石井啓一国土交通相は1月上旬の閣議後会見で、2016年の訪日外国人旅行者数が前年比22%増の2403万9千人だったと明らかにした。4年連続で過去最高を更新し、石井国交相は「この勢いを持続したい」と胸を張ったが、中国の景気減速などを背景に年後半は伸び悩んでおり、20年に年間4千万人という政府目標の達成は一筋縄ではいかなそうだ。
訪日客数が大幅に伸びたのは、航空便の新規就航や増便、クルーズ船の寄港増などが寄与。政府もビザ緩和や消費税免税制度の拡充などで環境整備を進めた。官民一体で実施した訪日プロモーションも奏功し、中国や韓国からの客数が堅調に伸びたほか、東南アジアからの旅行者も増えた。
今後の取り組みについて石井国交相は会見で、国立公園など公的インフラ施設の開放や古民家の活用のほか、宿泊業や旅行業、また通訳案内士にかかる規制制度の見直しや民泊のルール整備。欧米、豪州の富裕層などをターゲットにした戦略的な訪日プロモーションの加速などを挙げ、「さまざまな施策を実行する」と意気込みを見せた。
ただ、先行きの見通しは厳しい。16年も直近の円高や中国の景気減速が足を引っ張り、1月に52%だった伸び率は7月以降、10%台に低迷。通年平均も47%増だった15年に比べ大幅に鈍化した。政府目標の達成には、15年実績を基準に毎年15%増のペースを維持することが必要となる計算だが、これまでの大幅な伸びへの上乗せは容易ではなく、旅行大手のJTBも17年の訪日客数を2700万人として、小幅な伸びにとどまると予想している。
こうした背景もあって、会見では記者から「今後はどうやって伸ばすのか」「このペースは順調という認識なのか」などの質問が相次いだ。日本旅行業協会の田川博己会長も「ラグビーのワールドカップ開催前の18年に、最低でも3千万人をクリアする必要がある」と述べ、政府に環境整備の加速を求めた。
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