わが国の成長戦略の柱の一つ「イノベーション」。この単語を目にしない日はありません。イノベーションを活発化し、世界と伍するスタートアップを生むべく、全国でさまざまな取り組みが進められています。
中経連においても、「イノベーションの活発化」を重点目標に掲げ、産学官連携の活動を展開しています。
2019年7月には、名古屋市と共に同市栄にあるナディアパークに「ナゴヤ イノベーターズ ガレージ」(以下ガレージ)を開設し、新たなアイデアやビジネスを生み出すための仕掛けづくりとして、各種プログラムやイベントを開催しています。
中部圏の大学研究員が企業に対し、最新の研究内容を紹介するプログラム「アカデミックナイト」では、大学の技術シーズを起点に新規事業の創造や既存事業の革新を促すとともに、研究資金の源泉につなげるなど産業界との橋渡しを狙っています。
起業や新規事業開発、既存事業の画期的な改革を推進していく人材を育成するプログラム「ビヨンド・ザ・ボーダー」では、企業から複数のチームが参加し、専門家によるアドバイスを受けながら、経営課題の解決および社会価値創出のための戦略デザインプロセスを実践しています。
このほか、小中学生がデジタル技術に触れる、また社会の仕組みを学ぶプログラムなど、イノベーション人材の質と量を高めていくため、裾野の広い活動を展開しています。
開設から約3年で、延べ来場者数約6万3千人、開催イベント約900件を数え、認知は高まり、イノベーションに取り組む人材も増えてきました。一方で起業までの道のりは平坦でなく、メンターや先輩起業家による支援や、起業家同士が集い、交流することで熱量を高めていくさらなる仕掛けや、コミュニティ形成の場が必要と感じてきました。
そこで22年7月にガレージのフロアを1・5倍ほど拡張し、「たまり場」のような空間を設けました。スタートアップや企業の新規事業開発者、学生、メンターが集い、ワイガヤと意見交換しつつ、ビジネスプランのブラッシュアップや共創が進むことを期待しています。大学との関わりも一層強め、産学官連携により、「授業」から「事業」にステップアップできるよう注力していきます。
ガレージを起点に、人や技術、情報がつながり、中部圏全体でイノベーションが活発化し、世界をリードする新たな産業や、私たちの想像を超える新しい価値が生まれていくことを大いに期待しています。 (雑誌『経済界』2022年11月号より)