会員制ホテルなどを展開するリゾートトラストは4月1日付でトップが交代し、創業者の1人である伊藤與朗会長は代表取締役ファウンダーグループCEOに就いた。共同創業者の伊藤勝康社長は代表取締役会長CEOとなった。伏見有貴副社長は代表取締役社長COOとなり、創業45年で初めて代表取締役3人体制となった。聞き手=榎本正義 Photo=佐藤元樹
伏見有貴・リゾートトラスト社長プロフィール
リゾートトラストの次の事業テーマは「健康」
―― 社長就任の抱負と、3人の代表取締役の役割分担について聞かせてください。
伏見 グループの全体最適を見据えた経営戦略は伊藤グループCEOが、リゾートトラスト自体の経営戦略は伊藤会長で、執行の責任は私が担っていくことになります。創業者2人のカリスマ性やリーダーシップをどれだけボトムアップの組織力に作り替えて行けるか。会員権事業を核に、ホテルレストラン事業、メディカル事業をはじめ幅広い領域で事業を展開し、それぞれのブランドは育ってきています。今後はそれらの連携を図っていきます。その意味で、いろいろな部門を担当してきた私のキャリアが役立つと思っています。
―― 日本にリゾート文化を根付かせるという目標は達成されました。次に目を向けているテーマは健康ですね。
伏見 現在グループ会員数は17万人を突破していますが、ホテル、ゴルフ、メディカルなど、それぞれの事業が独立しすぎていると感じていました。そこでメディカルを横串にしてシナジーを発揮し、顧客満足度を高めたい。
―― その具体的な方策は。
伏見 当社の会員の方々は、企業のオーナーや富裕層が多い。若い時は家族で楽しみ、その後は夫婦で、さらにお孫さんと一緒にというように、各世代のニーズに合ったリゾート施設を作ってきました。
共通しているのは皆さん健康への意識が高いことです。会員制リゾートホテルも45年続けてきて、創業当時の会員は高齢になり、元気な方でも使い方が相当変化しています。会員権事業以外のサービスでは、ホテルレストラン事業、メディカル事業、ゴルフ事業、シニアライフ事業などを展開しています。
メディカル事業の検診/健診関連サービスで言うと、精密検査レベルの検査・診断事業を行う最高級会員制検診ブランド「グランドハイメディック倶楽部」の会員数は約1万8千人、一般・企業・個人向けの健康診断を行うプレミアム健診ブランド「ミッドタウンクリニック」の受診者数は約6万人、スタンダード健診ブランド「進興会」の受診者数は約45万人です。グループ17万人超の会員の家族や法人の従業員を含めると、500万人規模のビジネスが見えてきます。
グループシナジー発揮の方策としては、例えば既存の会員がグループの別のサービスを利用するとき、特典優待を得られるようにし、利用を促すような仕組みにする。またメディカル事業では前出の3種類の検診/健診ブランドを揃えた施設がありますが、この手法をセットでおすすめする。会員制ホテルの隣に高級老人ホームを併設し、新しいシニアライフの提案をするといったことです。
こうして各会員の深掘りと横展開で、当社のコンテンツを生かして一生涯を通じてお付き合いしていただけるグループになることを目指します。
伏見有貴・リゾートトラスト社長の経営哲学とは
―― 4月に発表した2022年度までの中期経営計画「Connect50」については。
伏見 「ブランドの強化・浸透」を掲げ、23年3月期に2100億円の売上高を目指します。18年3月期に比べて2割強の増加になります。コネクトはつなぐということ。会社とお客さまをつなぐ。お客さま同士をつなぐ。社員同士をつなぐ。グループのコンテンツをつなげることで、付加価値をどれだけ高めて行けるかがポイントになります。
―― 各地でバブル期の再来のように、リゾート開発も活発とのことですが。
伏見 これまで会員制リゾートは絞り込んだターゲットに向けたもので、当社の他にもいくつかありますが、あらためて注目が集まっています。当社の会員権事業はベイコート中心の現状から、エクシブおよび新商品もバランスの良い販売へシフトし、着実に会員増加を図ります。ホテルレストラン事業では、ホテルトラスティの展開加速と既存サンメンバーズ施設のリノベーションを中心に一般向けの収益基盤を強化します。メディカル事業は、グループ会員やその周辺への認知度向上を基に、さらなる事業拡大とソリューションの提供を実現し、日本一の総合メディカルソリューショングループを目指します。
―― 14年に米国で買収した「ザ・カハラ・ホテル&リゾート」は、一般客も予約できる高級ラグジュアリーホテルですね。
伏見 カハラブランドのホテルは20年に横浜市で開業予定で、海外ではタイやインドネシア、シンガポールなどのリゾート地で展開を検討しています。19年度以降に海外のホテルも利用できる「インターナショナル会員権」を販売する計画で、外国人でも購入できるようにしてインバウンド需要も取り込みたい。
―― 課題があるとすれば。
伏見 会員制リゾートということで顧客満足にこだわるあまり、一部社会の変化に乗り遅れた面はあるかと思います。例えば、顧客は高齢者層も多く、デジタルは適さないだろうという思い込みからデジタル化が遅れたためか、会員にいつも満室というイメージを与えてしまい、せっかくの利用機会を奪ってしまうことなどです。リアルタイムで「今日はご利用いただけますよ」とお伝えする仕組みがまだ足りません。
また、施設を使いたいと思っている会員で、年間15泊利用できる権利をお持ちで8泊余っているのであれば、「こう使いましょう」と提案するだけでも伸びしろはあります。今後は一昨年から取り組んできた会員向けスマートフォンアプリを下期から導入し、お客さまへ細かなフォローをしていきます。当社は商品ラインアップが多いので、放っておくと会員規則やお客さまの商品選択の判断が複雑になる傾向があります。いかに分かりやすくしていくかもテーマです。
―― 経営哲学は。
伏見 不易流行――変わってはいけないことと、変えるべきことを常に意識しています。新規事業では、天の時、地の利、人の和。この3つが揃って初めて事業は進んでいくと思っています。
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