高齢者専門の宅配弁当チェーンを全国展開し、加盟店と直営店とFCを合わせて約350店舗を運営するシニアライフクリエイト。コロナ禍の影響を大きく受けながらも着実に成長を続ける原動力は、常に新しいことに取り組みチャレンジを続ける姿勢にある。(雑誌『経済界』2023年5月号「注目企業2023」特集より)
シニアライフクリエイト 代表取締役 高橋 洋氏
たんぱく質の量にこだわった健康を支援する弁当を開発
シニアライフクリエイトが提唱する「地産外商」とは、地元で取れた農水畜産物を地元以外の場所でも消費することで、地域の活性化や過疎地域の応援、フードロス削減につなげる取り組みだ。全国に350店舗ある「宅配クック123」の加盟店の経営者や行政から寄せられてくる情報を元に商談を進める。
例えば、協力協定を結んだ高知県では、県産のシイラを使ったメニューを開発。また、ししとうを使った「高知県産しし唐と玉葱の甘酢あん」や「しし唐の肉味噌和え」などを開発し、メニューに加えてきた。
また、2022年2月の日本食糧新聞社主催「惣菜・べんとうグランプリ2022」で優秀賞を受賞した「ふしめんたいコロッケ」は、これまで同社の惣菜店で一般向けに提供していたものを高齢者向けにアレンジし、今年1月から導入を開始した。
同社が今着目しているのが郷土料理だ。しかも、現地の味を忠実に再現することを目指しているという。
「在宅高齢者が食事をしているだけでその地域を助けている、社会に参加できている、そんな気持ちになれるきっかけの一つが地産外商だと考えています。そうであれば、郷土料理は地域に根付いた文化を知る機会として楽しんでいただきたい。目下、石川県の『じぶ煮』の導入に向けて動いています」と語る高橋洋代表。
同社の食に対する取り組みは地産外商やメニューづくりにとどまらない。先ごろ導入を開始したのが、たんぱく質に特化した「幸(しあわせ)たんぱく食」だ。厚生労働省が示すガイドラインを目安に、1食当たり20グラムのたんぱく質が無理なく摂取できる。
「残さず食べ切れる量に収めることや口腔機能の維持につながる食材選定に苦心しました。その甲斐あって、高たんぱくでありながら機能性を持った弁当ができました」と高橋代表は胸を張る。
今後は、健康支援型配食サービスを行政に提案しながら、医療機関との連携も推進していく考えだ。例えば、病院に入院中はバランスの取れた食事ができるが、退院して自宅に戻るとそれが難しくなる。その結果、また病院に逆戻りというパターンも珍しくない。そこで在宅食として配食サービスが重要になる。
「行政や医療機関と連携するためには、健康支援型配食サービスのエビデンスを積み重ねていく必要があります。つまり『健康支援型の弁当を卒業する人』を輩出しなければならないわけです」
地域行政、医療機関、シニアライフクリエイトの連携にて提供される健康支援型配食サービスが高齢者の要介護度の改善や進行を遅らせる一助となり得る。さらに言えば、そこに地産外商で地域の一次生産者が潤い、また生産拡大によって地域の雇用にもつながる。
「地域への還元と高齢者の健康寿命の延伸を両立することが、私たちが中長期的に目指している配食サービスの姿です」
離島への積極展開と高齢者コミュニティを拡充
全国各地で切れ目のない配食を目指す同社。その目標を達成すべく、同業他社が手をこまねく離島への展開にも積極的だ。
「離島こそ高齢者が不便を強いられていることが多く、在宅配食事業者が出ていくべき場所だと考えています」とその姿勢は揺るぎない。香川県の小豆島や鹿児島県の沖永良部島などに続き、昨年は沖縄県の宮古島と北海道の利尻島に「宅配クック123」の店舗をオープンし、今年は礼文島への展開も視野に入れている。
同社の配食サービスでは、配達するだけではなく高齢者の見守り活動も併せて実践しているのも特長の一つだ。高齢者への1日2回の宅配時には、弁当を手渡しするとともに声掛けを必ず行う。こうした創業時からの地道な活動と、健康を意識した食への取り組みが各地の行政から注目されている。
高知県土佐清水市に続き、昨年12月には愛媛県宇和島市と「市と事業者との連携による市民を支える地域づくり協定」を締結した。
「地産外商での地域活性化と、市内高齢者の健康寿命の延伸の両面からプランニングし、官民連携で市民生活を支えていきます」
この動きは全国の自治体に波及し始めている。今後は静岡県、北海道の北見市や室蘭市での連携を進めていくという。
一方、外出可能な高齢者が集う場として推進しているのがコミュニティサロン「昭和浪漫倶楽部」だ。現在、全国に6カ所設けている同施設では、地域の高齢者たちが自主的にルールを定め、食事を共にするだけでなく体操や手芸などのレクリエーションを楽しんでいる。
「介護保険を使わずに、毎日でも利用できるデイサービスのような場を提供したい」と話す高橋代表。今後は子ども食堂を併設したい考えだ。
「地域の子どもとお年寄りが自然に触れ合える場の提供を目指しています」
会社概要 設立 1999年12月 資本金 2億8,000万円 売上高 125億1,311万円(2022年2月期) 本社 東京都港区 従業員数 105人(2021年2月現在) 事業内容 高齢者専門宅配弁当サービス、高齢者施設向け食材卸、高齢者向けコミュニティサロンの運営 https://slc-123.co.jp/ |