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センシング技術を進化させ、新たなビジネスにつなげる 春田勉 ソニーセミコンダクタソリューションズ

ソニーセミコンダクタソリューションズ 車載向けイメージセンサー事業統括部長 春田勉

自動運転車には、カメラやセンサーを使って正確に周囲を認識する機能が必要だ。ソニーセミコンダクタソリューションズは、車載用のイメージセンサーを開発しており2026年までに4割強のシェアを目指している。車載向けイメージセンサー事業統括部長の春田勉氏に、自動車産業における展望を聞いた。構成=萩原梨湖(雑誌『経済界』2025年1月号巻頭特集「自動運転のその先」より)

ソニーセミコンダクタソリューションズ 車載向けイメージセンサー事業統括部長 春田勉
ソニーセミコンダクタソリューションズ 車載向けイメージセンサー事業統括部長 春田勉

進化するイメージセンサー。インプット情報の処理も行う

 当社は、ソニーグループの半導体事業を担っており、カメラのレンズ部分から取り込んだ光を電気信号に変換するイメージセンサーを中心としたデバイスとそれらを活用したソリューションを展開しています。その技術が自動運転車や運転支援システムにも貢献できるということで、2012年頃から自動車向けのイメージセンサー開発を開始しました。 昨年度は200万画素以上の車載イメージセンサー市場で3割強の金額シェアを得ましたが、26年度にはこれを4割強まで拡大することを目指しています。

 写真などの撮影用途とは違って、車載センサーには、自動車を取り巻く環境や対象物の状態を認識する「センシング」の役割が求められます。例えば、LED光源を用いた信号機や標識を撮像する際に発生するフリッカー(ちらつき現象)を抑える技術や、 白飛びや黒つぶれといった現象を抑えるハイダイナミックレンジ技術など、 さまざまな環境におかれても安定して高精度で周囲を認識できるセンサーが、当社の強みになっています。

 自動運転機能は人命に直結します。そのため、万が一不具合が発生しても事故にならないように安全に動作する仕組みづくりも規格で求められています。そうした自動車だからこそ厳格に求められる信頼性や安定性を意識して技術を磨いていきたいです。 

 また、センサーから得た外界の情報をソフトウェアで処理して活用するような新たなソリューションの開発も、業界で盛んになってきています。例えば、当社では「オートパーキングソリューション」という、複数のセンサーから取得した画像をもとに駐車区画を認識したり、空いている区画を検出したりできる自動駐車支援システムを開発しています。 このように、インプットデバイスとしてのイメージセンサーだけではなく、自動運転機能を進化させる新たなシステムにも取り組むことで、認識の精度を高め、新たなビジネスにもつなげていけると期待しています。

 海外では自動運転の社会実装が始まりつつあり、街中で自動運転車が走れるようになっていますが、こうしたセンシング技術は、ドローンや農業用機械など、自動車以外の産業にも適応できる可能性があります。

 そして、移動手段が進化し、人が動きやすくなることは、経済の発展にもつながるはずです。イメージセンサーはこうした大きな流れを生み出し、自動運転にとどまらず、社会や経済の発展に貢献するキーデバイスとなると信じ、自動車産業に向き合っていきたいです。(談)