経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

与えられたリソースを大切にし改革を通じ美しい学校づくりへ 百瀬義貴 学校法人明泉学園

学校法人明泉学園 学園長・理事長 百瀬義貴(ももせ・よしたか)

東京都町田市にある学校法人明泉学園は、幼稚園・保育園、高等学校、短期大学を擁する。理念と伝統を守りながらも、ここ数年、校名・学科名の変更や校舎改築、短大の共学化など未来志向の諸改革に取り組んでいる。(雑誌『経済界』2023年9月号 総力特集「人材育成企業2023」より)

学校法人明泉学園 学園長・理事長 百瀬義貴(ももせ・よしたか)
学校法人明泉学園 学園長・理事長 百瀬義貴(ももせ・よしたか)

幼稚園・保育園、高校、短大校名を「フェリシア」に統一

明泉学園は1961年に鶴川高等学校が創立されたのが始まりだ。68年に鶴川女子短期大学、72年に鶴川女子短期大学附属幼稚園が開設され、現在に至る姿が整えられた。

学園長・理事長の百瀬義貴氏は、少子化が進む厳しい経営環境の中で、目指す理想を次のように話す。

「8年ほど前に明泉学園を永続させるためにどうするかを考えた時に出した結論が規模拡大型ではなく構造改革型で行くことでした。看護学校を加えたり、短大を四年制化することを考えたこともありました。しかし、そうした規模拡大ではなく、今与えられているリソースを大切にし、美しい学校づくりを目指すことにしたのです」

実際、明泉学園は2017年以降、さまざまな改革に取り組んできた。同年に鶴川女子短期大学で幼児教育学科を「国際こども教育学科」に学科名を変更したほか、コース制を導入し「国際こども教育コース」を設置するとともに「国際こども教育専攻」を開設。また、幼稚園に「英語イマージョンクラス」を設置したほか、18年に鶴川フェリシア保育園、19年に成瀬フェリシア保育園を開園した。

19年には鶴川女子短期大学校舎を改築。著名建築家の隈研吾氏を起用し、木材を多用した新校舎に生まれ変わった。20年には鶴川女子短期大学を「フェリシアこども短期大学」に名称変更、21年に共学化した。幼稚園についても、認定こども園への移行に合わせて「認定こども園フェリシア幼稚園 フェリシアこども短期大学附属」に変更した。

鶴川高等学校についても、23年4月「フェリシア高等学校」に校名変更するとともに制服も一新。短期大学、高等学校、幼稚園を「フェリシア」という名称に統一した。

こうした校名・学科名の変更、コース制・新専攻の導入、幼稚園での新クラス設置、保育園の開園、校舎改築、共学化などの変革を主導してきた百瀬氏は次のように振り返る。

「縁とタイミングを感じます。隈研吾さんとの出会いもそうでしたし、校名変更も建て替えを進めていく中で持ち上がったものです。学校名・学科名の変更は、時代の変化に対応していくという思いが強かったから。この学園を守っていくという覚悟の表れです。変革は今、良い方向に動いていると感じています」

建学の精神「愛の教育」と顧客志向の学校経営

百瀬理事長(右から3人目)と教員。フェリシア高等学校の鐘楼を臨む屋上スカイガーデンにて
百瀬理事長(右から3人目)と教員。フェリシア高等学校の鐘楼を臨む屋上スカイガーデンにて

明泉学園は、東京商工女学校、虎ノ門タイピスト学校を保有する別法人の百瀬学園と1991年に統合し、創立の母体となった。

虎ノ門タイピスト学校は、女性の活躍支援を目的とした日本初のタイプライター専門学校だった。創立者の故百瀬泰男氏が女性の手に職を持たせたいという思いから、私財を投じて設立した。これが明泉学園の建学の精神「愛の教育」の根本に息づいている。

この精神は、日本の未来を担う女性たちに愛情を持って教育を行うための高等学校の開校や、保育者育成のための短大と附属幼稚園の設置へとつながっていった。

建学の精神「愛の教育」は時代が変化する中でも評価されてきたが、一方で「顧客視点」の考え方も重要になってきているという。

「学校が学生を選ぶ時代から学生から選ばれる時代に変わってきました。過剰なおもてなしではなく、学生・保護者の期待にいかに応えるかという顧客視点が必要になってきています。学園が永続するためには学生数を確保し収益を上げなければなりませんが、少子化が進む中で小規模な学校法人には限界があります。経営者としてはリスクを抑えた投資による収益を学園に還元することにも取り組んでいるところです」

実は、明泉学園は70年に倒産の危機に瀕し希望退職を募集したことがある。そのときの創立者の声明文には「教師の方は去ることはできる。しかし私は去ることはできない。(中略)これは私の宿命です」と、経営者・教育者としての責任と学園を守り抜く強い想いが記されている。その想いは今も受け継がれている。

フェリシア高等学校では、昨年度より1時間目を10時始まりとし、そこで生まれた0時間目の時間を活用して、資格取得講座を開講している。

漢字検定、英語検定、パソコン検定とあり、今年度からは保育技術検定と、実用的な金融知識の習得を目的とした金融リテラシー検定試験を加えた。保育技術検定は、同資格を有する家庭科の教員が指導している。また、金融リテラシー検定は講座開講に当たり社会科教員が先行して受験したところ、今年度5月に全員が合格。現在、受講希望者25人に指導をしており、12月までに全員の合格を目指している。

「小規模の学園ですから意思決定も早いし、教職員一人一人が同じ方向に向かって行動してくれます。教職員はまさに人財であり、当学園の強みになっています」 

法人概要
創立 1960年1月
本部 東京都町田市
職員数 211人(2023年5月現在)
事業内容 フェリシアこども短期大学、フェリシア高等学校、フェリシア幼稚園、鶴川フェリシア保育園、成瀬フェリシア保育園などを運営
https://www.meisen.ac.jp/