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プロ相手にレッスンを始めた時、まさに浦島太郎状態でした 内藤雄士

内藤雄士 ツアープロコーチ

ゲストは、国内のツアープロゴルフコーチの草分けとして、数多のプロ選手のツアー優勝やプレー   技術の向上をサポートしてきた内藤雄士さん。日本のゴルフ界にレッスンの重要性を啓蒙し、ゴルフ練習場に新しい文化を根付かせてきました。ゴルフ界の展望を含めて語り合いました。似顔絵&聞き手=佐藤有美 構成=大澤義幸 photo=川本聖哉(雑誌『経済界』「燦々トーク」2024年6月号より)

内藤雄士 ツアープロゴルフコーチのプロフィール

内藤雄士 ツアープロコーチ
内藤雄士 ツアープロゴルフコーチ
ないとう・ゆうじ 1969年東京都生まれ。日大ゴルフ部在籍中に米国にゴルフ留学し、最新の理論を学ぶ。帰国後、ゴルフ練習場のハイランドセンターでプロ相手にレッスンを開始。丸山茂樹プロのツアー3勝などをサポート。ゴルフアナリストとしても活躍中。

コーチ兼社長として、人気のゴルフ練習場を経営

佐藤 内藤さんが三代目社長を務める東京・杉並の住宅街にあるゴルフ練習場・ハイランドセンターは、東京オリンピックが開催された1964年の設立ですね。どなたが設立されたのですか。

内藤 祖父が父親と一緒に立ち上げたものです。2階建てで打席数が70以上もあるので、当時、平日日中の利用を増やすために母親が中心となってカルチャースクールをつくりました。杉並区主催のゴルフレッスンなども開講し、半年学ぶとスクランブルプレーが、1年後にはストロークプレーができるメニューを組んでいたそうです。ジュニアスクールもいち早く始めていて、現在も若手の育成に力を入れています。

佐藤 私は内藤さんと同じ区立高井戸中学校出身で子どもの頃はこの近所で育ちましたが、うちの母親もそのレッスンを受けていました。

内藤 ご縁がありますね。佐藤社長がゴルフを始めたきっかけは。

佐藤 19歳の時に弊社創業者の父親がゴルフバッグを買ってきて、小金井カントリー俱楽部でデビューしたのが最初です。練習なしで臨み空振りばかりで、「手の5番」を父親に教わりました(笑)。ここ10年ほど社長業専念のためにしばらくゴルフから離れていましたが、数年前に再開してからゴルフ仲間も増え、今は楽しくて仕方ありません。

内藤 ゴルフは最初が肝心で、怒られたり、しっかり打てないと嫌になり止めてしまいます。でも、一度好きになったらケガや環境が変わらない限り続けられる。佐藤社長がゴルフを今も続けているのは、お父さまのおかげですね。

日本で初めてプロ選手向けゴルフレッスンをスタート

佐藤有美と内藤雄士
佐藤有美と内藤雄士

佐藤 他の練習場にはないハイランドセンターの魅力として、多くのティーチングプロがいることが挙げられます。内藤さんご自身がレッスンを始めたのは、学生時代の米国のゴルフ留学後ですよね。留学で気づきがあったのでしょうか。

内藤 はい。帰国後にまず違和感を覚えたのは、日米のレッスン文化の違いでした。米国ではプロ選手もレッスンを受けますが、日本では初心者がゴルフのイロハを習うためのもので、上手な人ほど「私がなぜ今さらレッスンを受けなければならないの?」となります。しかし、日本でもレッスン文化があればプロ選手ももっと上達するはず。これを広めたいと考え、優秀なティーチングプロを雇用しました。また練習場にも最新のカメラやライトなどの設備を導入した日本初のインドアのシミュレーションゴルフを設えました。

佐藤 プライドの高いプロ選手を相手にレッスン文化を根付かせるのは大変だったのでは。

内藤 そうですね。当時はスイングという言葉も通じませんでしたから(笑)。逆に「そんなことを言っているから上達しないんだ」とか、動画を撮影していると「ビデオは二次元だろ。ゴルフは三次元だよ」とプロ選手から怒られました。まさに浦島太郎状態で、日本でティーチングプロの必要性を訴えても同意が得られず、教えるのを止めようか悩みました。それでも私が少し教えると皆上達するので、周りのプロ選手たちがアドバイスを求めてくるようになり、それに応えていました。

佐藤 それでご自身の教える才能に気づいた。その後、内藤さんは1998年にツアープロゴルフコーチとなり、3年後には丸山茂樹プロのツアー3勝や、数多くのプロ選手の優勝などの実績を残されています。

内藤 丸山プロが、「技術が上がるほど会話が成立しにくくなる。例えば父親に相談はできても、技術的な理論を踏まえたアドバイスは得られない」と話しています。私は技術的にも理論的にも説明できます。プロ選手に正しく教えれば上達スピードが上がり、逆に間違ったことを教えればつぶれます。相手にとって必要なことを教えられるかが大切です。

佐藤 教える相手がアマチュアの場合はいかがですか。

内藤 事前のカウンセリングとスイング動画の撮影は欠かしません。これは教える相手に見せるためです。私はレッスンの時間内に相手が集中できるピークを想定し、そこに向けて技術的な積み上げと自信の積み上げをしていきます。これらが重なるとナイスショットが生まれます。

佐藤 自信を付けさせるには、基本は褒めることですよね。

内藤 叱られても誰もポジティブにはなりませんからね。ティーチングプロに求められるのは、アマチュアのナイスショットをダメと言って、ミスを良いと褒められるか。例えばスイングを変えたい人がいる時に、本人は恥をかきたくないからと普段のスイングをしがちです。当然ボールは普段通り飛びますが、それをダメと言えるか。スイングを変えると違和感が出て不安になり、ミスショットが増えますが、本人が意識して変えていることを褒められるか。したがって教える側にも、今はダメでも数分後にナイスショットを打たせる自信があるかが問われます。褒めるべきところを褒めて楽しんでもらえれば、次回も練習に来てくれます。

佐藤 ゴルフコーチの醍醐味ですね。

内藤 そうですね。団塊世代のリタイアでゴルフ離れが懸念されていましたが、コロナ禍を経て若いゴルファーが急増しています。今後はプロを教えながら、講演会などでアマチュアとの接点も増やしていき、ゴルフの楽しさを伝えたいですね。

内藤雄士 イラスト