経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

自然素材とIoTによる未来の家 3Dプリンターハウス販売へ 瀬口 力 Lib Work

Lib Work 瀬口力

ハウステックカンパニーのLib Work(リブワーク)が、かねてから研究・開発していた3Dプリンターハウスのモデルハウスを完成させた。自然素材とIoTを活用した未来型の住宅で、2025年から一般販売を予定している。(雑誌『経済界』2025年1月号「躍動する九州」特集より)

Lib Work 瀬口力
社長 瀬口 力 せぐち・ちから

2025年2月に本格モデルハウスが完成予定

 競合他社とは一線を画したデジタルマーケティングを駆使する集客で成長著しいハウステックカンパニーのリブワーク。24年1月、かねてより研究・開発を続けてきた3Dプリンターハウスのモデルハウス「Lib Earth House〝modelA〟(リブアースハウスモデルエー)」を完成させた。

 本社に近いセカンドオフィス「リブワークラボ」の敷地内に建つ〝modelA〟は実験棟の位置付けで、延べ床面積15㎡の円形平屋建て。木造の骨組みに、円形の外壁を建築用3Dプリンターでプリントした。工期には木工に2週間、外壁プリントに延べ72時間、その他の工事も含めて合計3カ月をかけた。

 3Dプリンターと聞くと短い工期や建築コストの安さを想像しがちだが、リブアースハウスはその点は訴求しない。瀬口社長は「サーキュラーエコノミーの観点から、自然素材とIoTを活用した地球にやさしい未来の家がコンセプトだ」と語る。

 実際に、〝modelA〟の外壁は75%が国産の土によって作られており、この他、石灰やセメント、わら、もみ殻を混ぜ合わせている。また、玄関ドアには顔認証で開閉する自動ドアを採用した。現在は素材の強度テストや内部環境の調査を実施している。

 これとは別に、同年9月には本格的なモデルハウスである〝modelB(モデルビー)〟にも着工。延べ床面積約100㎡でリビング、ダイニング、キッチンのほかトイレやバス、居室も設けて24年度の完成を目指す。外壁は土の割合を60%に抑えるが、その他の材料の配分を工夫することで、10倍程度まで強度が増す見込みだ。また、太陽光発電の利用で、使用電力の全てを賄うエネルギー自立型の住宅になるという。

 25年4月以降には一般販売する考えで、併せてプリンターの導入支援から使用方法の指導、プリントのためのデータ準備までをまとめて工務店や住宅会社に提供するFC事業も計画中。3Dプリンターハウスの普及に力を入れていく。

 瀬口社長によれば、3Dプリンター建設の世界市場は、200%を超える年平均成長率が続き、30年で1兆6175億ドルになると予測されている。同社にも既に、海外での3Dプリンターハウスの開発案件が持ち込まれているという。瀬口社長は「将来的には、3Dプリンターハウス事業が当社の売上高の8割を占める主力に発展するのではないか」と期待を寄せている。

中期経営計画2年目は売上高180億円を目指す

3Dプリンターハウスのモデルハウス
3Dプリンターハウスのモデルハウス

 足元では26年6月期まで3カ年の中期経営計画「NEXT STAGE 2026」が進行中だ。最終目標として、計画開始直前の23年6月期比で、売上高は倍増の285億円、営業利益は約10倍の30億円を目指す。

 中計1年目の24年6月期は、売上高が前年比8・8%増の154億3517万円、営業利益は同65・7%増の4億9580万円となり、瀬口社長は「まずまずの結果だった」と語る。

 2年目の25年6月期は、売上高16・6%増の180億円、営業利益61・4%増の8億円を目指す。キーポイントとなるのが、工務店向け営業支援ツール「マイホームロボ」の拡販だ。

 マイホームロボは、AIを活用し、施主の要望の聞き込みや設計プランの作成といった初期提案の準備を5分で済ませることができるツール。24年6月末時点で中規模工務店を中心に49社に導入されている。

 現在、同ツールには約7千種類の設計プランがデータベース化されている。さらに約3千種類を追加し、合計で約1万種類まで増やすことを計画している。

 「約1万種類のそれぞれで方角や向きを変えることで、実質的には約4万種類のプランが蓄積されることになる」と瀬口社長。プランの蓄積が増えることによる機能の充実を追い風に、25年6月期中に200社への導入を目指す。

 

地域の住宅会社を大手、新興に継ぐ第三極に

 住宅業界のプレーヤーは主に全国に展開する大手グループと、新興グループに分かれる。これに加えてローカルで展開する優良な地場住宅会社が各地に割拠している。

 リブワークが展開していく3DプリンターハウスのFC事業やマイホームロボ事業、IPライセンス事業の拡販は、各地の地場住宅会社のネットワーク化にもつながる。瀬口社長はそのネットワークを「大手、新興に継ぐ第三極としてまとめたい」と意気込む。 

会社概要
設立   1997年8月
資本金  13億2,150万円
売上高  154億3,517万円
本社   熊本県山鹿市
従業員数 347人
事業内容 ウェブマーケティングを特色とした戸建て住宅の企画、施工、販売、3Dプリンターハウス事業、プラットフォーム事業
https://www.libwork.co.jp/