国土交通省の交通政策審議会は4月、首都圏の鉄道網充実に向けた答申を16年ぶりにまとめた。羽田、成田両空港への交通アクセスを改善する路線など24事業を優先度の高いプロジェクトとして選定。首都圏の国際競争力を高める方針を前面に押し出したが、いずれも多額の事業費が想定されるなど、実現までには曲折が予想される。
答申に向けた議論は2014年から始まった。答申では現状分析について、首都圏の都市鉄道のサービスが世界的にも高水準である一方、近年は訪日外国人旅行者数の増加や20年の東京オリンピック・パラリンピックの開催を踏まえ、空港アクセス改善や混雑緩和などの観点でさらなる取り組みが必要とした。
優先度の高いプロジェクトのうち、国際競争力強化に向けては8事業を選定。東京都心や臨海部と羽田空港を結ぶ「羽田空港アクセス線」のほか、東急多摩川線の延伸で京浜急行線とつなぎ、東京西部からの接続性を高める「蒲蒲線」、成田空港とつながる京成線の押上と羽田空港から乗り入れる京急線の泉岳寺をつなぎ、東京駅近くに新東京駅を新設する「都心直結線」などを盛り込んだ。また、新宿、横浜両駅を国際競争力向上の拠点駅と位置付け、東京オリンピック・パラリンピックまでの案内表示の充実や災害対策強化を求めた。リニア中央新幹線での整備が予定される品川や橋本(神奈川県)などを広域ネットワークの拠点駅に位置付けた。
一方で、答申は整備に向けた課題も浮かび上がらせた。「意義がある」とされたプロジェクトの中でも、「トンネルや駅等の施工条件を考慮する必要がある」(都心直結線)「検討塾度が低く構想段階」(都心部・臨海地域地下鉄)と課題を指摘されたプロジェクトも少なくない。
00年答申で示された事業化の優先順位も今回は見送られており、各プロジェクトが実現するかは、今後具体化していく費用負担や採算見通しなどの議論に委ねられそうだ。
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