経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

製造業から社会価値を創出するソリューションプロバイダーへ―JRC


ベルトコンベヤ部品の製造販売で創業60年を迎えたJRC。国内で50%以上というトップシェアを占める同社には、製造業の域を超え、ソリューションプロバイダーとして時代に適応するべく、変化し続ける企業姿勢があった。

JRC 社長・浜口 稔
JRC 社長・浜口 稔(はまぐち・みのる)

事業の主流は製品販売からソリューションサービスへ

 大型ベルトコンベヤの部品を製造販売してきた同社は、鉄鉱石や石灰石など、主に原料の大容量搬送を必要とするセメント、生コン、製鉄、アスファルト、土木、水処理、リサイクルといった社会の基盤を支える企業や自治体をユーザーとしている。同社のような部品メーカーは国内でも7~8社といわれるニッチな業界で、企業の永続を見据えた浜口稔社長は、長きにわたって積み重ねてきた技術と経験を元に、ソリューションプロバイダーへの変革を行った。

 今までの営業活動といえば、商社を通じた製品の販売が中心で、ユーザーの現場を直接訪問する機会はまれであった。良質な製品を量産し提供することでシェアを順調に拡大してきたが、将来にわたってユーザーに、ひいては社会に選ばれ続けるには新たな付加価値の創出が不可欠であった。

 そこで浜口社長は、商流はそのまま変えずに、ユーザー訪問を始める。現場を見て話を聴くことで、どのような課題や困り事があり、従来の標準品ではどこに不便があるのかなど、生の声を得ることができた。

 個々に伺っていくと気付いたことがあった。ユーザーはベルトコンベヤに課題や問題点は感じているものの、「そういう設備だから仕方ない」という認識が少なからずあったことだ。調査や質問をするうちに、ユーザーの盲点となっていた問題を発見できた。顕在化している困り事を解決するのは当然のこと。一次情報に触れることで鮮明に浮かび上がった課題に対し、仮説を立てながらより発展的な提案ができることは大きな付加価値であった。

 ユーザーのベルトコンベヤが役目を最大限に果たし、さらに生産性・安全性を高めるよう、培ってきたノウハウで課題を解決し提案するソリューションサービスを始めたことで、「現在は製品販売よりもこうしたソリューションサービスがメーンになっている」(浜口社長)という。ソリューションによって開発された製品は、従来の標準品よりも数倍の価格になるが、それ以上の生産性向上やコスト削減といった価値が見込める。ユーザーにも代理店にも喜ばれる、メーカーだからこそできるサービスだ。さらには現場情報の蓄積によって共通の課題が浮かび上がるため、準標準品としての水平展開も可能となった。

「ありがとう」と言われるやりがいある仕事を

 今でこそ営業と設計部隊が現場に出向き、課題解決に取り組んでいるが、当初は社員にも迷いが見えたと浜口社長は振り返る。

 「今まで訪問したことのないユーザーに対する営業の切り口・課題解決の手法が分からず、手探りの部分もあったようです。しかし困り事を解決し、『ありがとう』の声を直接頂けることは、大きなモチベーションにつながったようです」

 今までのスーツにネクタイという営業スタイルが作業着での営業に。数字を追い求めるだけではなくお客さまにどう喜んでいただけるかを考え、製品が現場でどう役に立っているかを目の当たりにした社員の目の色が変わっていったという。

顧客価値提供の視点で社会に貢献し続ける企業に

 「スター社員が数人いる会社より、普通の人がたくさん働ける会社にしたかったのです」。早くから工場の自動化を進め、人でしかできない仕事に注力できる環境にシフトしてきた。「もっと自由で働きやすい会社にすることを考えてきました」。同社にとって技術力や提案力は強みだ。しかし、「実現したいという気持ちが一番大切。技術はどこからでも集結できる。気持ちがなければ始まらない」という。時間をかけて働くことが仕事ではない。同社では、人や社会に役立つことを仕事と捉えている。

 同社がソリューションカンパニーに変革できたのは、製品にとらわれることなくお客さまへの価値提供にフォーカスをシフトさせたから。すでにソリューションから生まれた新たな事業が立ち上がっている。ロボットSI(システムインテグレート)、中小製造業をはじめとする労働力不足に直面するラインで「人の代わり」として利用可能なロボットシステムの開発だ。大手製造業へのロボット導入が進む一方で、操作教育、設置場所、コストなど、中小企業にはまだハードルが高い。同社はこの点に着目し、多品種少量で現場のパート社員でも扱えるロボットを開発し、日本の課題である労働力不足の解消に挑んでいる。

現場課題と技術から生まれた生産現場自動化ロボットシステム・装置

 「ベルトコンベヤにこだわらず、現場や社会の最適化のために自社は何ができるか」。製造会社から社会に求められ続ける会社へ。ソリューションを起点に見据えているのは社会の未来だ。

会社概要
設 立●1961年4月
資本金●8,000万円
本 社●大阪市西区
従業員数●300人
事業内容●コンベヤ部品の設計・製造・販売● https://www.jrcnet.co.jp/
ロボットを活用した自動設備などの設計・製造・販売● https://rsi.jrcnet.co.jp/

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