中期経営計画で2025年の目標を「強み領域でNo.1になる」と掲げるJSOL。医薬業界、放送業界、一般消費財など事業領域を着実に広げている。SIに加え、衝突解析のソフトウェアなどエンジニアリングサイエンス分野における先進的な解析技術を持ち、盤石な地位を築いている。(雑誌『経済界』総力特集「注目企業2024」2024年5月号より)
JSOL 社長 永井健志氏
一歩先を行く提案にシフトチェンジ
JSOLの事業の柱は大きく二つ。一つはITシステムの導入から運用までを一括で行うSI(システムインテグレーション)で、各々の顧客に応じた「フルオーダー型」や、既製を改変する「イージーオーダー型」など、顧客の幅広い要望にオーダーメード型で柔軟に対応している。
SIに対する顧客のニーズはここ10年で大きく変化しているという。
「これまでは、紙ベースだった仕事をコンピュータに置き換えることが課題だったので、仕事が明快でした。私たちもITに置き換えるところを強みとして発揮してきました」と永井健志社長は振り返る。
ところが、今やITへの置き換えは一巡した感がある。ITによって仕事は最適化された状態となり、課題はなくなったかに見えるが、実際のところ事情は異なる。
「『他社と差別化するためには、これまでのビジネスのやり方のままでは難しい。業務をより効率化し新たな事業創出を実現するために、何か新しいものを提案して欲しい』。これが今のお客さまの要望です」
顧客のニーズに応えていくためには、まずはJSOLが変わらなくてはいけない、と永井社長は強く感じた。顧客の要件を着実にコンピュータの言語に落とし込むという仕事の仕方から一歩進み、顧客自身も考えていなかったようなビジネスの方法をITで実現させていくという提案力・実現力が必要となる。
「顧客の要望に従ってITを実装するだけではもう生き残れない」と強調する。
「私たちの一番の強みは、コンサルティングの段階からシステムを実装し、その後の運用やメンテナンスまで、一気通貫で全てお任せいただけることだと自負しています」
しかし一方で、この提案型のスタイルは大きなリスクも伴うものだ。
「言われたものを作るのではなく、『お客さまが欲しいものはこれです』とこちらから提示するやり方ですから、間違っていたら大変なことになります。私たちの知見が試されるわけです」
この点、JSOLには長年オーダーメード型で顧客の要望に応えてきたノウハウと知見があり、これが有利に働いているという。例えば、製薬業界向けの社内システムがそれだ。業界ならではの会計や人事、受発注の仕組みに知見を持っており、「製薬業界におけるビジネスプロセスのベストプラクティスはこれ」と胸を張って言えるものができている。
「つまり、『このシステムを使っていただければ絶対にうまくいきます』と言える状態になっています。これが言える業界やお客さまの数を増やしていくことに注力しています」
さらに成長を続けるCAEのソフトウェア開発
もう一つの柱がCAEのソフトウェア開発だ。CAEとは、製品の性能や強度などをコンピュータ上でシミュレーションすること。同社が特許を取得し、自社製品として展開している「JMAG」は電磁界を解析するソフトウェアで、国内外で好調だ。JMAGは同社が40年前から開発を進めてきたもので、製造関連業種で導入されてきた。近年では、自動車のEV化に伴い、その開発に不可欠なものとして、国内外の自動車メーカーでも採用されている。
現在、同社で進めているのが、SI分野とCAE分野の融合だ。CAEの開発で培っているビッグデータ解析やAIのノウハウ・知見をSIの顧客に適用するというもの。これを次の大きな武器とするために、24年度に向けて全社的に議論を進めている。
「JSOLのもう一つの強みは、SIの分野もエンジニアリングの分野も『これだ』と思ったことは愚直に続ける点です。他の会社が諦めたことも続けることで実を結び、それが強みとなっています。加えて、それを社員がしっかり支えてきたことも大きな強みです」と永井社長は胸を張る。
同社では事業の拡充に伴い、人材の獲得にも余念がない。
「人材としては『語れる人』を求めています。すなわちコミュニケーション能力が高い人です。お客さまに語れることがJSOLの強みでもありますから、コミュニケーション能力を発揮して仕事をしたいと思っている人はもちろん、得意ではないがコミュニケーションの重要性をきちんと理解している人に来てほしい。私たちが考えていることを理解して、同志になってもらい、共に同志を増やしていきたいですね」
22年6月の社長就任から2年。最初の1年は先述の通り、社員との相互理解に努めた。
「皆と信頼関係が築けたと感じたので、今年からいろいろなことを試行し始めました。これからは少しずつスピード感を上げていきながら、私のやるべきことを皆と議論を重ねながら一つでも二つでも形にしていくつもりです」と抱負を語る。実は、一番やりたいのは「広く社会の役に立つ仕事をすること」だという。
「最近、思い至ったのは、業界全体や国全体など広い視野でのITの最適化です。これは、前職で公共分野のシステム開発に携わった経験で得た手応えが基になっています。ITのプラットフォームを整備して電気・水道・ガスと同じように多くの人が使える状態に持っていく。このことを広く働きかけていきたい。私自身の壮大なチャレンジのスタートポイントです」
会社概要 設立 2006年7月 資本金 50億円 売上高 447億円 本社 東京都千代田区 従業員数 1,300人(2023年4月末現在) 事業内容 ITコンサルティングやシステム企画、構築・運用などトータル・ソリューションの提供 https://www.jsol.co.jp/ |