媒体資料
経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

ウェブ解析士協会代表に聞く「ウェブマーケティングの最新動向と資格を取ってできること」

江尻俊章氏・一般社団法人ウェブ解析士協会代表理事

今やあらゆる業種、企業において、必須となったウェブマーケティング。インターネットの黎明期からアクセス解析ツールの開発を手掛け、現在に至るまでウェブ解析のスペシャリストとして活動する一般社団法人ウェブ解析士協会代表理事の江尻俊章氏に、企業戦略におけるウェブ解析の必要性とそのトレンドについて話を聞いた。(聞き手=吉田浩)

 

取材協力者プロフィール

ウェブ解析士協会江尻代表

江尻俊章(えじり・としあき)一般社団法人ウェブ解析士協会代表理事。業界ではもっとも早い時期からアクセス解析に着目し、アクセス解析ASPサービス「アクセス刑事Pro」、「シビラ」を自社開発、運営、アクセス解析からエリアマーケティングを行う「エリアレポート」を提供。ウェブ解析を軸にしたコンサルティングを行っている。(ウェブ解析士協会ホームページより抜粋)

ウェブ解析士とは

一般社団法人ウェブ解析士協会が発行する認定資格。実務で活躍できるウェブ解析士の育成を目的に、2010年より講座や認定試験を実施。現在まで約3万5千人が受講。ウェブマーケティング、ウェブ解析の基本的な知識を習得し、営業・制作・開発・社内ウェブマスター業務等の遂行・業務効率化を可能にすることを目的としたウェブ解析士、応用知識を習得し、コンサルティング業務に従事できるレベルの上級ウェブ解析士、自ら講師として講義ができるレベルのウェブ解析士マスターの資格がある。

 

ウェブ解析士の資格は仕事にどう生かせるのか

 

―― ウェブ解析士の資格を取ると、何ができるようになるのですか?

江尻 ウェブ解析に関するさまざまな数字の意味を正しく理解して、問題点を企業に提案できるようになります。数字を見て理解できるだけでは駄目で、しっかりと分析して改善提案ができるというところまで求められます。

―― 受講者はどのような人が多いのでしょうか。

江尻 以前はウェブ業界の人たちが中心でしたが、多くの企業でウェブ担当者を置くようになり、最近までウェブに縁がなかった人たちにまで幅が広がってきています。2019年の最新データでは、ウェブ制作会社のディレクターやデザイナーと、企業のウェブ担当者がそれぞれ25%ずつぐらい、25~30%が広告代理業界の社員、あとはさまざまといった感じです。圧倒的に大企業の社員が多く、中小企業の社員はあまり増えていないのが現状です。ウェブ業界で協会の知名度は高いですが、一般的にはまだあまり知られていません。

―― これまでの実績は。

江尻 ウェブ解析士の資格試験がスタートしたのは2010年で、これまで約3万5千人が講座を受講しました。会員を辞退した人などを差し引くと、アクティブに活動しているウェブ解析士は1万1千人ぐらいです。資格維持のために、年会費6千円の支払いと、年に一度テストを受ける必要があります。知識をアップデートしていかないと解析士の資格が保持できないようになっています。

―― 資格を取ってステップアップした事例は多いのでしょうか。

江尻 そうした事例は本当にたくさんあって、組織から独立した人もいるし、ヘッドハンティングで転職した人も数多くいます。ウェブ解析やウェブマーケティングという評価しにくいスキルを、数字で説明できるようになるのが資格を取ることの強みですね。

 コンサル一本で独立するのも良いですが、もともと持っているスキルと組み合わせてキャリアアップするのが非常に有効だと思います。たとえば中小企業診断士などがウェブ解析士の資格を取るといった形で、自分の価値を上げることが可能です。

ウェブ解析士協会設立の経緯

―― ウェブ解析士協会の設立は2012年ですが、どのような経緯でつくったのですか。

江尻 私はもともと福島県出身で、父親は土木建築系の商社を経営していました。中小企業の社長は接待が主な仕事で、平日は夜中まで接待して土日はゴルフという生活を送っていたのですが、あるとき父が脳卒中で倒れてしまったのです。中小企業の社長はこんな生活をしないと生き残れないのかなと怖くなりました。中小企業が生き残る方法はないかと模索する中でウェブと出会って、これを活用すれば大企業に依存しなくてもビジネスが開けるのではないかと思いました。2000年当時、ウェブはまだマイナーでしたが、将来的に大きな価値を持つようになると考えました。

 中小企業が勝つために一番大事なのは、大企業で対応しきれない細かいニーズに対応して、ニッチなマーケットを独占すること。そのためにはユーザーが何を欲しがっているのかが、重要な情報になります。

 当時はウェブ解析といってもアクセス解析ぐらいしかなかったのですが、それを軸にウェブコンサルタントの事業を開始しました。データをもとに問題点を発見して、PDCAサイクルを回すことを始めたのです。「アクセス刑事(デカ)」というアクセス解析ツールを開発し、ホームページビルダーとバンドルして普及させました。

