医療連携でシニア向け賃貸を計画　「住」周辺分野でも暮らしに貢献　田中貴広　モダンプロジェ

投資用賃貸マンションの企画・販売を手掛けるモダンプロジェは、２０２４年からＨＤ体制に移行し、グループ経営を強化。医療や飲食とも連携し事業を拡大する一方で、人材育成にも力を入れている。（雑誌『経済界』2025年1月号「躍動する九州」特集より）

好調の要因は好立地と自社企画マンション

　「創業当時から大事にしているのは、関わる皆がハッピーになることです」そう話すのは、投資用賃貸マンションの企画・販売を手掛けるモダンプロジェの田中貴広社長だ。

　マンション1棟を経営するに当たって、オーナーの要望に合わせたプラン立てから融資先確保、建築、管理までワンストップで提供する。

　福岡、長崎を中心に供給実績を積み重ね、設立から10年余りで累計１７０棟を数えるまでとなった。

　現在は長崎、熊本、大阪、沖縄、東京に出先事務所を設置。今後は北海道や広島への進出も検討している。

売上高は２０２３年２月期が50億円、24年２月期は約４割増の72億円まで拡大した。右肩上がりの供給を後押しする要因は、好立地と物件自体の強さにある。

　中央区や博多区といった福岡市内の中心部をはじめ、地下鉄が直結する西新や姪浜など、人気エリアの土地を仕入れている。そこに、ローコストでスタイリッシュな「モダンパラッツォシリーズ」、高級志向の「モダンアスピラシオンシリーズ」など、自社企画マンションを建設。これら建物の特色と好立地が相まって、好調につながっている。今後もバランスを考えながら、積極的な仕入れを行っていくという。

医療や飲食とも連携し「住」から可能性を広げる

　今、同社が計画しているのは、シニア向け賃貸マンションだ。

　「60歳以上になると、新しく部屋を借りたくても賃貸契約が結べないケースがある。元気なうちは自分で生活したい、子どもの世話にはなりたくないといったニーズがあるので、それに応えたい」

　医療機関と連携して、見回り巡回や不測の事態に備えるサービスの付帯を検討している。今後は相談窓口を設けてニーズを聞き取りながら、サービスを考えていく予定だ。

　一方で、飲食事業にも力を入れている。福岡を中心に食堂、焼き鳥、カフェなどの店舗を展開。23年には福岡市中央区天神４丁目の商業施設「ミーナ天神」に、九州初出店となるカフェ「Ｅ ＰＲＯＮＴ（エプロント）」をＦＣ出店した。

　長崎では、カフェと不動産仲介店が一緒になった店舗を計画中だ。

　「長崎には不動産投資に興味を持った方が多く、そういった方々に向けて情報発信できる拠点をつくりたい」と戦略を練る。

　今後は、場所を厳選しながら、新しいＦＣへの参入も検討している。

　「衣・食・住の『住』から事業を始めて10年がたち、ある程度基盤ができた。これからは、医療や食など『住』の周りにある分野でも暮らしに貢献していきたい」と語る。

24年からＨＤ体制に移行。グループの人材強化を図る

　同社は設立以来Ｍ＆Ａなどでグループ会社を増やしてきた。

　現在、不動産仲介会社、ビルメンテナンス会社、清掃会社、消防設備点検会社、リフォーム会社、ホテル運営会社、医療法人など、計12社からなる。

　23年７月に株式会社ｍｏｒｇｅｎ ｐｏｎｔｅホールディングスを設立し、24年から本格的にＨＤ体制に移行した。田中社長はＨＤ化の理由を「人材強化のため」と語る。将来的に、モダンプロジェの社員にグループ会社の社長を任せていく考えで、既にいくつかの会社で実現している。

　「新しく代表になったメンバーとは、よく話をしています。最初はあれもこれも自分でやろうとして、余裕をなくしている様子でした。しかし、社員を１人雇用し、自分がやらなくてもいい仕事を引き継ぐように伝えたところ、新しいことを考える時間ができたようです」

　また、各グループ会社とのコミュニケーションでは、統括マネジャーを配置することで円滑化を図った。

　「自ら食堂にスタッフとして入り、現場の状況を確認したこともありました。でも、そこでの気付きを私が直接話すと、現場の社員は面白くないですよね。だから、間にマネジャーを置いて現場の声を上げてもらったり、要望を伝えてもらったりするようにしました」

　以前よりもコミュニケーションが活発になり、見えなかった部分が見えるようになってきたという。

　理想の人材像は「どこの会社でも通用する人」と語る田中社長。

　自ら考えて行動する社員が、やりたいことを実現できる会社にするべく奮闘している。