経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

生成AIによる独自のデータ活用で企業の成長を強力にサポート 一筆太郎 SiNCE

SiNCE 一筆太郎

新たなビジネスを切り拓くツールとして期待されるAIも、実際に現場で活用するにはまだまだ課題が多い。「データドリブンカンパニー」を掲げるSiNCEは、最先端のテクノロジーで企業のAI・データ活用をサポートしている。(雑誌『経済界』総力特集「注目企業2024」2024年5月号より)

SiNCE 代表取締役 一筆太郎氏

SiNCE 一筆将人
SiNCE 代表取締役 一筆太郎 いっぴつ たろう

データ人材の不足で遅れるAIの導入

世界各国の大手企業や政府機関などに調査分析レポートを提供するガートナーは、2024年の戦略的テクノロジーのトップトレンドの一つに生成AIの民主化を挙げている。今後、生成AIの活用が爆発的に広がると予想される中、日本のビジネスの現場ではそのデータ活用が遅々として進んでいないのが現状だ。

「データ活用が進まない理由はいくつかありますが、よく言われるのはデータ人材の不足です。確かに、データの扱いに長けた人材はなかなかいません。エクセルでの集計には慣れているかもしれませんが、データ集計以上のことを考え、ビジネスに生かすのはとても難易度が高い作業です」と語るのは一筆太郎代表。

これを裏付けるように、IMDが発表した23年の「世界デジタル競争力ランキング」で日本は64カ国中32位、ビッグデータの活用に至っては64位という惨憺たる結果となった。

一方、データサイエンスの能力が高い人材が統計学や数理モデル、BIツールを駆使して何らかの示唆を出したとしても、それだけでは課題を解決できないという問題もある。

「実際、そのような状況に出合うことも多く、BIは導入したが現場では使っていないとか、AIやデータ分析は意味をなさないといった声をよく耳にします」

ビジネスの現場とデータサイエンスの融合

一般的にコンサルティングというのは、ビジネス課題やデータ活用における概念実証としてアドバイスを行うことが多い。しかし同社では「とにかく現場に入ることを大切にしています」という一筆代表の言葉通り、クライアントの現場に入り込み同じチームとして歩むハンズオンを貫いている。机上の空論ではなく、実地で検討して「ビジネス課題をデータサイエンスで解決する」ことを得意としているため、数値改善や実用化につながるコンサルティングを提供できる。

例えば文具の卸業での事例では、発注や需要予測をAIで行うことで効率的に在庫のコントロールをしている。

「卸業を営む方々は欠品によって発注を受けられなくなることを恐れています。そのため、安全在庫として倉庫に余剰な在庫を抱え込みがちですが、AIを導入することで適切な安全在庫の量を把握できるようになります」

このAIモデルを実用化するためには、実際に現場のオペレーションを熟知する必要がある。特定の商品に大量注文が入る時期や、どこの倉庫に何がどのくらいストックされているか、さらに返品があった際に起こり得る問題など、あらゆる状況について現場を動かすスタッフから情報を引き出し、人からAIに置き換えるための下地を整える。

「AIモデルは、予測精度という観点ではとても優秀なものが多いです。Pythonで一から作ることもできますし、アマゾンやグーグルなどが提供するサービスを利用することもできます。しかし、その精度がただの数字ではなく、人から信頼を得られるものになるかが重要です。AIが現場においてどの機能を担えるかを慎重に判断し、安全性の高い商品から移行する必要があります。データ活用は、業務をAIやデータがサポートし拡張してくれたと人が感じて、初めて成功と言えるでしょう」

生成AIの活用で誰もが驚くデータソリューションを

「今後は驚くようなサービスをたくさん作っていきたいですね。データには無限の可能性があると思っています。例えば生成AIはマーケティングを大きく変えるでしょう」

これまで、AIDMAやThe Modelなどさまざまな手法を駆使して行われてきたマーケティングも、生成AIの登場によってその手法が変わるという。

「私たちはユーザーインサイトを生成AIに導出されています。かつては、リアルにターゲットに近い人を集めてグループインタビューを行っていましたが、生成AIでは仮想エージェントを立てることができ、ChatGPTのようなLLM(大規模言語モデル)の中でインタビューを実施することが可能です」

消費者行動の多様化により、ターゲットやユーザーインサイトも多様化している。これらは素早く移り変わるため、捉えることが難しい。生成AIでは、仮想エージェントによってその商品やサービスを求めるシチュエーションを無数に生み出すことができる。それらを解析することによって、マーケティング戦略の骨子を作るのだという。

また、これまでは「40代男性」といった単純な属性データの活用が主流であったが、購買情報などのファーストパーティーデータをベースにAIのクラスタリングの手法を活用すると新たな属性が見えてくる。例えば、「深夜行動クラスター」「糖質ゼロクラスター」「茶色いもの好きクラスター」など、数百次元を超えるクラスターに意味を持たせることで新たな属性が生まれ、新しい切り口のカスタマージャーニーを構築することが可能になる。

「VUCAと言われる変化の時代、私たちはビジネスをより早く深く理解し、新たに生まれるデータサイエンスを楽しみながら研究・実証することで、あらゆる事業の成長に貢献していきたいと思います」 

会社概要
設立 2020年2月  
資本金 5,900万円  
本社 東京都港区  
従業員数 33人  
事業内容 AI・データコンサルティング  
https://since2020.jp/