自社開発のクラウド型PBX「Omnia LINK(オムニアリンク)」などのデジタル技術を活用したコンタクトセンター・BPOサービスの提供、及び各種AI・DXソリューションの開発・販売を行っているビーウィズ。従来型のコンタクトセンターから脱却し、先進的なデジタル技術を駆使してさらなる飛躍を目指している。文=榎本正義(雑誌『経済界』2023年6月号より)
ビーウィズ・森本宏一社長のプロフィール
デジタル技術を活用したコンタクトセンターの雄
かつてのコールセンターでは、顧客からの問い合わせやクレームなどの対応は電話で行うのが一般的だった。しかし近年では、コールセンターの機能を拡大して、電話だけでなくメールやチャット、SNSなどさまざまなコミュニケーションツールを活用してカスタマーサービスを行うコンタクトセンターを設置する企業が増えてきている。
ビーウィズは、このコンタクトセンター、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング。業務工程外部委託)事業と、クラウド型PBX(プライベート・ブランチ・エクスチェンジ。構内電話交換機)「Omnia LINK」外販の2つの事業を柱に運営している。
「アウトソーシングは、人とシステム、場所、業務ノウハウを組み合わせて顧客に最適なソリューションを構築し、提供するビジネスモデルです。当社の特長は、独自のテクノロジーシステムを業界の中でも唯一持ち合わせており、これを活用した付加価値の高いサービスが提供できているところにあります」
森本宏一社長は、そう自社の強みを強調する。
「Omnia LINK」は音声認識機能を搭載したクラウド型で、高機能センターを実現するデジタルとAI技術による高付加価値サービスだ。音声認識AIを活用することで、人のスキルに依存する属人的だったコンタクトセンターの品質を向上させることに成功した。
「コンタクトセンターの業務は、例えば1万件の問い合わせがあるとしたら、そのピークに合わせた人員配置を拠点ごとにしなければなりません。ところがクラウドなら、問い合わせの増減に合わせてフレキシブルに対応できるので、場所に依存せず、スピーディーに拠点展開ができます。すべての拠点とノウハウを共有できるし、どこにいても同じ環境で仕事ができるので、多様な働き方が可能になっています」
同社の顧客は公共・公益のインフラ企業や金融、小売り・流通サービスなどの企業が多い。そうした企業は、いわば社会インフラとなっているので、天変地異などがあっても事業を止めることはできない。そこにサービスを提供しているビーウィズのコンタクトセンターも、もはや社会インフラの一部になっているというのが森本氏の持論だ。
ビーウィズは2016年に、アイブリットをM&Aで子会社化した。同社にはPBXの仕組みを熟知し、クラウドの音声認識AIに着手できる技術者がいた。ビーウィズは単に開発を支援するだけでなく、8千人を超えるオペレーターに日々寄せられる膨大な問い合わせなどをアイブリットにフィードバックし、機能改修をしながら〝実戦〟に強い仕組みを作り上げていった。17年からは「Omnia LINK」の外販を開始し、これを起点に、AI・DXソリューションを拡張させている。
「根元から新芽まで健康に成長し続ける」ことを標榜
「コンタクトセンター・BPO業界の市場規模は約2・6兆円ですが、そのうちの約1・3兆円はまだ自社内だけでシステムを使っていて、アウトソーシングしていない企業なのです。そうしたところにOmnia LINKを販売していますが、そこの企業の環境が変わって事業を拡大したいという局面になったら、当社が人や場所を提供するなどアウトソーシングを使っていただくことになるでしょう。システムの外販だけでなく、いずれはアウトソーシングでも当社の顧客になっていただけるだろうと。サービスの提供の順序を変えて、〝ゲームチェンジ〟しているところです」
ビーウィズの設立は00年5月。三菱商事とソフトバンクグループの合弁事業会社としてスタートした。12年5月にはパソナグループの出資により、パソナグループと三菱商事の合弁会社となり、15年12月からはパソナグループ100%出資の完全子会社となっている。
「中期経営計画2022ローリングプラン」において、22年度終了時点でのありたい姿を「根元から新芽まで健康に成長し続ける会社」として位置付けた。「根元」とは、事業の根幹である既存事業のコンタクトセンター・BPO事業のことを表現しており、「新芽」とは更なる広がりを持って、両面で「健康」に成長し続けていく。これを経営ビジョンと定めている。
「コンタクトセンターは、これまで顧客の満足度を上げることが役割でしたが、AIの音声認識によって、サービスの企画立案やマーケティングにも使えるようになります。コストセンターからプロフィットセンターになり、マーケティングへと利活用されるようになっていく。オムニチャンネル化で、顧客のあらゆるタッチポイントからのデータを蓄積していき、総合的にカスタマイズされたソリューションを提供できるようになるでしょう」と森本氏。続けて、
「2月28日にリリースしたオンライン接客・電子契約システム『ユニゾンコネクト』は、商談・本人確認・契約など対面での業務がすべてオンラインで完結するものとなっています。これまでは店舗や拠点ごとに有資格者による説明が必要であった業務が、オンライン化することで、1つの場所から全国の顧客対応が可能となりました。顧客は直接来店する必要がなくなり、利便性の向上にもつながっています」
森本氏にとって転機となったのは、インターネットと、パソナグループ創業者の南部靖之氏との出会いだったという。インターネットによって世界とダイレクトにつながる世の中になる。これからものすごいイノベーションが起こると確信し、社内ベンチャーでパソナテックというエンジニア会社を起業した。南部氏に、起業家という生き方があるのを教えられたことも森本氏の背中を押した。
「人間の能力やスキルの可能性は無限です。これからも顧客市場に合わせた価値創造型DXを推進し、カスタマーサービスの未来を変えたい」ときっぱり語る森本氏だ。