空間ディスプレーやエコ資材の事業で、堅調な成長を続けるコンバートコミュニケーションズ。中でも2009年に発売した紙製強化パネル「段ボード」は、持続可能な社会を目指すSDGsの観点からも注目度が高まっている。海外にも拠点を広げる竹村亨代表に話を伺った。(雑誌『経済界』2023年5月号「注目企業2023」特集より)
コンバートコミュニケーションズ 代表取締役 竹村 亨氏
環境問題への関心が起点に紙製強化パネル「段ボード」
約30年前から、ホテルや商業施設、飲食店の空間デザイン、映像やCM制作などを幅広く手掛けるマルチメディアプロダクションのコンバートコミュニケーションズ。
「SDGsが今ほど注目される前から環境問題には高い関心を持っており、リサイクル素材としての紙製強化パネルに興味を引かれました。しかし、海外の強化パネルは国内の基準をクリアしておらず、公共の場で使うことができなかったのです。そこで国内メーカー数社に声を掛け、『段ボード』の開発にこぎ着けました」と竹村社長は語る。
段ボードは日本防炎協会の厳しい試験をクリアし、防炎認定を取得。そのため公共施設で使用できるのはもちろんのこと、SDGsに積極的な大手企業や官公庁などとのつながりも深めている。
既成概念を打ち破る新たな価値と可能性
竹村代表は長年にわたって展示会の視察を続けている。
「どんなテーマの展示会でもレイアウトや魅せ方が形骸化されていると感じていました。展示会やイベントはライブコミュニケーションの場です。システムパネルを使い、サインを変えただけでは、本来の集客装置としての意味を成しません。既成概念を打ち破るには、段ボードを使った魅せ方が効果的だという確信がありました」
そこで段ボードの可能性を感じてもらうため、さまざまな展示会に自主的に出展した。クールジャパンをモチーフにした純和風のブースや、イタリアの拠点開設を記念としてコロッセオを模したブースを出展。さらに自社開発の大型3Dプリンターでアナログ的要素のあるギミックコンテンツを開発し、集客装置としての進化を図っている。
「今日の集客装置は、世界観で魅了しながらSNSで拡散されることを必須条件とするべきだ」と語る。ITが発達する今だからこそ、ライブコミュニケーションの価値は一層高まると考えている。
段ボードの優れた点は他にもある。特別な技能や経験がなくても簡単に組み立てられること、軽量で運搬や設営が容易であること、紙製なので畳んで収納できて再利用できることなどだ。
「海外で開催された人気アニメの原画展は現地のスタッフに任せました。専門知識のない人でも簡単に組み立てることができる。そして、場所を変えても同じ情景の再現が何度でもできます」
実際に年間10回の展示会に2300万円を費やしていた企業がこのソリューションを組み入れたところ、予算を約半分に抑えることができ、なおかつその予算でタブレットツールコンテンツや映像制作の依頼を受けた、という例もある。
また単なる什器と比べてデザインの自由度が高く、さらには構造設計により強度や安全性を高めており、常設店舗や大型商業施設のポップアップストアや大規模イベントでも展開を広げている。
クリエーティブ内製率90%超アイデアを形にできる会社
先ほどの「デザインの自由度が高い」とする理由の一つに、同社のクリエーティブへのこだわりがある。日本でアップルマッキントッシュコンピューターがデザインギアとして使われ出した当時、大型プリンターメーカーや商社と組み、グラフィックディスプレーという概念をいち早く創り出した。
11年にフォトジェニックな空間づくりに最適なデザインカタログ集『Revole』を発刊し、15年にはヨーロッパデザイナーとのコンタクトを密にするため、イタリアのミラノにオフィスを新設。こうした感度の鋭さも同社の魅力の一つだ。
「イベントやプロモーションには多くの専門業者に加えて、それを束ねる会社も必要です。しかし当社ではほぼ全てを自社で行っています。内製率90%超を誇る『オールインワンのマルチメディアプロダクション』であることが最大の強みです」
そのため社員には「天敵が潜む海でも恐れず飛び込む。そんな探求心と冒険心のある、ファーストペンギンのような人材を求めている」と竹村社長。同社には企画と制作、ソフトとハードという垣根がない。そのためイメージがぶれることなく、アイデアがスピード感をもって形になるのだという。
会社概要 設立 2004年1月 資本金 3,000万円 売上高 4億8,000万円 本社 東京都新宿区 従業員数 32人 事業内容 企画・デザイン、映像・写真撮影、映像編集、プロジェクションマッピング、コンテンツプログラミング、空間ディスプレーなど http://www.concom.co.jp |