経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

ホテル事業の原点に立ち返りさらなる成長に向けた改革を断行–ミマコーポレーション

2020注目企業38

 さまざまな分野で既存の常識が通用しなくなりつつある昨今、かつて隆盛を誇ったレジャーホテル業界にも変革の波が押し寄せている。時代の変化に対応した経営ができるかどうか、生き残りに向けた各企業の姿勢が問われている。(『経済界』2020年4月号より転載) 

美馬辰也氏

ミマコーポレーション社長 美馬辰也(みま・たつや)

 

環境の変化に対応して自ら改革に取り組む

 きらびやかな装飾が施され、華やかな雰囲気を醸し出していたレジャーホテルは、以前は若者たちの憧れの場所だった。しかし、時代の移り変わりとともに嗜好は変化し、カラオケやテーマパークなど娯楽の多様化もあって業界の縮小傾向に歯止めがかからないのが現状だ。

 現在、国内で21軒のレジャーホテルを運営するミマコーポレーションの美馬辰也社長は、業界のオピニオンリーダーとしてそうした状況に警鐘を打ち鳴らしている。

 「若者のレジャーホテル離れという流れを踏まえ、われわれは大きく変化する必要があります。今までと同じことをやるだけでは、時代に取り残されるのは間違いありません」と危機感を募らせるとともに、自ら先頭に立って業界の変革を進めていこうという使命感に駆られている。

 ホテルへの来客数自体が極端に落ち込んでいるわけではないが、客単価の下落は既に限界にまで来ているという。昨今、国を挙げて推進されている働き方改革も人件費の上昇につながっている。リネン類や消耗品コストの上昇なども経営を圧迫する大きな要因だ。

 ただ、美馬社長はこうした状況をある意味でチャンスと捉えている。

 「景気の良いときは、なかなか変化しようという気持ちにはなれません。厳しい状況にある今こそ、変化を遂げる良いきっかけになります」

 これまでの常識を打ち破るような経営といっても簡単ではない。それでも、同社では少しずつ新しい試みに着手している。

 その一つが、立地戦略の見直しだ。2018年にオープンした「チャリチョコ」「マリンブルー」という2つのホテルは、いずれも池袋駅から至近という好立地で、学生が多いという土地柄もあって大いに活況を呈しているという。

 「やはり、市場と立地が重要です。地方は地方で、娯楽が乏しいという面では一定の集客効果があります。それでも、今後は若者が集まる都市部を重視したいと思います」

 また、今年は東京オリンピック・パラリンピックの開催を機に、例年以上に数多くの外国人観光客が訪れるため、そちらへの対応も急務だ。

 「今のところ、観光目的の利用は東京の主要ターミナル駅である池袋駅周辺の店舗でもまだ10%程度ですが、オリンピック期間中はこれが数倍になると予想しています。外国人観光客はレジャーホテルだからといって偏見を持たないので、ツイッターなどのSNSなどを通じてリーズナブルな価格や広い室内、豪華な設備などレジャーホテルの良さを世界に向けて発信してもらえる可能性も期待しています」

新たな投資で次なる成長を目指す

 客単価の上昇に向け、女子会をはじめとするパーティーユースなどの拡大にも積極的に取り組んでいる。そのために欠かせないフードメニューの充実についても、柔軟な姿勢を見せる。

 「これまで、料理を充実させるためにいろいろと知恵を絞ってきました。しかし、最近ではUber Eatsなどの便利なサービスが登場し、おいしい料理をネット経由で注文することができるようになりました。そんな他社のサービスを活用する、というのも選択肢の一つです」

「ホテル マリンブルー」(東京都豊島区)

若者にも人気の「ホテル マリンブルー」(東京都豊島区)

 同社の運営するホテル自体は、現在も比較的堅調だというが、中長期的に見るとやはり新たな投資が必要になってくる。

 「当社のホテルも、その大半はバブル景気の前後に建設されたもので、既に30年ほど経過しています。リニューアルを繰り返しながら営業してきましたが、今後の成長のためには新たに駅近くの土地を購入して新築のホテルを建設する、といった戦略も必要になるでしょう。オリンピック以降の景気動向は不明ですが、タイミングを見ながらで仕掛けていきます」

 そして、成長に向けたヒントとして海外にも目を向けている。平均年齢が若い東南アジアの国々への進出を検討するが、そのためにも足元の国内のホテルをしっかりと立て直す必要があるという。

 「帰り際に『またこのホテルに来たい』と思ってもらえるかどうか、私が良いホテルだと考えるポイントはその一つだけです。レジャーホテル、シティホテルといった枠を超えて、そう思ってもらえるようなホテルづくりに業界全体で取り組んでいきたい」

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会社概要
設立 2002年12月
資本金 1,000万円
売上高 11億円
従業員数 100人
事業内容 ホテル管理業務・人材育成および営業指導、
新築・改築相談、市場(立地)調査、事業計画書作成・経理事務代行
http://www.mimacorp.co.jp/
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