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事業体質を強靭化。新たな時代に求められる高機能素材の開発に注力 大同特殊鋼 清水哲也

大同特殊鋼 社長執行役員 清水哲也

実績・規模共に世界トップクラスの特殊鋼専業メーカーの大同特殊鋼。モータリゼーションの進化に伴い成長してきた業界が迎える転換期を、高付加価値材料の需要拡大チャンスと捉え、カーボンニュートラル時代に求められるものづくりの革新に挑む。(雑誌『経済界』2023年11月号 第2特集「リブート中部経済」より)

大同特殊鋼 社長執行役員 清水哲也
大同特殊鋼 社長執行役員 清水哲也
 しみず・てつや

 1916年の創業以来、幅広い産業の基盤を支えている大同特殊鋼。

清水哲也社長は足元の需要に関して、「主力の自動車メーカー向けは生産が回復し好調。近年力を入れている半導体製造装置材料など電気・電子業界向けは長期的には堅調に伸びる見込み。全体では緩やかな回復基調にある」と説明する。また新たな局面として、世界情勢の変化を背景に、航空機・船舶・エネルギー・石油採掘といった材料の引き合いが世界中から殺到しているという。

 一方でコストに影響するのが原燃料価格の高騰だが、「2021年頃からサーチャージ制導入に取り組み、ある程度リスク回避ができる体制を構築しました。原燃料に業績が左右されると言われる業界ですが、外部環境の変化に対する体質強化を図ることができ、直近2年は最高益に。量的回復はまだ途中ですが、『稼ぐ力』を確保できつつあります」

 現在、売り上げの約6割が自動車向けで、エンジンや変速機用鋼材も多い。しかし、電動車へのシフトでその需要は失われる。「あらゆる分野で電動化が進む今後、より高機能な特殊鋼が求められ、高付加価値製品の需要は伸びていく」と見通し、高機能素材の生産体制を強化した。また、「経済安全保障の面から担うべき材料も増えていく」とも見ている。

 カーボンニュートラルの面で期待しているのはエネルギー分野だ。

 「一つは、安全確保を前提としたCO2排出量の少ない原子力。もう一つが水素。水素に関しては、化石燃料に代わるエネルギーとしての活用に向けて、適切な材料の研究開発を進めています」

 加熱炉用の水素燃焼バーナーの開発にも取り組み、今年7月、産業集積地である中部圏で水素社会の実装を検討する中部圏水素利用協議会に参画。需要拡大やサプライチェーン構築にも貢献していく構えだ。

 社会が激変する今、1世紀以上にわたり、時代の変化に対応しながらイノベーションに寄与してきた同社だからできることがある。

 「暮らしの中に隠れて日々を支えている、ものづくりに不可欠な特殊鋼。社会が変われば新しいものが求められる。ニーズに応え、魅力ある素材を提供し続けていきます」 

会社概要
創  業 1916年8月
資 本 金 371億7,246万円
売 上 高 5,785億6,400万円(連結)、
3,956億700万円(単独)(2022年度)
本  社 愛知県名古屋市東区
従業員数 1万2,422人(連結)、3,283人(単独)
事業内容 特殊鋼鋼材、機能材料・磁性材料、自動車部品・産業機械部品、エンジニアリングなどの製造・加工・販売
https://www.daido.co.jp