 グーグルアナリティクスが無料提供され始めた後は、だんだん抜かれていきましたが、周囲を見るとほとんど誰もアナリティクスを使っていませんでした。その一方で、われわれはアクセス解析技術を使って、クライアント企業の売り上げを40倍とか50倍にすることに成功していました。

 そこで気付いたのは、いくら無料ツールがあっても、それを使える専門家がいなければ役に立たないということでした。それで、われわれの経験をベースに、ウェブ解析ができる人材を育成するためのカリキュラムを作ったというのが、協会を設立した経緯です。

 

ウェブ業界以外からも受講者が増加

 

―― 事業会社ではなく社団法人にした理由は。

江尻 われわれの製品も含めいろんな解析ツールがありましたが、中立的な立場で活動したかったので社団法人にしました。講座はグーグルアナリティクスの解析だけでなく、どんなツールを使っても応用できる内容になっています。

―― 資格についてはどのようにPRしていったのですか。

江尻 最初はウェブクリエイターやデザイナーなどに向けてPRしていきました。ウェブが普及するにつれ、彼らの仕事の単価がどんどん下がっていっていたので、ウェブ解析の知識を使ってユーザーの成果につながるような提案ができれば、付加価値が高まるからです。

 そのうち、企業向けのコンペなどで優位に立ちたいといった理由で、広告代理店の担当者が資格を取り始めました。先ほど述べたように、もともとは地方の中小企業にもっと訴求したかったのですが、それは今後の課題となります。

ウェブ解析のトレンド変化と現状

 

―― ウェブ解析のトレンドはどのように変わってきたのでしょうか。

江尻 潮目がはっきり変わったのはグーグルアナリティクスが登場した2005年で、その後は5年スパンぐらいで潮流が変わっている印象です。

ウェブ解析における重要なパラメーターは変化していて、2015年ぐらいからサブスクリプション型のビジネスモデルが増えるにつれ、それまでのセッション数やPV数重視からアクティブユーザー数重視にシフトしてきました。

 試験やテキストの内容は、トレンドに合わせて毎年変えています。他の類似資格と比べて、最新の情報が得られるのも協会の優位性につながっているのではないでしょうか。たとえば、2種類のARPU/ARPPU(ユーザー1人当たりの平均売上額と課金ユーザー1人当たりの平均売上額)や、チャーンレート(解約率)などの指標に対して、収益を伸ばすためにはアクティブユーザーがどれだけ増えないとだめかといった内容を問う問題も取り入れています。

―― 試験の合格率はどれぐらいですか。

江尻 以前は80%を超えていましたが、今は60%ぐらいになっています。覚える量が単純に増えていることもあるし、受講者の層が広がってきたのも理由です。

―― 試験はどれぐらいの頻度で行われているのですか。

江尻 アカウントを発行して2週間以内にオンライン受験という形をとっているので、試験はいつでも受けられます。テキストを見ながら解いても良いのですが、試験時間60分で60問を解くので、しっかり勉強していないと合格は難しいです。

ウェブ解析士テキスト

ウェブ解析士のテキスト内容はトレンドに合わせて毎年更新していく

ウェブマーケティングは今後どうなっていくのか

―― 特にB to Bの領域ではウェブを活用しきれていない事例がまだ多いと思いますが、その点はどう考えますか。

江尻B to Bのほうが仕事の単価が高く成果が上げやすいのは確かですが、ウェブを活用するノウハウがまだ広まっていません。ウェブ解析士の勉強をすることで、クライアントのターゲットをどう絞るかというマーケティングの基本を習得することができます。

―― ウェブ業界の今後のトレンドをどう見ていますか。

江尻 GDPR(一般データ保護規則)が昨年から施行されるなど、個人情報の扱いが厳格になってきていて、消費者庁の規制も厳しくなってきました。そのため、今まではリマーケティング用にマーケティングオートメーションツールを売り込む動きなどが盛んでしたが、今後は個人情報をきちんと取り扱って、いかにユーザーをしっかり見るかが問われる時代になって来ると思います。

 マーケティングオートメーションツールはマーケティングの効率化を図るという謳い文句で販売されていますが、実際に導入した企業では活用できずに失敗しているケースが非常に多いのです。結局、RPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)と同じで、ルールの設定は全部人が行わなければなりません。

 それができるのは相当優秀なマーケターだけですが、そんなマーケターはほとんどいません。優秀なマーケターの仕事を自動化するために導入するのなら効果がありますが、素人が誰でも活用できるようなものではないのです。こうした状況も変わっていくでしょう。

―― 協会としての今後の目標は。

江尻 ウェブ解析を通したマーケティングを、中小企業や若者にもっと活用してもらうための啓もう活動を進めていきます。デジタルマーケティングは最も低コストで実行でき、世界中で展開できるというメリットがあります。日本企業が世界のマーケターと繋がって、世界展開するためのお役に立てるような存在になっていきたいですね。そのための人材を輩出するのが、われわれの目標です。

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