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教員向けスカウト型求人サイトで教員不足の解決に貢献する 羽田良之 on-shi-on

on-shi-on 羽田良之

今年6月に教員向けスカウト型求人サイト「scouteacher(スカウティーチャー)」をローンチしたon-shi-on。学校で働きたい登録者に学校からスカウトが届くサービスを提供する。学校現場の人材不足の解消と、潜在的な教員人材の掘り起こしに挑む。(雑誌『経済界』2024年10月号・第2特集「グレート・キャリア・メーカーズ」より)

羽田良之 on-shi-on 代表取締役 

on-shi-on 羽田良之
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代表取締役 羽田良之 はだ・よしゆき

銀行から人材開発会社を経て高校の社会科教員を経験

 on-shi-onの羽田良之代表は、日本政策投資銀行に入行後、人材育成ベンチャーのプレセナ・ストラテジック・パートナーズに転職。国内・アジアで講師として6500人以上にビジネススキルを伝え、変革を促すファシリテーターを担ってきた。

 「銀行で国内外のM&A案件を担当する中で、日本企業はお金も技術も伝統もあるのに、人のマネジメントが弱いという課題を目の当たりにしました。その課題に取り組むために転職した人材開発会社では、一方的な講義ではなく、ワークショップ型の学びを通じて受講者の意識が大きく変わるのを何度も目撃しました」と羽田代表は話す。

 実践的で双方向の学びは社会人教育だけでなく、学校教育にこそ必要で、そこに大きな可能性と課題があると考えるようになり、再びキャリアチェンジを行った。

 まずは学校教育の現場を知るため、35歳を過ぎてから中高教員免許を取得。東京都内の複数の中高一貫校で計3年間、非常勤の社会科教員として勤務した。

 「教職課程では教員不足の課題について考える機会を得ました。もともとビジネスの現場にいた人間として、教員不足解消に貢献できるビジネスモデルをつくることが学校教育の充実につながると考えました」

 それが学校教育版のダイレクトリクルーティングサービス「scouteacher(スカウティーチャー)」だ。

私立学校を中心に教員と学校をマッチング

 スカウティーチャーは、教員ユーザーが無料で登録することができるシステムだ。学校ユーザーがフレンド申請を送り教員ユーザーに承諾されると、プロフィール情報を見てメッセージを送ることができる。

 教員ユーザーが、フルタイムの専任教諭、パートタイムの非常勤講師といった希望する勤務形態を指定することで、学校が勤務形態別に教員を検索することができるのも使いやすい。中でも特徴的なのは週間空きスケジュールの登録だ。

 「以前、非常勤講師として勤務した経験から、年度途中の欠員の補充では、時間割に合うかどうかがマッチングする上で重要だと分かりました。教員ユーザーが週間の空きスケジュールを登録することで、学校ユーザーはスカウトを送りやすくなります」

 プラットフォームをスカウト型にした理由は、民間企業の採用に近づけることが一つだ。スカウティーチャーは新卒の教員採用にも使うことができ、大学3、4年生の登録者も多い。

 「今の大学生はスカウト型の就活に慣れています。採用のやり方を民間企業に合わせていけば、もっと教員の仕事を選びやすくなり、教員不足の解消につながるのではないかと思いました」

 潜在教員の掘り起こしと学校の認知度を上げることも、スカウト型が適している。

 「積極的に探しているわけではないが、登録しておいて気になるスカウトがあれば教職を考えてもいいかなという潜在教員を増やすことができます。もう一つは、学校側が求人情報を掲載して待っているだけでなく、積極的にアプローチしていけるという点です」

 現在は首都圏の教員ユーザーの登録が中心で、主に首都圏の私立学校にスカウトの機会を提供している。今後は教員ユーザーの登録者を全国に広げていき、全都道府県の私立学校からスカウトを受けられるよう拡大する予定だ。

 さらに将来的には、公立校にも広げていき、学校と教員をつなぐマッチングプラットフォームにしていくことを目標としている。

 「現役教師、教員免許を取得しつつも民間企業へ就職された方、教員経験はあるが教職から離れている方、定年を迎えたベテランの方など、さまざまなバックグラウンドの方の登録をお待ちしています」

フリーランス教員の力を企業の人材育成に生かす

 スカウティーチャーでは、教員ユーザーの横のつながりができる仕組みづくりも行っていく予定だ。

 「教員免許があっても、経験がなく教えるのが不安だという社会人の方も多い。教える時のコツや教材のシェアなどができるようになると登録するメリットが大きくなるので、力を入れていきたい分野です」

 羽田代表は教員になるのと同時に同社を創業した。on-shi-onという社名には、恩師のような存在でありたい、誰かの人生に少しでも良い影響を与えられるようになりたい、という思いが込められている。

そして、企業向け人材育成・コンサルティング事業も手掛ける羽田代表は、フリーランス教員の力を企業の人材育成にも生かしたいと考え、教員のキャリアの多様化や複線化も提案している。

 「教育業界と産業界を教員が自由に行き来でき、楽しそうに働いていれば、その姿を見ている生徒たちも将来の仕事に希望が持てるのではないでしょうか」

 これからも「自由に幸せに生きるフリーランスの先生を通じて、子どもと、子どもに関わる全ての人の生きる力を育む教育と世界をつくる」というミッション実現のために尽力していく。 

会社概要
設  立 2021年3月
資 本 金 700万円
本  社 東京都千代田区
事業内容 教員向けスカウト型求人サイト「scouteacher(スカウティーチャー)」、企業向け人材育成・コンサルティング事業
https://on-shi-on.co.jp/