経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

不動産管理にDXを実現し北海道から業界向上に挑む 朝倉 渉 CHACHACO

CHACHACO 朝倉渉

2021年設立の不動産会社CHACHACO(チャチャコ)は、本業の傍ら、業界が抱える課題の解決に寄与する不動産管理システムの開発に挑む。北海道生まれのスタートアップとして、活気溢れる企業を率いる代表の朝倉渉氏に聞いた。(雑誌『経済界』2025年4月号地方特集「たぎりたつ北海道」より)

CHACHACO 朝倉渉
CHACHACO 代表取締役CEO 朝倉 渉 あさくら・わたる

不動産管理を変えていく業界への強い思い

 2025年内に不動産管理システム「HungryManagers®(ハンマネ)」の開発およびリリースを予定しているのが、札幌市中央区で不動産業を営むCHACHACO(チャチャコ)だ。

 代表取締役CEOの朝倉渉氏は、不動産業界で15年経験を重ね、21年に同社を設立。不動産開発・流通を本社で行い、管理業は専門のグループ会社を立ち上げ、そこで行う二極体制を取った。そこには朝倉氏の経験からの思いがあった。

 「資格が必要とされない不動産管理業は参入障壁が低く、サービス品質が玉石混交です。業務の理解が浅いまま参入し、利益を出そうと社員一人当たりの案件数を増やした結果、ろくに物件の管理がなされていないということも起きており、オーナーさまに良くない状態だと忸怩じくじたる思いを抱えていました」

 同社は管理スタッフ一人当たりの担当戸数を制限し、入居時の立ち会いや室内修繕の迅速化などを実現。物件の収益性を高めるため、空室対策会議を設けてオーナーへのキャンペーン提案なども行っている。また、管理業務がほとんど発生しないなど、条件を満たした月の管理費を無料とするサービス「ZERO円管理」といった、これまでの業界にはない取り組みも始めた。

 「管理のプロとして、オーナーの利益を最大限に引き上げるサービスを提供することで、業界のレベルを高めていきたいと思います」

DX化で管理負担を減らし人材育成にまで結び付ける

 ハンマネが生まれるきっかけは「管理スタッフの負担を減らすため、業務を効率化したい」という思いからだった。「既存の業務管理システムにしっくりくるものがなかったので、自前で作ろうと、知人のシステム会社に依頼したのが始まりです。打ち合わせする中で『これは他社も使える有用なものになる』という予感があったため、早い段階で外部公開を見据えた開発に切り替えました」と朝倉氏は振り返る。

 システムは自社の業務で実際に使用して検証。改善を重ね、23年にシステム開発部門を独立させ株式会社HANMANEを設立した。

 「当初はシンプルなシステムを想定していましたが、『こう使えるようにすればもっといいものになる』というのが見えてきた。グループで出た利益を開発費に投資し、2年半かけて形にしました」

 ハンマネは物件・オーナー・入居者情報の集約や、入退去・清掃点検・修繕など日常業務の管理、入金管理やそれに伴う督促などを一つのシステムで行うことができる。また、日常業務の記録を続けていけば、管理情報も含め、売却シミュレーションや借り入れ状況確認などオーナーに有益な情報を加えた報告書の自動生成も可能だ。省力化だけでなく顧客サービス品質の向上にもつながる。

 さらにハンマネには、特筆すべきもう一つの特徴がある。それが人材の教育に役立つ機能を搭載していること。業務ごとに管理工程がデフォルトで登録されており、入居日・退去日などを設定すれば、それまでにしなければならない作業を逆算してスケジューリングし、アラートも設定される。これにより新人スタッフは、期限までにやるべき業務が可視化され、業務の流れを覚えることができる。

 このアラートは同僚・上司・経理・社長などに送ることもできるので、チーム管理もしやすい。「『報・連・相』が苦手な人が増えていると聞くので、教育担当者や上司が必要な情報を漏れなく得られる仕組みを考えました」と朝倉氏は説明する。

オーナーに寄り添う管理を業界全体へと普及する

 開発中、システムの洗練のため、朝倉氏はCPM(IREM認定不動産経営管理士)の資格を取得した。その学びの中で、認識を新たにしたことがあるという。

 「不動産管理の目的は、入居率の向上だと思っていました。しかし、真の目的はオーナーの目標の達成であり、空室を埋めるのは手段の一つに過ぎません。ずっと持ち続けたいのか、いつか売りたいのか。その目標に向けて管理すべきなのです。今、管理業界は広い不動産業界の片隅に追いやられ、業界全体のモチベーションも低い。しかし、オーナーに最も寄り添えるのは管理会社です。私たちは一つ一つのサービスをもっと真剣に考え、改善に取り組まなければなりません」

 将来的には、ハンマネによる変革を不動産管理業だけでなく、不動産賃貸業にも広げていく方針がある。空室検索サービスと一体化することで、不動産免許を持つ管理会社であれば賃貸契約までを担えるようにするという構想だ。

 「物件の詳細な情報を持つのも、入居者の動きをいち早くつかむのも、オーナーの意向を知っているのも全て管理会社です。DX化により、ウェブで物件を探す人とオーナーをつなぐ役割を管理会社は担えるはず。これにより業界が大きく変わっていくのではないかと考えています」

 24年12月、東京ビッグサイトで開催された「不動産テックEXPO」にハンマネを出展したところ、多くの引き合いを得たほか、異業種からの問い合わせもあったという。サービスを軸に新たな人脈形成を図りつつ、北海道からDXで不動産業界に革命を起こしていく。 

会社概要
設立   2021年9月
資本金  1,000万円
売上高  4,116万円
本社   北海道札幌市中央区
従業員数 7人
事業内容 不動産企画開発事業、不動産仲介事業、不動産買取再販事業
https://chachaco.co.jp/