岐阜県大垣市に本社を置くイビデンは、後工程における半導体パッケージ基板製造のトップメーカーだ。半導体パッケージ基板には、繊細な半導体を外部環境から守ることや、半導体とマザーボードをつなぐ仲介役としての役割がある。データセンター向けの最先端半導体パッケージ基板は、大型化・高多層化・微細化など極めて難度の高い技術が必要だ。その技術があるからこそ、イビデンの半導体パッケージ基板は、世の中を大きく変えつつある生成AI用半導体に欠かせない存在になった。また世界一の半導体ファウンドリ、TSMCが茨城県つくば市につくった3DIC研究開発センターでは最先端半導体の共同開発を行っている。
イビデンは、この6年間でデータセンター向けの大型・高多層の半導体パッケージ基板に対し、大型投資を遂行してきた。その理由を、青木武志社長に聞いた。聞き手=関 慎夫 Photo=上山太陽(雑誌『経済界』2023年12月号「日本半導体の行方特集」より)
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青木武志 イビデン社長のプロフィール
―― 大型投資を決断したのは青木さんが社長に就任した6年前です。よく短期間で事業領域を大きく変えることができましたね。
青木 イビデンはもともと揖斐川の水力発電会社としてスタートしました。その後、余剰電力を活用するために電気化学事業に進出、建材事業など社会のニーズをいち早くつかみ、さまざまな事業を展開し、今日に至っています。時代の趨勢に合わせて主力事業を転換してきたのは、生き残るため。時代に合わせ、伸びる市場に対して経営資源を投入するのがイビデンのDNAです。
―― TSMCなど、世界トップの半導体企業の信頼を得ることができた理由を教えてください。
青木 彼らは独自のコア技術を持っています。一方、当社のパッケージ基板にも独自のコア技術があります。お互いのコア技術を最善の方向ですり合わせていく。
具体的には彼らは開発ロードマップを持っています。5年、10年のスパンで次世代の半導体はこうあるべきだという内容です。それに対し当社が提供できる技術・ソリューションを示し、キャッチボールしていく。次世代半導体の実現に向けて、こうすればもっと伝送速度が上がる、実装の歩留まりを上げることができるといった提案をしていく。それが評価されたことが今日につながっていると思います。
―― 半導体業界の技術は日進月歩。ついていくだけでも大変です。
青木 半導体関連に限らず、当社が提案したものが「普通の技術だね」と言われてはいけません。常にお客さまの期待を超えるべく、「ここまでできるんですか」と多少なりとも驚きを持った評価をしていただけるよう、努力してきましたし、今後も続けていきます。
一つの半導体が誕生するまでには、ものすごい数の試作品を作ります。半導体メーカーにとって最適な半導体パッケージ基板を提供するため、プロセスの中の条件なども含め提案していく、そのプロセスの総合力こそが、イビデンの強みだと考えています。