ゲストは、国内初の航空機シェアリングサービスを展開するエアシェア創業者の進藤寛也CEO。エアシェアは、稼働していない航空機のオーナー、パイロット、旅行者をオンラインでマッチングさせ、地域経済や観光産業に新しい風を吹き込んでいます。サービス誕生の背景や今後の展望について伺いました。似顔絵&聞き手=佐藤有美、構成=北川 宏 photo=松村賢斗(雑誌『経済界』2024年9月号より)
進藤寛也 エアシェア代表取締役CEOのプロフィール
日本初の航空機を使ったシェアリングサービス
佐藤 まずはエアシェアがどのようなサービスなのか、そして観光産業にどういった影響を与えるのか教えていただけますか。
進藤 エアシェアは、稼働していない航空機のオーナー、パイロット、旅行者の三者をオンラインでマッチングするサービスです。2016年に設立し、本社は北海道帯広市にあります。当初は国土交通省航空局から適法性と安全対策を認めてもらうのに苦労しました。このサービスが「新たな交通手段の一つになる」と自負していたので、諦めずに丁寧に説明したことでスタートできました。
佐藤 エアシェアのアイデアはどのようにして生まれたのですか。
進藤 私は20歳から航空業界に身を置いてきました。大学時代はグライダー部に所属し、そこで飛び始めたのがきっかけです。東日本大震災後に帯広に戻ってからも、帯広空港で社会人クラブに参加して飛行を続けていました。その頃、パイロットを育成するNPOを立ち上げる話が持ち上がり、プロのパイロットを育成するスキームを知り、実際にパイロットを育てることで、エアシェアにつながるアイデアが生まれました。
佐藤 航空機シェアリングサービスの具体的な仕組みは。
進藤 エアシェアは航空機のオーナーが所有するプライベート機を活用し、パイロットと旅行者をオンラインでマッチングします。日本には約700機程度のプライベート機が登録され、そのうち250機ほどが稼働していますが、その多くは有効活用されていません。その需要と供給を結びつけることで、新たな価値を提供しています。
佐藤 国土交通省とのやり取りで生じた苦労とは。
進藤 国土交通省航空局とのやり取りは大変でした。適法性の確認を得るまでに3年かかりました。航空法の厳格な規制をクリアしているかを確認するために根回しや調整が必要でした。初めは反対意見も課題も多かったのですが、最終的に適法であると認められました。
佐藤 エアシェアのサービスは観光産業にも影響を与えそうです。
進藤 その通りです。エアシェアは観光地やビジネスシーンにおける目的地へのアクセスを飛躍的に向上させます。従来のエアラインがカバーできない地域への直通需要を満たすことで、新たな観光需要を創出しました。特に地方の観光地や過疎地へのアクセスが改善されることで、地域経済の活性化への寄与が期待できます。例えば、「ハイシーズン時に座席が取れない」「羽田を経由せずに目的地近郊の空港へ行きたい」といった際の便利で魅力的な移動手段となるでしょう。
佐藤 エアシェアを利用するメリットを教えてください。
進藤 まずオーナーにとっては、稼働していない航空機を有効活用できます。維持費を軽減し、収益を得ることができます。パイロットにとっては、技量を維持するための飛行時間を増やす機会を得られます。そして旅行者やビジネスパーソンにとっては、通常のエアラインが飛ばない地域へのアクセスが容易になります。また、プライベート機を利用することで、フライトの時間やルートの柔軟性が高まり、快適な旅を楽しむことができます。
日本版ライドシェアとは違う新たなカーサービスも開始
佐藤 今後の展望は。
進藤 現在、エアシェアに続く新たなサービス「DRIVA(ドライバ)」も準備中です。これはタクシーのように使える、車と運転手を別々に契約するシステムです。このサービスで地上交通にも新たな風を吹かせることを目指しています。レンタカーは借りても自ら運転するのは嫌だというニーズに応えるもので、観光地や過疎地での交通手段としての需要を見込んでいます。
佐藤 DRIVAの具体的な仕組みを教えてください。
進藤 DRIVAは、利用者がレンタカー契約と運転手の業務委託契約をそれぞれ行います。私たちはこれをオンライン上で一括してマッチングできるプラットフォームを提供します。利用者は車をレンタルし、運転手を選んで契約することで、快適に移動できます。このシステムは、地方の交通インフラが不足している地域で有効です。
地方の過疎地や観光地へのアクセス改善を目指す
佐藤 私も地方出張の際にタクシーがつかまらず本当に困ります。
進藤 既に北海道のニセコで実証実験が終了し、課題もしっかり取得できました。これをシステムにフィードバックして、あとは本格的に開始するだけです。来年にはスタートできると思います。
佐藤 最後に、会社としてどのような社会的なインパクトを目指しているのか教えてください。
進藤 エアシェアを通じて、交通手段の多様化と効率化を目指しています。地方の過疎地や観光地へのアクセスを改善することで、地域経済の活性化を図っていきます。環境面でも、既存の資源を有効活用することで、持続可能な社会の実現に寄与したいですね。私たちのサービスが、新たな交通手段として社会に定着し、多くの人々の生活を豊かにすることを目指しています。
佐藤 今日は貴重なお話をありがとうございました。今後のご活躍を期待しています。