その代わりに講演を増やしていきました。
佐藤 同じ語りのプロですしね。
生島 それで僕自身の信用を高めるためにファイナンシャルプランナーをはじめ多くの資格を取り、健康、介護、相続などテーマの引き出しを増やしていきました。年間150回の講演を受けるようになり、自分の給与は下げて従業員の給与や借金返済に充てる生活を続けてきて、完済したのがコロナ前です。
佐藤 強い責任感ですね。人生最大の困難を乗り越えて、今後の夢は。
生島 目標は今の良い健康状態を維持しながら、子どもたちの自己実現のサポートをしていくことです。ささやかな幸せですね。将来的には終の棲家は介護付き有料老人ホームで、周りに迷惑をかけずに生活し、子どもたちや会社の若者たちの生活の基盤をつくりたい。若者が自分の夢を実現して輝いている姿を見るのは楽しいですよね。僕自身は新たな挑戦は続けますが、今から大きな勝負や投資をする気はありません。その分、若者を応援していきます。
佐藤 若者の成長はうれしいですよね。私もそれを味わいたくて、起業家支援アワードの開催やインキュベーション施設の運営を行っています。私たちの知見や経験を若者たちに引き継いでいきたいですね。